vol.71 「HPLC2008 Kyoto」を終えて

talkのご執筆
田中信男 先生

2009年1月発行
田中信男先生

京都工芸繊維大学 工芸科学研究科  教授

(ご所属・役職は2009年1月発行時)

第33回高性能液相分離及び関連技術国際シンポジウム(The 33rd International Symposium on High Performance Liquid Phase Separations and Related Techniques: HPLC2008 Kyoto)は,第19回クロマトグラフィ-科学会議との共通プログラムを含み,2008年12月2~5日,京都大学桂キャンパス船井哲良記念講堂において開催された。このシンポジウムは,(1) 分離科学における最先端を示したほかに,(2) ナンバーをもつHPLCシリーズシンポジウムとして初めてアジアで開催されたものであること,(3) 我が国のクロマトグラフィー科学会と中国クロマトグラフィー学会との共同で組織されたこと,(4) HPLCシリーズ国際シンポジウムにおいて初めてアジア各国から多数の参加者があったことなどにおいて,その意義があったと考えられる。

田中信男 先生

HPLC2008 Kyotoには,中国(68名),台湾(31名)を含むアジア諸国から約120名,ヨーロッパ諸国から40名,アメリカから20名(国外参加者合計185名),国内参加者を併せて,26カ国,435名が参加し,前回HPLC Kyoto(2001年)と比較して,参加者,発表件数とも約1.5倍となった。口頭発表・ 講演92件,ポスター発表241件があり,液体クロマトグラフィー(HPLC),キャピラリー電気泳動(CE),マイクロチップ電気泳動(MCE)及び関連分離・検出法の理論,分離剤,機器,分離技術の開発ならびにそれらの医学,薬学,生化学的応用に関する研究発表と意見交換が行われた。

最近の高性能微粒子充填カラムの開発と,高圧・高速・精密,分離・検出法の応用の進展を反映して,とくに(1) 分離媒体(超高性能カラム,キャピラリーHPLC,CE,MCE分析システム等)におけ る進歩,(2) 複雑組成試料の超高性能分離,超高速分離に関して,試料の前処理のオンライン化,二次元分離,ならびに,(3) HPLC及びCE, MCEの医学,薬学,生化学的応用,proteomics, metabolomicsにおける質量分析計(MS)とのハイフネーションによる精密分離,検出などにおいて,大きな進歩が報告された。発表された成果は,今後の分離科学の方向性を予測するものと考えられる。 HPLCにおいてはカラムの限界的性能発現のための条件と機器の性能の限界とが近くなり,高性能カラムの仕様が将来のHPLC機器の仕様に影響を与える可能性が示唆された。 また,このような限界的性能を示す機器,分離剤の応用は,広い範囲の生命関連科学の進歩の速度にも影響を与えるであろう。現在のように高性能分離媒体や機器が開発されつつあるときにその研究発表や意見交換に参加することは,進歩に対する迅速な対応を可能とするものと思われた。

HPLC2008 Kyotoにおいて中国から約90件の発表があったが,最近の中国における研究の進展は著しく,ポスター発表において中国と日本がポスター賞7件の発表のうち6件を占めたことは,Hometown Decisionを考慮しても注目に値すると思われる。 また,Evening Sessionにおいて若手研究者15名がすべて英語圏外からの参加者であったにもかかわらず,非常に興味深い話題についてレベルの高い発表を行ったことは次世代の分離科学にとって心強いものであった。 クロマトグラフィ-関連学術誌の論文投稿数,掲載数の増加や,中国のクロマトグラフィ-人口が10~20万人以上と推定されることなどを考えると,将来,非常に厳しい競争も予測される。 高速化,ミクロ化,自動化などが流れとなり,理解や操作が高度になるとともに個人がカバーできる領域が狭くなりがちなとき,機器,分離媒体,理論,条件開発,サンプル前処理などについて,基礎に基づいて考える人材を育てていくことが非常に大切に思われる。

HPLC2008 KyotoについてPermanent Scientific CommitteeからClosing Remarkとして「Scientific, Social両面において非常に良い会議であった」と評価されたが,これも島津製作所をはじめとして多くの企業,財団,大学からのご支援と,京都大学大塚教授(Chairman)とその研究室の方々の努力によるものであり,心から謝意を表する次第である。 今後の開催予定は,2009年-ドレスデン,2010年-ボストン,2011年-ブダペスト,2012年-アナハイム,2013年-アムステルダムとなっている。 アジアにおいては2011年,大連において,中国で初めてのHPLCシリーズシンポジウムが計画されており,その次になるとまだ確定していないが,ヨーロッパ-アジア-アメリカが交代で順に年1回開催するシリーズとして初めてアジアで2014年に開催される可能性も話題に上っている。 そのときには参加者もさらに倍増するものと思われるが,我が国においても分離科学と関連分野の一層の発展が期待される。

 

HPLC2008Kyoto 会場風景
シンポジウムバッグと要旨集

シンポジウムバッグと要旨集

ウェルカムパーティ

ウェルカムパーティ

ランチョンセミナー(島津製作所)

ランチョンセミナー(島津製作所)

ポスター会場

ポスター会場

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