工業材料・マテリアル
原子吸光法によるマンガンの測定
はじめに
Mnは,地殻中に0.09%,海水に0.002mg/L程度含まれています。金属Mnはマンガン鉱をAlで還元することで得られます。Mnには,α,β,γ,δの同素体があり,α,β型は硬くもろい,γ型は展延性を有す,δ型は高温でのみ安定,などの性質を持ちます。鉄鋼分野において,Mnは鋼中の硫黄と結合し,鋼の硬度を変化させるため,衝撃や摩耗に強い鉄鋼の生産では必須元素となっています。Mnが添加された鉄は,大きな引張強度を持つため,浚渫用のバケットやキャタピラなどの部品に用いられます。代表的なMn化合物である,4価の二酸化マンガンは,染料工業では乾燥剤や触媒として,ガラス工業では鉄の脱色剤や着色剤等に用いられています。強力な酸化剤である7価の過マンガン酸カリウムは,漂白や油脂の脱色等に使用されています。 食物や飲料水から人体中に取り込まれたMnは,胃の中で胃酸によってMn2+となり,腸管で酸化されMn3+に変化し,血液中に入ります。血中では,Fe3+と性質の似たMn3+は鉄輸送蛋白質のトランスフェリンと結合して循環し,各臓器に運ばれます。Mnの95%以上は肝臓を経て胆汁中に排泄されますが,Mnには酵素活性を促進する作用があり,蛋白質や酵素と結合して触媒作用を調節する役割を担っています。更に,Mnは,CaやMg等の代用となったり,あるいは,その金属の作用を抑制する性質を有します。 また,Mnには血糖降下作用があることが見出されており,インスリン受容体等の活性化を促進していると考えられています。一般的にMnの欠乏症の事例は少ないですが,過剰摂取されると甲状腺に蓄積され,その肥大を引き起こすことが知られています。 今回は,Mnのフレーム分析を例に,スリット幅と感度の関係について紹介します。
2005.04.09