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ユーザーベネフィット Application News はじめに リチウムイオン電池は、スマートフォンやノートパソコ ンなどの身近なものから、電気自動車、再生可能エネル ギーの蓄電システムなどの幅広い分野で不可欠なエネル ギー源となりつつあります。リチウムイオン電池は基本的 に正極、負極、電解液、セパレータの四つの要素で構成さ れます。正極材はリチウムを受け渡すための遷移金属酸化 物(例:リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物: NMC)やリン酸鉄リチウム(LFP)が用いられ、負極材は 一般に黒鉛が主流ですが、シリコンなど高容量材料の導入 も進んでいます。リチウムイオン電池の課題として正極材、 負極材の亀裂があります。これらは製造時また充放電時に 繰り返し圧力を受けるために生じ、サイクル特性などの電 池性能に影響すると考えられています。そのため、機械的 特性値と電気化学的な性能の関係についての研究が進めら れています 1),2) 。 本報では、機械的特性の定量評価の一例として各電池材 料の圧縮試験事例を紹介します。微小圧縮試験機MCTシ リーズは微小な単粒子の圧縮試験に適しており、さらに MCT-ADは測定粒子の抽出、自動測長、試験の自動運転が 可能なため、より多くの測定数にて評価できます。 表1 正極材の試験条件 試験の自動運転が可能なため、測定者の操作が必要な作業時間を大幅に短縮できます。 最大100点の連続試験を行うことができます。 粒子径の測長をソフトウエアが行うため、測定者間の差異を減らすことができます。 連続試験対応微小圧縮試験機による リチウムイオン電池材料の強度試験 大城 真愛 微小圧縮試験機MCT -AD 微小圧縮試験機MCT-ADについて 連続試験を行う場合は、事前に単一試験を行い適切な試 験条件を確認の上設定します。その後、粒子の測長方法や 粒子径範囲、円形度などの抽出項目を設定し、試験に適し た粒子を選別します。表1に正極材、表2に負極材の試験条 件を示します。なお、圧壊強度係数は2.8(JIS Z8844対応) を選択しました。また、図3にそれぞれの測長した粒子画像 を示します。 図1 MCT TM -ADと測定原理 試料 : 正極材(NMC811系) 粒子径 : 10~15 µm程度 試験機 : 微小圧縮試験機MCT-211AD 平面圧子Φ50、サイド観察キット 試験モード : 圧縮試験 試験力 : 50 mN 負荷速度 : 2.2 mN/sec 測長方法 : 粒子面積/面積円相当径 円形度 : 85%以上 アスペクト比 : 0.88以上 試料 : 負極材(グラファイト系) 粒子径 : 10~15µm程度 試験機 : 微小圧縮試験機MCT-211AD 平面圧子Φ50、サイド観察キット 軟質モード *次項 、低試験力モード 試験モード : 圧縮試験 試験力 : 8 mN 負荷速度 : 0.07 mN/sec 測長方法 : 最大長/最大径垂直長 円形度 : 70%以上 アスペクト比 : 0.70以上 表2 負極材の試験条件 図3 測長した粒子画像 a):正極材 b):負極材 b) a) 下部加圧板 試料粒子 平面圧子 試験力の負荷 試験条件 図1に装置外観と測定原理図を示します。MCTシリーズは 下部加圧板上に設置された単粒子を平面圧子で圧縮します。 このとき、事前に測長した粒子径と試験により得られた試 験力-変位グラフより各種強度を算出します。 MCT-ADは従来測定者が1測定ごとに手作業にて行ってい た測定粒子の選別、測長および圧子の清掃動作を自動化し ました。これにより、測定者が操作する時間を集約し、省 力化を実現しつつ、最大100点の連続試験が可能です。 MCT-ADによる測定の流れを図2に示します。まず下部加 圧板上に試料を分散します。試験条件設定を設定後、指定 した範囲を電動XYスライドステージが稼働しながらスキャ ンします。得られた各画像をつなげた広域画像より自動で 粒子を検出します。そして各粒子の自動測長を行い、試験 に適した粒子を指定個数抽出します。その後、圧縮試験と 清掃を自動で繰り返します。 図2 MCT-ADの測定の流れ 解析 連続試験 圧子の清掃 試験 粒子 決定 自動 測長 粒子 検出 試験 条件 設定 試料 分散 測定者不要
Application News © Shimadzu Corporation, 2026 分析計測事業部 https://www.an.shimadzu.co.jp/ 本資料は発行時の情報に基づいて作成されており、予告なく改訂することがあります。 本文中に記載されている会社名、製品名、サービスマークおよびロゴは、各社の商標および 登録商標です。 本文中では「TM」、「 」を明記していない場合があります。 初版発行:2026年 4月 01-01168-JP まとめ 正極材の測定結果 MCTは、株式会社島津製作所またはその関係会社の日本およびその他の国における商標です。 試料点数100点の連続試験を行いました。本試験に用いた 正極材は破壊挙動を示したため、破壊強度を評価に用いま した。解析機能により、破壊強度の中央値に近い70点にて 評価した結果、平均値は125.3MPa、標準偏差は15.1でした。 図4に試験力ー変位グラフを、図5に強度ー粒径グラフを示 します。 本報は、リチウムイオン電池の電極に使用されている材 料を対象に、MCT-ADによる力学的評価例を紹介しました。 従来は測定者の作業負荷が大きかった測定でしたが、MCT- ADは測定粒子の抽出、自動測長、試験の自動運転を可能に することで、作業の大幅な省力化と属人化の解消を実現し ます。MCT-ADは電池材料に限らず微小な粒子形状を持つ 試料の圧縮試験に対応できるため、製品開発だけでなく品 質管理にも有用です。 <謝辞> 本アプリケーションの作成にあたり、株式会社KRI様には、 正極材試料をご提供いただきました。心より感謝申し上げます。 負極材の測定結果 試料点数100点の連続試験を行いました。本試験に用いた 負極材は明確な破壊挙動を示すことが少なかったため、粒 子径の10%変形時の試験力から算出される変形強度を評価 に用いました。また、試料が軟らかく表面の認識が困難 だったため、専用モード(軟質モード)を有効にして測定 しました。解析機能により、変形強度の中央値に近い50点 にて評価した結果、平均値は1.8MPa、標準偏差は0.5でした。 図8に試験力ー変位グラフと変形強度を算出する粒子径10% 変形付近の拡大図を示します。 試験後の試料画像も保存でき、解析時に確認することが 可能です(図6)。また、オプションのサイド観察キットを 用いて、試料横方向からの試験中の様子をリアルタイムで 観察しました(図7)。本キットを用いることで粒子が圧縮 される様子をリアルタイムで観察および動画として保存で きます。 この試験を従来機で行った場合、測定者は実機操作に5時 間以上要していました。MCT-ADでは約20分の条件設定操 作のみ行えば、測定は自動運転にて行います。その結果、 測定者の作業時間は従来比で1/15以下に短縮され、省力化 を実現しました。 図4 正極材の試験力ー変位グラフ(N70) 図5 正極材の強度ー粒径グラフ(N70) 図6 試験後画像 図7 サイド観察キット画像 正極材 図8 負極材の試験力ー変位グラフ(N50) 拡大図 試料の分散 単粒子の強度試験を行うMCTシリーズでは、測定対象で ある一粒の粒子のみが圧子の下に配置される必要がありま す。そのため、試料を下部加圧板上に重ならないように分 散させます。今回は図9に示す試料分散治具(シリンジによ る負圧方式)を使用して、簡便に下部加圧板上に試料を散 布しました。 図9 試料分散治具および正極材分散状況(広域画像2x2mm) <参考文献> 1) MoonMin et al, “The correlation between particle hardness and cycle performance of layered cathode materials for lithium-ion batteries,” Journal of Power Sources, 486 (2021) 229359. 2) Omirkhan et al, “Investigating the effect of lithiation on polycrystalline NMC811 Li-ion battery cathode cracking using in situ SEM micromechanical testing,” Energy Environ. Sci., 18 (2025) 9254
アンケート 関連製品 一部の製品は新しいモデルにアップデートされている場合があります。 MCT™シリーズ 微小圧縮試験機 関連分野 クリーンエネルギー リチウムイオン電池 自動車 工業材料・マテリア ル ガラス・セラミック ス 材料別評価(リチウ ムイオン電池) 価格お問い合わせ 製品お問い合わせ 技術お問い合わせ その他お問い合わせ Powered by TCPDF (www.tcpdf.org)