HPLC による有機酸分析
・・・分離と検出の最適化

UHPLC/HPLC Applications

LCtalk97号 Applications

 有機酸の分析は,風味香気成分の測定を目的として,醸造製品や発酵製品で行われてきました。近年では,バイオエタノールの製造過程におけるモニタリングや培養細胞・バイオプロダクションの研究,医薬品中のカウンターイオンの分析など幅広い分野で有機酸が分析されています。有機酸は種類が多く,短波長域での紫外吸収しか有しないため,HPLC により有機酸を精度良く分析するには,分離と検出の最適化が重要です。

(1) 分離の最適化

 有機酸は,逆相クロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィーでは十分な保持や分離が得られません。図1 は,イオン交換クロマトグラフィーによるモノカルボン酸の分析例ですが,これらの分離が困難なことがわかります。

 有機酸の効率的な分離には,イオン排除クロマトグラフィーが適しています。図2 に,イオン排除クロマトグラフィーの原理を示します。イオン排除クロマトグラフィーは,主として有機酸の解離度(pKa)により保持の強さが決まります。負電荷をもった充塡剤表面に対し,強酸は電気的反発力のため細孔内に入ることができず早く溶出するのに対し,有機酸のような弱酸は反発力が弱いため,その電荷の大きさにより細孔に浸透できる度合いが決まります。つまり,解離度が小さい有機酸ほど細孔に深く浸透して保持されるため,分離の選択性を高めることができます。

図1 イオン交換クロマトグラフィーによる分析例

 

図2 イオン排除クロマトグラフィーの原理

 図3 に,イオン排除クロマトグラフィーによる有機酸標準液の分析例を,図4 に医薬品(クレマスチンフマル酸塩)の有機酸カウンターイオン(フマル酸)の分析例を示します。

図3 イオン排除クロマトグラフィーによる分析例

 

図4 クレマスチンフマル酸塩の分析例

(2) 検出の最適化

 有機酸を吸光光度検出器を用いて検出する場合,基本的にはカルボキシル基に基づく短波長域(200 ~ 210nm)での検出となります。しかし,このような短波長域においては,多くの有機化合物が吸収をもつようになるため,複雑なマトリックスの試料を分析する場合,有機酸ピークが夾雑成分に妨害されて検出できないことが起こります。
 島津が提案しますポストカラムpH 緩衝化ー電気伝導度検出は,イオン排除クロマトグラフィーと組み合せて,有機酸を選択性良く,高感度に検出できる独自の方法です。図5 に,この方法の基本原理となるpH と有機酸のイオン化の関係を,図6 には本有機酸分析システムの流路図を示します。

図5 pH と有機酸のイオン化

図6 ポストカラムpH 緩衝化ー電気伝導度検出
有機酸分析システムの流路図

 イオン排除クロマトグラフィーによる有機酸の分離では,酸性の移動相を用いますので,カラム内での分離時,有機酸のイオン化は抑制されています。この非解離状態では電気伝導度検出器による検出ができないため,分離後,カラム溶出液に塩基性pH 緩衝化試薬を添加・混合し,有機酸のイオン化を促進します。これにより,電気伝導度検出器による高感度検出を可能としています。また,基本的に導電性のある夾雑成分しか検出しないため,吸光光度検出器に比べて検出選択性が高くなります。
 図7 に,ビール中の有機酸分析における吸光光度検出とポストカラムpH 緩衝化ー電気伝導度検出との比較を示します。表1 に,ポストカラムpH 緩衝化ー電気伝導度検出法の分析条件を記します。図4 の医薬品中の有機酸を分析する場合とは異なり,醸造製品のように多くの夾雑成分が含まれる試料を分析する場合には,吸光光度検出ではこれらの影響が避けられません(図7 下段)。一方,ポストカラムpH 緩衝化ー電気伝導度検出では, 夾雑成分の内,導電性がない成分(非イオン性成分)は検出されないため,選択性の高い有機酸分析が可能であることがわかります(図7 上段)。

図7 ビール中の有機酸分析例

 以上のように,有機酸分析の分離(イオン排除クロマトグラフィー)と検出(ポストカラムpH 緩衝化ー電気伝導度検出)の最適化を図った有機酸分析システムは,幅広い分野におけるアプリケーションが期待できます。

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