工業材料・マテリアル
原子吸光法による白金の測定
はじめに
Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Ptの6元素は物理化学的性質が似ていることから白金族元素と呼ばれています。これらにAgとAuを加えた一群の元素が貴金属です。Ruは展性に富み,酸化や腐食を受けにくいため,PtやPdとの合金は,装飾品や電気接点材料として,また,その化合物は,触媒や酸化剤として用いられています。Rhは銀白色の金属で研磨によって高い反射率を示すため,光学機器やカメラ部品,装飾品のメッキなどに利用されます。また,その電気抵抗がPtやPdよりも小さいことから電気接点材料としての用途もあります。PdはCuやNi,Znの精錬の副産物として得られる銀白色の金属で+2価と+4価の酸化状態をとり,他の白金族と同様,触媒に用いられます。Osは青白色の金属で,比重が大きく,+1から+8の酸化状態を持ちます。+8価のOsO4は無色で猛毒の気体であり,この揮発性と硬度を利用し電気接点や酸化剤等に使用されます。 Irは金属の中で最も腐食されにくく,比重がOs同様22.6と最も重い元素の一つです。Irには他の白金族の硬化材としての用途があり,Ptとの合金は電気分解の際の電極や接点材料に使用されています。この合金はキログラム原器やメートル原器の材料として知られています。また,その耐久性からフレーム原子吸光装置のネブライザのキャピラリに用いられています。Ptは他の白金族との合金や硫化物,砒化物として産出されます。Ptは王水以外には溶けませんが赤熱すると塩素と反応します。Ptには装飾品や触媒以外に電極や接点,抵抗線等の幅広い用途があります。 白金族の分析は,主にメッキや触媒業界で行われていますが,抗がん剤のPt化合物シスプラチンなどの医薬品関連や臨床分野でも測定が行われています。 今回,白金族を代表するPtについて測定例をご紹介します。
2021.03.29