イオンクロマトグラフィーQ&A
■ 溶離液の調製

Q: イオンクロマトに使用する水はどういったものが適切ですか?(お問い合わせ番号IC0101)
A: 逆浸透やイオン交換などを組み合わせて精製した超純水またはそれに準じる精製水を,フレッシュな状態で使用することを お勧めします。


 溶離液調製に用いる水の中にイオンが混入していると,ベースラインノイズの増大やドリフトの発生,ゴーストピークやマイナスピークの出現,定量精度の悪化といった 現象が現れることがあるので注意が必要です。
 溶離液や標準溶液などの調製に用いる水の規格については,JIS K 0557「用水・排水の試験に用いる水」が参考になります。 この中で,水はその純度に応じてA1からA4 までの4つの種別に分けられていますが,イオンクロマトにおいては少なくともA3 (試薬類の調製,微量成分の試験などに用いられるグレード) レベルの水を用いるようにし てください。 また,イオン性物質を測定するという性質上,比抵抗17 MΩ・cm以上を示すような残存イオン量の低いイオン交換水の使用を推奨しま す。
 このような水を作るためには,相応の能力を持った精製水製造装置が必要です。もしくは,試薬メーカーから液体クロマトグラフィー用蒸留水を購入して使用することも できます。

 精製水製造装置を導入する際には,「逆浸透とイオン交換」「イオン交換と蒸留」など,複数の精製過程を有する機種の中から選択することをお勧めします。 その上で ,必要とされる比抵抗値が安定して得られること,適切な製造能力 (スピード) を有すること,メンテナンスが簡便でコストが適切であることなどを考慮して選択してくだ さい。
 なお,水道水を原水として用いている場合,その中に含まれる無機・有機物量によっては精製水製造装置の消耗品が早く劣化したり精製水の純度が低くなったりすること もあります。 設置時にメーカーの方とよく相談するとよいでしょう。

 一方,水の使用量や頻度が小さい場合には,液体クロマトグラフィー用蒸留水を購入して使用するのも現実的な選択といえます。
 液体クロマトグラフィー用蒸留水は,一般にUV検出器を伴うHPLC用として販売されており,必ずしも無機イオン分析用として品質管理が行われているわけではありません 。 特にガラス容器に入った蒸留水の場合,けい酸イオンやナトリウムイオンの混入が認められることがあります。 製造から時間の経過したものほど汚染されている危険 性が高いと思われます。
 したがって,試薬メーカーから精製水を購入する場合は,それがイオンクロマトに適しているかどうかを確認した方が安全です。 また,容器や空気中から混入しやすい イオンを微量分析する場合は,できるだけ購入した水を使用することは避け,精製水製造装置で作られたフレッシュな水を使うようにすべきでしょう。

 最後に,製造もしくは購入した精製水は,なるべく早く使い切るようにしましょう。 精製水は,空気と接触させることにより徐々に汚染されて いきます。 特に洗びんに移した精製水は,毎日入れ替えるようにしてください。



Q:溶離液は,調製してからどれくらいの期間使用できるのですか?(お問 い合わせ番号IC0102)
A: 一概にはいえませんが,基本的には1~2日中に使い切りましょう。


 溶離液の使用期限は一概に何日とはいえません。 しかし,一般に希薄な水溶液であるイオンクロマト用溶離液は,時間経過とともに以下のような現象が発生します。
溶質の化学変化。
(例 : しゅう酸は空気と接触した水溶液中において数日程度で分解する)
空気中成分の溶け込み。
(例 : アルカリ性の水溶液は空気中の炭酸ガスを溶解し,pHや組成が変化する)
(例 : 空気中に漂う無機イオンを溶解し,本来そのピークが出る位置に負ピークが出現する)
容器からの溶出。
(例 : ガラス製容器からナトリウムイオンやけい酸イオンが溶出する)
(例 : 樹脂容器から添加剤が溶出する)
溶液の腐敗。

 溶離液の経時変化は,保持時間や分離の変化だけでなく,カラムの詰まりの原因になることもあります。 通常は調製後1~2日程度で使い 切ってしまうことを推奨します。



Q: 溶離液びんとしてどのような材質のものを使ったらよいですか?(お問い合わせ番号IC0103)
A: 1~2日程度の保存であれば,ガラス製・樹脂製のいずれも使用可能です。


 ガラス製のボトルからは,けい酸イオンやナトリウムイオンなどの溶出が起こるため,「イオンクロマトでは樹脂製のボトルを使う方が適切」とする考え方もあります。  しかし,調製した溶液を1~2日程度で使い切るという前提であれば,それほどの短期間で分析結果に影響が出るほどの溶出が起こることはありません。
 したがって,化学実験用として製造・販売されている容器を使う限りにおいては,ガラス製,樹脂製のどちらを使っても特に問題はないものと思われます。 ある程度長 期間保存する場合についてのみ,褐色の樹脂容器を使うのが適切です。 ここで特に「褐色」を指定したのは,光による微生物の繁殖を抑えるためです。
 なお,どのような素材の容器を使う場合も,きちんと洗浄してから使用しましょう。



Q: 新しい溶離液びんは,どのように洗浄して使ったらよいですか?(お問い合わせ番号IC0104)
A: 精製水で満たして数時間放置してください。


 新品のボトルは,中性洗剤やアルコールを使って洗浄してください。
 その後,ボトル内に精製水を満たして数時間放置してください。 このことによって,壁面に吸着している無機イオンを溶出させます。 急いでいる場合は,精製水を満 たした状態で超音波洗浄器にかけるのもよいでしょう。
 さらに,可能であれば,溶離液を満たした状態で同じ操作を行ってください。 最終的に満たされるものと同じ組成の溶液で「とも洗い」しておけば,より安心して使用 できます。



Q: 2010年4月の水道法改正に伴って,シアン分析システムの溶離液を変更しなければならないのでしょうか?(お 問い合わせ番号IC0105)
A: 本改正は,溶離液には関係しません。 弊社「シアン分析システム」をお使いの場合は, 従来通り「酒石酸緩衝液」を溶離液としてお使いください。


2010年2月17日付けで厚生労働省告示第48号が官報告示され,「水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法」(平成15年厚生労働省告示第261号)の一 部が改正されました(2010年4月1日から適用)。 この中には,「シアン化物イオン及び塩化シアン」検査方法(別表第12)の改正も示され,使用する緩衝液を酒石酸緩衝 液からリン酸緩衝液に変更する等の改正内容ですが,変更の対象となる緩衝液とは,「標準液調製」と「試料の保存」に使用する緩衝液です。  
「標準液調製」と「試料の保存」にはリン酸緩衝液を使用していただき,弊社シアン分析システム用の「溶離液」には,従来通り酒石酸緩衝液をお使いください。 

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