細孔内に水銀が侵入し得る条件は、圧力P 、細孔直径D 、水銀の接触角と表面張力をそれぞれ θ と σ とすると、力の釣り合いから次式で表せます。
接触角と表面張力を定数とすれば、圧力Pとそのとき水銀が侵入し得る細孔直径Dは反比例することになります。実際の測定では、圧力Pとそのときに侵入する液量Vを、圧力を変えて測定することにより得られる、P-V曲線の横軸Pを、そのままこの式から細孔直径に置き換え、細孔分布を求めています。
では、この接触角と表面張力はどのように決めればいいのでしょうか?
接触角や表面張力は、固体と液体(水銀)間に働く力とその方向に関するものですから、本来は固体試料によって適切な値を設定しなければなりません。ところがこれらの真値を決定することは容易ではありません。
特に細孔径に影響が大きい接触角ですが、通常の接触角の測定は平板上の固体表面に、水銀の液滴を落として実際にその界面でなす角度を測定することが行われています。
このとき、
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実際の細孔入口で働く接触角と、平板と液滴の角度を同一視していいのか?
円筒細孔入口と平板を同一視できるか?(前者は数100μm~数nmの細孔入口であり、後者はマクロ的) |
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多孔体と同一の性質をもつ平板は製造可能か? |
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高圧・高温雰囲気での接触角と常温常圧でのそれと同一視していいのか?
(水銀圧入法は断熱圧縮のため内部の温度が上昇します) |
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前進接触角と後退接触角は区別すべきなのか?
(これは最近のソフトでは入力可能です) |
など難しい問題があるので、
接触角は130~140°の値を固定して使用されているのが普通です。
表面張力も同じような意味合いで480~490mN/mの値がよく使用されます。
文献値があればそれを採用されるのがいいと思います。また、顕微鏡などで細孔径の絶対値を確認し、逆に接触角や表面張力を推定する方法もあります。
これらの方法のうち何れかをご採用ください。逆に言えば、水銀圧入法の測定結果には、必ず(使用した)接触角・表面張力を明記する必要があるということをご注意ください。
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