ライフサイエンス
原子吸光法によるカリウムの測定
はじめに
Kは,地殻中では,主にケイ酸塩として存在します。また,海水中にも400ppm程度含まれますが,Naと比較し,約1/30の濃度です。これは,風化によって岩石から遊離したNa+とK+のうち,Na+がそのまま海に流出するのに対し,K+は土壌中のコロイド物質に吸着され,それを植物が吸収するため,海への流出が少ないことに起因します。KOHやKClを溶融電解することで得られるKは,銀白色の柔らかい金属で,空気中では速やかに酸化され,また,水とは爆発的に反応し発火することから,石油中にて貯蔵します。Kは,超酸化物(スーパーオキシド)KO2を生成する,反応性に富む等の点で,同じアルカリ金属のNaと異なります。Kの化合物では,KNO3はマッチや花火などの酸化剤,KOHは石鹸,K2CO3はガラス原料,KClは配合肥料などに用いられます。 Kは,蛋白質の合成や細胞内外の水分の輸送,信号の伝達など様々な生理作用に関連しており,生物にとって必須元素です。人体中には2g/kgのKが存在し,筋肉は16000ppm,血液は2100ppmのKを含みます。食物中のKは小腸で吸収され,過剰なKの90%程度が腎臓から,その他は糞便と汗に排泄されます。ホメオスタシスの働きにより,Kの欠乏はほとんどないと考えられますが,激しい下痢や嘔吐によってKが欠乏すると不整脈等の症状が現れます。一方,尿毒症や尿路閉塞時には,高カリウム血症となることがあり,やはり不整脈など心電図上の異常が起ります。KClは,Kの補給剤やリンゲル液(1L中NaCl 8.6g,KCl 0.3g,CaCl2 0.33g)の成分,利尿剤などの医薬品としても用いられています。 今回,Kのファーネス測定を例にピーク高さ法とピーク面積法の違いや利用法についてご紹介します。
2005.07.24