課題解決事例3

細胞観察(2)
ナノサーチ顕微鏡SFT-3500を使った課題解決事例
細胞の硬さから分かること
 ナノサーチ顕微鏡による細胞の耐熱性,耐UV性研究の新しい評価手法

関連情報:キリンホールディングス株式会社:微生物制御に革新!「ナノサーチ技術」で困難だった芽胞(がほう)形成細菌の耐熱性をすばやく測定

【克服すべき課題】 食品衛生上重要な細胞(バクテリア)の耐熱性,耐UV性は細胞の硬さと関係があると考えられています。しかし,その個々の細胞の硬さを調べる手法がありません。

 細胞や芽胞は光学顕微鏡にて観察可能ですが,硬さ計測といった物理的な計測は出来ません。
一方で SPMではフォースカーブ法による硬さ測定は可能ですが観察視野が狭すぎるため,芽胞一個を探し出すのに大変な時間と試料調整を必要としています。

 

【解決!】
ナノサーチ顕微鏡では,レーザー顕微鏡機能ですばやく細胞(バクテリア)を捉え,その細胞をSPM観察することができます。この見つけ出した細胞の一個の硬さ(フォースカーブ)測定も確実に短時間で行えるようになりました。

ナノサーチ顕微鏡 SFT-3500(キリンビバレッジ株式会社 コア技術研究所様)

【芽胞の硬さについて】

芽胞の耐久性形成のメカニズム(Parcedes-Sabja et al(2008))

硬さ測定について,ここではバクテリア芽胞について述べていきます。芽胞は水分の少ない原形質の芯部とそれを覆う厚い芽胞殻から成っています。また芽胞はジピコリン酸(DPA)という特有の物質を持っており,芽胞形成過程において,このDPAとCaの結合により芽胞内部が脱水します。芽胞の硬さはこの脱水によるものと考えられます。(Parcedes-Sabja et al(2008))

【SPMフォースカーブについて】

芽胞の耐久性形成のメカニズム(Parcedes-Sabja et al(2008))

SPMではカンチレバーと試料との距離を変えながら,カンチレバーに働く力を測定し,グラフ化できます。硬さ測定は,一定距離だけ芽胞にカンチレバーを押し込み,この時に生じる斥力から芽胞のヤング率を求めました。
 ヤング率E(N/m)=斥力σ(nN)/押し込み距離ε(nm)

【観察と測定結果】

SFT-3500による芽胞のSPM観察像(A)病原菌coagulans (B)芽胞

右図は,ナノサーチ顕微鏡で捜し出したバクテリアのSPM観察像です。
図Aは,芽胞が病原体に内包されている様子です。
図Bは,病原体から放出された芽胞です。

原核生物,大腸菌,ブドウ球菌,緑膿菌および枯草菌の芽胞について硬さ評価を行い,硬さと耐熱性および耐UV性の相関性を図に示しました。
その結果,硬さは耐熱性および耐UV性に強い正の相関が見出されました。
今回,新しく開発したナノサーチ技術は細胞一個という極めて小さな対象に対しての高分解能観察はのみならず,その物理的な計測を短時間で可能としました。今回ご紹介した食品製造と衛生分野にとどまらず,医療分野や微小デバイス,高機能材料などへの応用が期待されます。

● 2011年 IUMS(国際微生物会議)
 New Developments in Nano-Search Technology ‐What Cell Hardness Can Tell Us.
Koichi Nakanishi, Akinori Kogure, Takenao Fujii, Ryohei Kokawa, Keiji Deuchi より改変
● 引用文献
 Koichi Nakanishi, Akinori kogure, Takenao Fujii, Ryohei Kokawa, Keiji Deuchi, "Development of method for evaluating cell hardness and correlation between bacterial spore hardness and durability", Journal of Nanobiotechnology, 10, doi:10.1186/1477-3155-10-22 (2012)
 中西弘一,新しい微生物制御技術の開発-ナノサーチ技術の応用展開,食品工業 5月30日号,56-62(2011) 


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