目次へ 戻る 次へ
LCtalk特集号「移動相の脱気」

6-2)糖分析カラム-屈折計で高感度ベースラインを得るために

UV検出が広く用いられる中で,糖分析やGPC(SEC=サイズ排除クロマトグラフィー)は基本的に屈折計による検出が行われています。 一般に屈折計は,ベースライン安定性が悪いもの,と決めつけられがちですが,実は真犯人は移動相中の容存空気やカラム温度変化であることが多いのです。 

i)配位子交換カラム(Shim-Pack SCR-101Pなど)
この種のカラムは,シャープなピークを得るために分析カラム温度を80℃付近に設定します。 従って,移動相ビン中で空気が飽和溶解量であっても,カラム出口及びその下流では気泡が発生しやすくなります。 このとき,(1)あらかじめオンライン脱気を行って容存する空気量を減らしておくか,(2)背圧をかけて気泡発生を抑制します。 ところが,(2)について言えば屈折計自体にあまり背圧をかけることができません。 水を0.8mL/minで送液している時は,0.3mmL.D.×50cm(約0.04MPa,0.4kgcm-2)くらいを限度に考えて下さい(目詰まり無し・サンプルセルのみ通液時が前提)。 そこで,屈折計の前に抵抗管を入れます。 図44のように,カラムオーブン出口-屈折計入口間に0.2mL.D×50cmの空冷管(水冷にしてもよい)を入れ,圧力が少しかかった状態で冷やすことにより気泡発生を抑制することができます。 

典型的な分析条件を以下に示します。 
カラム:Shim-pack SCR-101P(7.9mmL.D.×300mmL.)
移動相:水
流量:0.8mL/min
カラム温度:80℃
検出:示差屈折計 RID-6A(温調ON,感度2×10-6RIUFS)

なお,移動相が水のみの場合は,容存する空気量変動による屈折率変化への影響はあまり大きくないため,セル中で気泡発生しなければ厳密な脱気でなくても前述の感度で使えます。 
ii)順相カラム(Shim-pack CLC-NH2など)
典型的な分析条件を以下に示します。 
カラム:Shim-pack CLC-NH2(6mmL.D×150mmL.)
移動相:アセトニトリル/水=7/3
流量:1.2mL/min
カラム温度:室温
検出:示差屈折計 RID-6A(温調ON,感度8×10-6RIUFS)

この条件で注意すべきことは,移動相調製です。 グラジエントのシステムでアセトニトリルと水の混合比を設定して相益するのは不適切で,5-1)項の加温かくはん(1)が必要です。 分析中にオンライン脱気をする場合は,密閉加圧型のHeパージを用いるべきです。 できれば一定温度に保つことが望まれます。 恒温室では2×10-6RIUFSでの分析が可能となります。 
次にカラムの保温(正確には微少温度変化緩衝)です。 室内の風の動きで微妙にカラム温度が変化します。 このため,-NH2基まわりの水層の厚さが変わり,カラム溶出液のアセトニトリル/水の比率が変動します。 そこで,カラムに直接風が当たらないように,エアキャップを3重に巻く(図45)などして,温度変化を緩衝します。 
なお,カラムオーブンONの状態でも,カラムの設置位置等によりファン風の強弱変化を受けることがありますし,また逆相カラムでも同様の現象が生じます。 
カラムオーブン出口-屈折計入口間の空冷管設置例
図44 カラムオーブン出口-屈折計入口間の空冷管設置例
エアキャップを巻いた分析カラム
図45 エアキャップを巻いた分析カラム

* 本ページはLCtalk特集号5(1991年)をhtml化して一部修正を加えたものです。
従って,最新の装置情報・技術情報とは一致していない所があります。