vol.55 NOW 「HPLCによる食品中プリン体の分析」

NOWのご執筆
金子 希代子 先生

2004年7月 発行
金子 希代子 先生

帝京大学 薬学部 物理化学講座薬品分析学教室 助教授

(ご所属・役職は2004年7月発行時, 2007年10月時:帝京大学 薬学部 物理化学講座薬品分析学教室 教授)

現在,成人男子の15~20%が血清尿酸値7.0mg/dl以上の高尿酸血症,すなわち痛風予備軍であるといわれている。 痛風は第二次世界大戦まではきわめて稀な疾患であったが,今では患者数が70万人を超えており,戦後60年間の生活様式(特に食生活)の変化が生活習慣病である高尿酸血症・痛風の増加をもたらしたと考えられる。

プリン骨格を持つヌクレオチド,ヌクレオシド,塩基を総称してプリン体と呼ぶ。 これらはプリン代謝経路の合成系に入ってDNA,ATPなどを生成し,核酸代謝,エネルギー代謝の結果,ヒトでは最終的に尿酸に代謝される。 尿酸は水に溶けにくいため,腎臓での排泄が限られていてヒト体内に蓄積されやすくなっている。 プリン体は食品中に旨味の成分として含有されているが,食品に含まれるプリン体は消化管で吸収されてプリン代謝経路に入り,体内の尿酸プールを増加させる(図1)。 増加した尿酸は血中の尿酸濃度に反映される。

図 1 プリン体と尿酸代謝
図 1 プリン体と尿酸代謝

食品中プリン体の分析は,まず,食品をホモジナイズ後,凍結乾燥してから,70%過塩素酸を用いて加水分解してプリン体をプリン塩基に分解する。 中和後,上清に含まれるプリン塩基をHPLCにより測定する。 HPLC条件は表1 に示した通りで,この条件下,アデニン,グアニン,ヒポキサンチン,キサンチン,尿酸は良好に分離する(図2)。 食品中にはさまざまな夾雑物の存在が予想されるため,ピークの同定にキサンチンオキシダーゼ(XO)とグアナーゼを用いて反応前後のピークを比較して測定している。

表1 分析条件

装置 :島津LC-VP
カラム :Shodex Asahipak GS-320 HQ (7mmI.D.×300mm)
移動相 :150mM りん酸ナトリウム緩衝液(pH 2.5)
流量 :0.6mL/min
カラム温度 :35℃
検出 :UV 260nm
図 2 標準品のクロマトグラム
図 2 標準品のクロマトグラム
■ ピーク成分
1. アデニン
2. グアニン
3. ヒポキサンチン
4. 尿酸
5. キサンチン

 

大量の飲酒は血清尿酸値を高めることが報告されている。 特にビールにその作用が強い。 ビール中のプリン体含量は決して多くはないが,アルコールの作用と重なって,より血清尿酸値を上げやすくなると考えられる。 近年,プリン体99%カットのビールが販売されているが,確かにプリン体が殆ど含有されていない。

プリン体は旨味の成分として食品に含有されている。 過度な食事制限は避けるのが望ましいが,高尿酸血症・痛風では推奨される1日のプリン体摂取量が400mgであるので,これを目安に制限して,豊かな生活を送っていただきたい。

参考文献

  1. 藤森 新,中山裕子,金子希代子,大山博司,神林隆明,赤岡家雄: アルコ-ル飲料中のプリン体含有量。 尿酸 9: 128-133, 1985.
  2. Ogata E., Yamanobe T., Kaneko K., Sawashige K., Mizunuma M., Yamanouchi T., Iijima M. and Fujimori S. Contents of purine bases in beer. Gout and Nucleic Acid Metabolism 24 (1) : 9-13, 2000

*痛風患者数は,LCtalk vol.55発行時は40万人と記載しておりましたが,その後増加し2007年Web掲載時は70万人と記載変更しました。

関連情報

Top of This Page