塩野義製薬 株式会社

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    低分子医薬品, バイオ医薬品

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    Open Solution, LCMS-2020

塩野義製薬株式会社 田澤様に島津 LC/MS オープンアクセス分析システムについてお話を伺いました。このシステムが簡単に使えて役立つツールとなるよう,PsiPortブラウザの開発段階では多大なご協力をいただきました田澤様に,さらにより良い製品を開発していくためのご意見をお聞きしました。

Customer

田澤 文 様

医薬研究本部
創薬研究所
田澤 文 様

*お客様のご所属・役職は掲載当時のものです。

塩野義製薬 株式会社
URL http://www.shionogi.co.jp/

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インタビュー

島津 LC/MS オープンアクセス分析システムPsiPort/LCMSsolutionLCMS-2010EVをお使いの目的を教えていただけますか。また弊社製品をお選びいただいた理由もお聞かせいただけますか。

インタビュー写真1

私たちはメディシナルケミストリーグループですので,主に反応チェック,精製物の確認,精製終了後の純度確認用に使っています。選定理由ですが,他社製品も含め色々な面から検討した結果,使い易さと機能面に加え,御社のアフターケアがとても充実している事が大きな理由の一つになったと聞いています。当時,トラブル時のレスポンスが遅いメーカーさんがあったようですが,その点において御社はトラブル時の対応が とても早く,信頼できるという点を重要視したという事です。

ありがとうございます。合成反応確認とか純度確認というお仕事だということですが,田澤さんの部署でこのシステムの利用度はいかがなものでしょうか?

現在2システムあり,メディシナルケミストならば全員使える状態です。フル稼働 しています。

それだけ多くの方が2台のパソコンに一度に集まってデータを見るということはまずないと思いますので,データを居室で閲覧や確認できるようなシステムが構築されていると思うのですが,各個人のPCを使われているのですか。

インタビュー写真2

そうですね。個人専用のPCと装置のPCが同じネットワークに繋がっていますので,WebベースでPsiPortを 利用しています。

PsiPortはWebベースのブラウザソフトなので見るのは簡単だと思いますが,データ管理や生データの再解析がどうしても必要な場合にはどうされていますか。

インタビュー写真3

サーバにLCMSsolutionソフトウェアが入っており,同時に複数ユーザーが使える状態ですので,パソコンからサーバ上のLCMSsolutionを使って生データを解析しています。

PsiPortでできることはいろいろあるのですが,田澤さんご自身は普段どのような使い方をされていますか。

測定登録,分析結果の確認,検索に使用しています。測定登録は,装置側PCのPsiPort Direct Access(5ステップでユーザーログインから分析開始までを行える機能)でサンプル情報を入力してサンプルをセットするだけです。あとは自動で測定が開始され,終了後には結果メールが送られます。測定者はメールからPsiPortにアクセスすれば,その測定結果のみをすぐに閲覧することが出来ます。同じ画面から,過去の測定結果も検索しています。反応のチェックでは経過時間ごとに反応液を希釈したものを複数回測定しますし,純度確認の際にはNMR測定サンプルを希釈して測定しています。

現状でPsiPortに対するご要望等があればお聞かせください。今後の製品開発に生かしたいと思っていますので。

インタビュー写真

PsiPortの解析機能はとても利用しやすく,ほとんどの場合生データの再解析を必要としません。他社のソフトウェアと比較してもPsiPortのほうがより解析しやすいと感じているユーザーが多いです。各種検出器のピーク番号が統一して付番されており,ピークをクリックすると連動して,他の検出器の同じピークが認識され,スペクトルが表示されますので,見た目にとてもわかりやすいです。表示されるクロマトグラムやスペクトルをコピー機能によりレポートに貼付したり,弊社では電子ノートを導入していますので,電子ノートに貼付しているユーザーも多いです。

ユーザーが必要な情報を必要な形でご利用いただいているという事ですね。

そうですね。画面の表示スタイルはいくつかありますが,私は,プレートという画面表示を主に利用しています。プレート表示ですと左側にクロマト,右側にスペクトルが表示されており,一目で全体を確認することができます。御社のLCMSシステムを設置する前に,PsiPortを試用させていただきました。その際には,レイアウトや測定登録時の動作について確認し,より使いやすい形になるようにアレンジしていただきました。ですので,ほとんど,思ったとおりに使えるという印象です。強いていえば,PsiPort Direct Access のサンプル位置自動指定を任意指定できるようなオプションがあったら,便利かと思います。

わかりました。それは開発側に相談してみます。たまに使われるというLCMSsolutionのブラウザに関しても,何かご要望はありませんか。

インタビュー写真4

操作性については,簡単で,とても使いやすいと感じています。私も,稀にしか利用しませんが,操作手順を覚えていなくても,難なく利用できます。またセルを好みの形に分割でき,そのままのレイアウトでプリントアウトできる点も便利だと感じています。ただ,簡易解析用のため,ピークの波形処理機能がついておらず,少し不便を感じておりました。次の新しいバージョンはブラウザでもこの機能がついていると伺っております。

おっしゃる通りです。新しいバージョンでは,今言われたピークの波形処理とかすべて,MSのほうも手動波形処理というのが入りましたので,もしそういうことがあったときにはお役に立てると思います。機能も増えていますし,機会があればぜひ使っていただきたいと思います。
ではLC/MSの分析条件についてお聞かせいただきたいのですが。

各研究者が扱っている化合物の特性に合わせて使い分けていますが,多くの場合,カラムは3mm i.d.x50mm,粒子径2.2μmのShim-pack XR-ODSを用いて,4分間のグラジエントメソッドで分析しています。移動相は水/アセトニトリル(0.1%ギ酸入り)です。MS側条件は納入時に設定していただいたものを使っています。フラグメンテーションしやすい化合物の場合は,温度設定のみを少し低めに変更しています。他の検出器にはPDAとELSDを利用しています。

MSハードウエアに関する印象はどうでしょうか。

インタビュー写真1

短時間で分析をしていますので,各検出器のクロマトピークを比較すると,MSクロマトのピーク幅が若干広くなっていますが,私たちが使う分には十分な性能だと思っています 。

LCMS-2020という新しい機種は更にソフトウェア,ハードウエア性能ともに向上しています*)
超高速LCProminence UFLCについてはいかがですか。

*)具体的には超高速分析に対応できるよう,スキャンスピード等の性能が飛躍的に向上しています。
超高速LCのシャープなピークを確実に捉えます。

オートサンプラだけで使用しているシステムとラックチェンジャ付属のシステムがあります。ラックチェンジャを利用しているシステムでは,測定と測定の間にラックが移動する分,時間がかかります。1人のユーザーが一度のログインで測定する本数は1~数本ですので,測定効率が落ちてしまいます。ラックチェンジャを利用せず,オートサンプラのみ利用すればもっと早くなりますが,ニードルが動いているときに触ってしまいニードルを曲げてしまったり,正しくプレートをセットしておらず測定がスキップされてしまうという人為的なエラーが発生してしまいます。ユーザーが注意して使えばよいことですが,人為的なエラーを未然に防いでくれるようなオートサンプラだと安心して使用できますね。注入する部分とは切り離されたところにサンプルがセットできて,だけど動作が速ければなお良いですね。

ニードルが動作している間にオートサンプラを開けたら音が鳴るとか,動作している間はドアがロックしているというような 機能があればいいのかなと個人的には思っています。貴重なご意見として開発担当者に伝えておきます*)

*)お客様からのご提案により,Prominence UFLC ラックチェンジャの今後の機能改良により改善する予定です。

毎月メンテナンスを実施していただいていますので,その他は問題ありません。運用側で実施していることはカラムの交換や時々起こる通信エラー等の復帰などです。LC/MSの管理者メンバーでメンテナンス講習会を開催していただきましたが,ほとんどそういう煩雑な操作をすることなく利用できており大変助かっています。

分析するうえで,他に頭を悩ましていることはありますか。分離条件とか前処理に関してはいかがですか。

インタビュー写真7

これまでの分析については特に困っていることはありませんが,最近,話題になっているアセトニトリル供給不足の問題については,とても心配しています。カラムをダウンサイズして,流速を下げるという方法がすぐにできる対策ですが,サイズダウンに伴ってサンプル調整時の希釈率の変更など,ユーザー側に手間がかかることは避けたいところです。

弊社のサンプラーは0.1μLから設定できます。精度を追求するような定量分析では不利になってくるのですけれど,それでも条件によっては1%ぐらいの再現性が出ます。

そうですか。定量分析としては利用していませんし,目的物が確認できさえすればよいので,0.1μL単位で設定できるのであれば対応できますね。

今の職場でこんな装置や技術があったらいいなというのがもしあればお聞かせいただけますか。合成ケミストとしての意見のようなものがもしあれば。

弊社のメディシナルケミストの多くは反応の確認,後処理,精製時など頻繁にTLCを利用しています。全てLC/MSで行っている人もいれば,TLCを主に利用している人も多いです。TLCは展開してすぐに結果を確認できますが,LC/MSはフル稼働になっていることが多く,測定までに時間がかかることも度々です。TLCでの確認と同じスピードで利用できる装置(MS)があればとても便利ですね。また,多くの場合はTLCやクロマト精製では順相を利用しています。一方でLC/MSは逆相 条件で利用していますので当然ながらTLCのスポットの順序とは逆になってしまいます。順序が必ずしも真逆になるわけでもありませんので,TLCのスポットとLC/MSのピークとの紐付けがわからなくな ることがありますよね。

今までいろいろ個々に一つずつお話を伺わせていただいたのですが,最後に全体的な印象とか,弊社に対するご意見等があれば併せてお聞かせください。

いつもとてもよくしていただいているので,分析の専門ではないユーザーとしては大変ありがたく,便利に利用させていただいています。システム全体にしてもトラブルの際にはすぐに対応してくださいますし,装置についても今私たちが使っているレベルでは十分なものだと思いますので満足しています。

いろいろとどうもありがとうございました。

  • A bridge with our customers!
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開発者のコメント

分析/分取/PsiPortシステム

オープンアクセス用ソフトウェアPsiPortは簡単にサンプル登録ができ,インターネットエクスプローラと言ったWEBブラウザからのデータ閲覧機能を備え,追加投資なしでクライアントPCからビジュアルにデータの確認を行うことがきるという特長があります。しかし,塩野義製薬株式会社様にお納めした当時,これほど多数のユーザー様に使っていただくのは初めてで,また上位サーバへの接続など開発時には検討しきれなかったことも多くありました。
塩野義製薬株式会社様にご協力いただき1つ1つ解決していくと共にさらに改良点を示唆していただくことにより,より良いシステムになりました。私ども開発陣には大切な経験であり,PsiPortを自信を持ってお奨めできるシステムに成長させることができました。どうもありがとうございました。