ピーク波形処理を確認しましょう
もしピーク面積や定量値の再現性が芳しくないとき,どこからチェックしますか?ポンプの送液不良やオートインジェクタの注入不良などを疑って,装置の点検をしますか?
いや,ちょっと待ってください。まずクロマトグラムのピーク波形処理が正しく行われているか,ベースライン補正線が適切であるか調べてみましょう。ちょっとした波形処理条件(パラメータ設定)の違いで,大きな違いがでることがあります。ちょっと見直すと,わざわざデータを取り直さなくてもすむかもしれませんよ。
1. ノイズなど不要なピークの除去
目的ピークにノイズが入るなど正しい波形処理がされないような場合があります。このような時は,データを解析するメソッド(分析ファイル)の波形処理パラメータ(または波形処理コマンド)が適切であるか確認しましょう。右図のように,WIDTHの設定によってピーク検出のされ方が変わる場合があります。
ノイズなど不要なピークを除去するには「WIDTH」(単位:秒)を不要ピークの半値幅よりも大きくしたり,「SLOPE」(単位:μV/sec)を不要ピーク立ち上り傾斜より大きくすることで,通常これを除去できます。
半値幅
ピークの傾斜
( WIDTH,SLOPEの変更は,LCsolutionでは[メソッド]-[データ処理パラメータ]-[波形処理タブ] で設定できます。)
注:データごとに波形処理パラメータを変えるのではなく,同じ分析条件で測定したデータは,同じ波形処理パラメータでうまく波形処理ができるようメソッド開発時に波形処理パラメータを設定しましょう。
2. 不分離ピークの波形処理
■ タイムプログラムの利用
通常の波形処理パラメータによる波形処理だけでは適切に処理できない場合も,時間を指定して処理を設定するタイムプログラム(LCsolutionでは[波形処理タイムプログラム])を利用するとより適切な波形処理を行うことができます。
図A~Dのクロマトグラムは,同じクロマトグラムでも波形処理のされ方が違うと,面積値に大きく影響がでることを示しています。
図Aでは,不要な負ピークからベースライン補正線を引いており,各ピーク面積が過大に計算されています。この時,タイムプログラムで「負ピーク除去」を設定( 0.5分後開始,2分後解除)すると,図Bのように負のピークの影響をなくすことができます。
(負ピークの除去は,LCsolutionでは[負ピークの除去]で設定できます。)
次に,「DRIFT」の設定(下図参照)を変えることにより,垂直分割するか(図B),ベースライン分割するか(図C)を選択できます。
DRIFT設定線とベースライン補正線の関係
● A点からのDRIFT設定線よりも,B点は高く,C点は低いのでA-C線がベースライン補正線となる。
● C点からのDRIFT設定線よりもD点は低いので,C-D線がベースライン補正線となる。
(DRIFTの変更は,LCsolutionでは[Driftの変更]で設定できます。)
図B 垂直分割
図C ベースライン分割
また,強制テーリング処理(2分後開始,6分後解除)を行えば,図Dのような波形処理となります。 なお強制テーリング処理を行った場合は,他の未設定区間において,仮にテーリング状ピークであっても垂直分割されることになります。
(強制テーリング処理は,LCsolutionでは[テーリング処理ON/OFFの区間設定]で設定できます。)
これらの波形処理タイムプログラムによる波形処理命令やパラメータ変更は,一回のみでなく,複数回設定することができます。
(適切な波形処理パラメータの検討するのはメソッド開発時に行っておくことをお勧めします。)
図D 強制テーリング処理
■ 手動波形処理の利用
同じような分析条件のデータに対しては,同じ波形処理パラメータで解析することが望ましいです。しかし,これら波形処理タイムプログラムを用いても思い通りの波形処理が出来ない場合や,個々のピーク検出点の移動を行いたい場合は,個々のデータ毎に波形処理パラメータ(波形処理コマンド)を設定し,マニュアルでベースライン補正線を変更することができます。
メソッドの波形処理パラメータ(波形処理コマンド)と区別して,手動波形処理(マニュアル波形処理)と呼びます。
参考:LCsolution操作Q&A 手動波形処理
以上のように,波形処理の設定に注意を払うことで,ピーク面積再現性にかかわる因子を,一つ取り除くことができます。