TOCによる工場排水の上流監視

 工場など事業場排水に含まれる有機性汚濁物質の監視は,水質総量規制など排水規制への対応や環境対策の点で不可欠なものとなっています。排水基準などの環境規制では,河川,湖沼,海域などの環境水域に放流される,最終排水が規制対象であり,これより上流の排水に対する規制はありません。しかし,工程上のトラブルや作動油等の排水への混入などがあると,河川,湖沼,海域などへの最終放流水を監視するだけでは,水質汚濁事故を防ぎきれない場合があります。
 そのため,有機物を迅速,確実に検出できるTOC計を利用した,水質汚濁事故の未然防止を目的とする排水の上流監視が注目され,石油化学,鉄鋼,自動車関連など,様々な大規模工場で導入が始まっています。

上流監視の必要性

  1. 異常排水の早期発見による「水質汚濁事故の未然防止」
    最終放流水の監視で異常排水が見つかっても,異常排水の環境中への放出を防ぐのに間に合わないかもしれません。排水をより上流側で監視することで,異常排水の環境への放出を未然に防ぐことができます。
  2. 排水処理の負荷軽減
    構内の各工場,あるいは排水処理の各段階で監視することで,処理の必要な異常排水の量を必要最小限とし,排水処理の負担を軽減が可能となります。また,排水処理施設に流入する排水の汚濁量を監視することで,排水処理負荷の適正化を図ることができます。

TOC計による上流監視の有用性

有機性汚濁の監視には,TOC計以外にもCOD計やUV計が水質自動計測器として使用されますが,上流監視の目的である 水質汚濁事故の未然防止 という観点から, 迅速性 異常排水の確実な検出 が重要と考えられます。
水質自動計測器 異常排水の確実な検出 迅速性
TOC計 ◎(有機汚濁) ○(5分周期)
COD計 ◎(COD) △(1時間)
UV計 ◎(1分以内)
  1. COD計の特徴
    有機汚濁の排水基準はCODであり異常排水の確実な検出という観点では最適といえますが, 測定に1時間も要するため迅速性という点で上流監視には不向きです。
  2. UV計の特徴
    迅速性に優れ連続監視にも適していますが, アルコール類や作動油などUV計では検出できない有機汚濁物質が存在します。 特に異常排水処理前の流入水の場合, このような検出できない有機物の含まれる可能性が高く, 異常排水の確実な検出 という点で上流監視には不向きです。
  3. TOC計の特徴
    TOC計はあらゆる有機性汚濁物質の検出が可能であり, 異常排水の確実な検出に優れています。 また,測定周期5分と測定の迅速性にも優れ, 上流監視 に最適な水質自動計測器と考えられます。
以上のような特徴により, TOC計による排水の上流監視 が注目されていますが,島津のオンラインTOC計 TOC-4200 は,このような上流監視用途においても優れた特長をもっています。
  1. 1台で複数の排水経路の監視が可能
    1台で最大6流路の測定が可能。排水処理施設に流入する複数の排水監視による異常排水源の特定や,排水処理施設の流入,流出排水を一台で測定できます。
  2. 懸濁試料の連続測定に適した,懸濁試料前処理器
    排水処理施設の流入水で多く見られる,懸濁物の多い試料の測定に適した試料前処理器を用意しています。
  3. シンプルで維持管理の容易な,多機能試料処理・注入システム
    装置内の流路構成が簡素化され,部品も少なく,故障や維持管理の手間を軽減しています。

工場排水の上流監視 設置例

下記例で「処理施設」「排水処理施設」の表現を使用していますが,排水処理には色々な方法(ろ過,ばっき処理,沈殿処理,活性汚泥処理,凝集沈殿,加圧浮上など)があり,環境中へ放流する前の最終処理施設を排水処理施設,その中間での一部の処理をする設備を処理施設としています。
設置例 1
  1. 放流水の監視 : 水質総量規制などの排出基準の監視目的での導入例です。(水質総量規制での使用時は,CODとの換算が必要です)
  2. 排水処理系統の上流監視 : 排出水を上流監視することで,さまざまなメリットがあります。
     1.異常排水の早期検知による,水質汚濁事故の未然防止
     2.異常排水の発生源が特定できるので,事故原因の特定と再発防止の迅速化
     3.排水処理設備の負荷の最適化による運転費用の軽減
  3. 雨水・冷却水の管理 : 雨水や冷却水は,通常,水質汚濁への影響を与えないものとして,未処理で河川などの公共水域に排出される場合がありますが,事故により,冷却配管へ有機物が混入したり,雨水排水路へ有機物が流入する危険性があります。 これら排水路をTOC計で監視することで,早期に異常排水を発見し,適切な処置を行うことができます。
設置例1
設置例 2
 3つの工場のそれぞれの処理施設前後をTOC計で監視し,異常値が見つかった工場・処理施設のみを対策します。 このため,下流に設けられている集中的な排水処理施設へ異常値の排水が流入しないようにできます。
設置例2
設置例 3
 この例ではそれぞれの工場の処理施設後をTOC監視し,異常値が見つかった工場・処理施設のみを対策します。 また下流に設けられている集中的な排水処理施設の前後もTOC監視します。
設置例 3
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