高分子物質の分子量を測定する手法としては、光散乱法、浸透圧法、粘度法などがあります。これらの方法では分子量の平均値を得ることができます。 実際は、多くの高分子物質は単一の分子量を持つのではなく、複数の分子量を持つ物質の集合体です。​

GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)はサイズ排除クロマトグラフィーの一種で、高分子物質の分子量分布の測定に使用されます。分子量分布とは、どの程度の分子量の物質がどの程度含まれているかという情報で、高分子の物性の違いを把握する目的で品質管理などに広く用いられています。

図1 サイズ排除クロマトグラフィーの原理

 
 
 
 

図2 較正曲線と高分子化合物分析例

較正曲線

サイズ排除クロマトグラフィーは、図1に示すように分子量が大きい物質ほどカラムから早く溶出され、分子量の小さい物質はカラムに長くとどまります。この関係をグラフに示したものが較正曲線です。 図2に、GPCをはじめとするサイズ排除クロマトグラフィーの保持時間(溶出容量)と分子量の関係を示します。

サイズ排除クロマトグラフィーでは、⼀定の⼤きさ以上の物質は、充てん剤の細孔内に⼊れず素通りするので同じ保持時間になります。これが排除限界です。一方、分子量が小さい物質は充てん剤の細孔の奥まで浸透しますが、⼀定の⼤きさ以下の物質は同じ保持時間になります。これが浸透限界です。高分子物質の分子量分布を正しく計算するには、排除限界と浸透限界の間に測定する高分子物質が溶出されるような分析条件を設定する必要があります。

 

カラムの選定

GPCによる分子量分布の測定では、未知試料を測定する前に分子量が既知の標準品を用い、各標準品の分子量に対する保持時間(溶出容量)をプロットする較正曲線を作成します。カラムにGPC測定用カラム(Shim-pack GPC)、標準品にポリスチレン(PS)を用いて作成した較正曲線を図3に示します。

GPC測定用カラムには、排除限界の分子量が異なる(充てん剤の細孔径が異なる)ラインアップのカラムがあります。
測定試料の分子量分布が広範囲に及んでいる場合は、対象の分子量分布をカバーできるカラムで、かつ、同じシリーズのカラムを数本選択し、直列に接続して使用します。または、異なる充てん剤が混合されたミックスゲルタイプのカラム(例:GPC-80M)を使用する場合もあります。ミックスゲルタイプのカラムは 測定対象の合成高分子の分子量範囲が不明な場合や、測定対象成分の分子量範囲が非常に広い場合に利用されます。

図3 較正曲線とGPC測定カラムのタイプ(Shim-pack GPCシリーズ)

 
 
 

分子量の分布

GPC測定においては、クロマトグラムのピーク形状は必ずしもシャープになるとは限りません(図4)。ピーク幅が広いと、分子量分布が広範囲なものとなっていることを意味します。また、ピーク幅が狭いと、分子量分布の範囲が狭いことを意味します。また、ひとつのピークには、分子量が異なる高分子物質が混在しています。つまり、ひとつのピークでも早い時間に溶出している物質の分子量は大きく、遅い時間に溶出している物質の分子量は小さいということです。

図4 分子量分布の例

平均分子量の算出

平均分子量の算出方法は複数の方法があります。表1に示すように、同じ平均分子量の高分子物質でも分子量分布が異なると、物性に違いが生じることがあります。
これらの物性は材料試験機などを用いて評価されますが、GPC測定で得られる分子量分布も物性評価の指標として相関性があると考えられています。

 
 
表1 各種平均分子量と物性 
 
  関連する高分子の物性 定手法(絶対法)
数平均分子量 引っ張り強度、衝撃強度、硬度 浸透圧法、蒸気圧法
重量平均分子量 脆性 光散乱法、超遠心法
Z平均分子量 たわみ、剛性  
 

分子量分布測定

GPCによる分子量分布測定における検出器には、主に示差屈折率検出器(RID)が使用されます。これは測定対象の合成高分子がUV吸収を持たない場合が多いこと、移動相にTHF(テトラヒドロフラン)やDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)などUV吸収が⼤きい移動相を⽤いることが多いためです。

図5に、合成ポリスチレン(PS)をRIDを用いて分析した例を示します。
この分析条件で作成した較正曲線を用いてPSの平均分子量を計算しました。その結果、数平均分子量は約15,000、重量平均分子量は約26,000となりました。

図5 合成ポリスチレン(PS)のクロマトグラム(5g/L,5µL注入)

 
 
 
 

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