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はじめに

長時間のフレーム測定において信頼性のあるデ-タを得るためには,いくつかの留意しなければならない点があります。その中でも特に①「感度変動」と②「ベースライン変動」の2つがデータの信頼性を損ねる主たる要因といえます。これらの変動を克服することがデータの信頼性を確保するための必要条件となります。①の感度変動の主な原因としてバーナヘッドの温度変化を挙げることができます。点火直後,バーナヘッドの温度は熱平衡に達するまで上昇していくため,この時点での測定では特に感度変動が生じやすくなります。つまり,バーナヘッドの温度を熱平衡に速やかに到達させることが感度変動を最小化させるポイントであると言うことができます。これはバーナヘッドの材質にチタンを用いることで実現します。チタンは軽量,耐酸性などの特長と共に熱しやすく冷めやすいという性質があり,SUSなどの素材と比較しても熱平衡に達する時間の短縮化が図れます。 次に②のベースライン変動の原因としてホロカソードランプのエネルギー変動が挙げられます。エネルギー(光量)の増加はマイナス方向へ,減少はプラス方向へとベースラインを変動させます。ベースライン安定化にはダブルビームを用いる方法もありますが,光学系が複雑になることからホロカソードランプの光量ロスは避けられません。結果的にベースラインのノイズが増加することで S/N比が悪化し,検出限界の低下を招きます。一方,シングルビームを用いる方法は光量ロスが無いため高S/N比が得られるメリットがあります。シングルビームにおいて,ベースラインの安定性を確保する手段として,ベースライン変動の補正を行う「AUTO ZERO」機能があります。オートサンプラを使用した際もサンプル測定間のリンス動作の中で「AUTO ZERO」機能が働き,ベースラインの変動を自動補正します。 今回,Cd,Cu,Fe,Mn,Pbの5元素についてオートサンプラを使用した長時間フレーム測定の例を紹介します(バーナーヘッドは標準のチタン製のものを使用しました)。Cdは0.2,0.4ppm,その他の元素は0.5,1.0ppmに濃度を設定しました。標準液の繰返し測定からは感度の再現性が,また標準液測定間の連続ブランク測定からはベースラインの安定性が確認できます。

2001.07.06