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はじめに

鉛は,融点が低く,柔らかい金属であることから加工性に優れ,古来より様々な用途で使用されてきました。また,その密度の高さからX線やγ線など放射線の遮蔽材料や鉛ガラス等にも使用されています。 反面,鉛は人体に対して有害な元素であり,その急性中毒は,貧血,神経痛,脳疾患としてあらわれます。鉛が経口摂取された場合,人体への吸収率は約10%と考えられ,その大部分は,リン酸鉛や炭酸鉛の形態で糞便中に排泄されますが,一部は血液に入り,骨や軟組織に沈着すると言われています。 鉛は,古くは水道管に使用されていましたが,酸素が存在し,溶液のpHが弱酸性になると溶け出すことが明らかとなり,現在では,ステンレスや合成樹脂等に置き換えられています。また,自動車のエンジン内部におけるガソリンの異常燃焼を抑制するアンチノック剤として,オクタン価を高めるために添加されてきた四エチル鉛も環境汚染の懸念から使用を禁止されています。 鉛の有害性の観点から,このような鉛フリーへの動きは様々な業界で加速しており,例えば,RoHS指令※により,2006年7月1日以降,EUで販売される電気・電子製品について,原則として指定有害物質を非含有とすることが求められています。有害物質には有機ハロゲン化合物(臭化物難燃剤)と金属が指定されていますが,有害物質の金属として水銀,カドミウム,六価クロムと並んで鉛が挙げられています。 鉛の分析は,上水や排水などの水質関連や地下水・土壌といった環境関連,食品や医薬品,工業製品等の品質管理など,広い分野で行われています。今回,フレーム法では土壌の測定例を,ファーネス法についてはプラスチックの測定例を紹介します。

2003.09.27