3.1. キャリアガスの種類

キャリアガスは,試料を運ぶための不活性ガスで,ヘリウム( He ),窒素( N2 ),水素( H2),アルゴン( Ar )などが用いられます。
中でも,ヘリウム,窒素が良く用いられ,キャピラリカラムの場合は,ヘリウムを使用することが望ましいです。

ヘリウム: 高価ですが,安全で比較的広い最適線速度範囲をもっています。
窒 素 : 安価で安全ですが,最適線速度範囲が狭いことと,最適線速度が遅く分析時間がかかるという欠点があります。

また,キャリアガスは常に検出器に流れ込みますので, 99.995%以上の高純度のものを使用する必要があります。(高純度のものを使用することで,ベースラインノイズを抑えます。)

 
  • He, N2が良く用いられる(キャピラリカラムの場合はHeが望ましい)
  • 高純度のものを使用する ⇒ ベースラインノイズを抑える

カラム効率(HETP)とキャリアガスの種類および線速度の関係(概念図)

※HETP:理論段高さ(カラムの分離効率を示すパラメータ)
平均線速度:キャリアガスがカラムの中を進む速度の平均値

使用するキャリアガス種と分析条件(線速度)の組み合わせにより,カラム効率が変わります。
上に示したカラム効率(HETP)とキャリアガスの種類および線速度の関係図より,各種キャリアガスを用いる際には適切な線速度を設定する必要があります。一般的なキャピラリカラム分析では、ヘリウムをキャリアガスに使用する場合が多く、そのため線速度30cm/sec付近が使用されます。

3.2. キャリアガス制御方式

キャリアガスの制御方式には,圧力,カラム流量,線速度を制御する方式があります。(線速度制御は,島津製作所の特許です。)
多くの分析では,これらのパラメータのどれかを分析中一定値に制御します。ただし,プログラム制御も可能で「分析中に圧力を上げていく」などの分析例もあります。

圧力制御 カラム流量制御 線速度制御
注入口の圧力が設定値となるよう制御 カラム内キャリアガス流量が設定値となるよう圧力を制御 カラム内キャリアガスの平均線速度が設定値となるよう圧力を制御
キャピラリ分析で一般的に使用される パックド分析やキャピラリワイドボア分析において主に使用される キャピラリ分析で分離を最適化する際に使用される
昇温時、カラム流量と線速度が変化する 昇温時、線速度が変化する 昇温時、カラム流量が変化する

多くの分析で,圧力/カラム流量/線速度の何れかを上記制御方式にて一定値とします。

制御方式の違いによる線速度の変化(昇温分析時)

0.25mmID × 30m , df=0.25µm
He:150kPa, 2.32mL/min, 45.1cm/sec

 

昇温分析を行う場合,キャリアガスの制御方式によっては,カラム温度の上昇に伴い,線速度が変動します。これはカラムを流れるキャリアガスの拡散が温度上昇により変化するためです。
先述のとおり,カラム効率(HETP)は線速度に依存しているため,分析中に線速度が変動すると分析中にカラム効率が変動することになります。このため,昇温分析時には,分析中に常に同じカラム効率を維持するため,定線速度制御が望ましいと言えます。