多層フィルム内部の異物の観察と計測(2)
- 油浸対物レンズによるフィルム内部のレーザー顕微鏡観察 -

通常のLSMによる観察では,フィルム表面近傍の内部にある異物の観察が行なえました。しかし,さらに深い内部にある異物の観察は通常の大気での観察では行なえません。そこで油浸対物レンズを使用します。

油浸対物レンズとは

油浸体物レンズを図1に示します。油浸対物レンズと試料の間は,屈折率 noil= 1.516(23 ℃)の専用のイマージョンオイルで満たします。これによりオイルを介したレーザー観察が行なえます。空気の場合と異なり,オイルとフィルムの屈折率差はきわめて小さくなります。これにより反射を抑え,レーザーの透過率を大きくできることから,フィルム内部の観察を行なえる可能性が高くなります。

図1 油浸対物レンズと試料
図2 深さの異なる異物のカラー観察画像/図3 フィルムのLSM断面観察

PVC層の深さ100µmまでのLSM断面観察を図4に示します。この結果から,さまざまな大きさの無数の異物の存在とその層内での分布がわかります。図4からPVC層の表層から中間部に比較的多くの異物が集まっていることがわかります。

図4 厚さ100µmのPVC層中の異物分布
図4 厚さ100µmのPVC層中の異物分布
3D測定レーザー顕微鏡

3D測定レーザー顕微鏡 OLS5000

3D測定レーザー顕微鏡

レーザー顕微鏡(LSM)は広い視野の3D形状観察と測定が簡便にできることから,薄膜の厚み計測や形状評価に利用されています。
さらに試料が損傷しない条件まで入射レーザー強度を小さくしても十分な感度で表面観察が行なえます。