電子天びんを知ろう(その1)・・・計量の不確かさとは?

分析の留意点

LCtalk66号LAB

 島津製作所が天びんの自社生産を開始して 2016 年で 102 年を迎えます。その間における,もっとも革新的な出来事は天びんの電子化,いわゆる電子天びんの登場です。電子天びんは,その操作の容易さや測定の早さなどから急速に普及しました。ところが,その簡便さの裏には落とし穴が隠れており,それに気付かず使って大きな過ちを犯してしまう恐れもあります。電子天びんを正しく使うためにはどうしたらよいか,より正確に安定して計量するにはどんなことに気を付ければよいか…について,2 回にわたってお話したいと思います。今回はその 1 回目として,天びんの計量値に含まれる不確かさの種類を中心にお話しします。

電子天びんの仕組み

 電子天びんがどんな原理で動いているのか,まずはその仕組みを知ることが理解を深める近道です。 電子天びんの仕組みには主に次の2種類があります。

 1.電磁力平衡式

 2.電気抵抗線式(ロードセル式)

これらの原理はまったく異なりますが,いずれにも共通に言えることは,質量を直接量っているのではない,ということです。お皿に下向きに掛かる力を量り,その力を電気信号に置き換えてデジタル表示しているのです。力を量る手段として,電磁力平衡式では磁石とコイルで発生させる電磁力を,電気抵抗線式では力で曲がる構造の金属に取り付けた歪ゲージの抵抗値の変化を利用しています。

 では何故電子天びんは量ってもいない質量を表示できるのでしょう?それは,質量の基準である「分銅」をお皿に載せて,「この力は○○グラムに相当します」ということを電子天びんに教えて換算させているからです。逆に言うと,この換算が正しく行なわれていない電子天びんは正確な質量を表示できません。

不確かさの種類

 電子天びんの計量値には,不確かさが含まれます。この不確かさをできるだけ小さくすれば,より正確に計測することができます。そのためには不確かさのことをよく知ることが大切です。不確かさは,どのようなときにどのような現れ方をするのか,様々な種類があります。その代表的なものをご紹介します。

1. 感度の誤差

 天びんの計量値が正しい値からズレている割合を示します。通常,天びんのひょう量(測定上限荷重値)付近の計測点におけるズレ量で表します。極端な例ですが,ひょう量 200 g の天びんの場合,200 g 分銅をのせて 160 g と表示すれば感度の誤差は 200 g で -40 g となります。そして計測範囲全体にその荷重比例配分されたズレ量が誤差として含まれることを表しています。例えば,100 g の計測点は 200 gの半分ですから,ズレ量も半分の -20 g が誤差として含まれることになります。感度の誤差は,前記した電子天びんの仕組みのところで述べた,力から質量への換算がいかに正確に行われたか,その結果で生まれます。力から質量への換算の方法は,感度調整,キャリブレーションまたはスパン調整といった呼び名で取扱説明書に必ず記載されています。 お客様が感度調整をどのように行うかにより感度の誤差は大きくも小さくもなる のです。

2. 直線性

 天びんの計量値に含まれる誤差が前記の感度の誤差だけなら,誤差は計測点の荷重値に比例します。ですが実際にはそうはなりません。それは,感度の誤差以外にも誤差成分があるからです。ここでいう直線性もその一つです。感度の誤差と直線性の関係は,文章では分かりにくいので図で説明します。極端に誤差の大きい例にしています。ひょう量200 gの天びんで200 g分銅の計測値が160 g(感度の誤差が-40 g)のとき,100 gの計測値には比例配分の-20 gが感度の誤差の成分として含まれることになり,80 gと計測されるはずです。つまり,200 gの計測点と原点を結んだ直線天びんの感度直線の上に各計測点が乗るはずです。天びんの感度直線と誤差ゼロの理想直線との間の部分が,感度の誤差の成分です。しかし,実際には計測点は天びんの感度直線の上に必ずしも乗りません。例えば,100 gの計測値が50 gだったとすると,天びんの感度直線上の点80 gよりさらに誤差が-30 g 上乗せされています。その誤差の上乗せ分が直線性です。

直線性は,天びん自体の状態や元々の性能により発生するもので,お客様がそれを小さくすることはできませんが,感度の誤差の成分なら感度調整を正しく行うことで誤差を小さくできます。天びんの計測値に現れた誤差の中身,つまり 感度の誤差の成分はどれだけ含まれているのか,直線性はどれだけなのか,を見極めることが大切 です。誤差が大きいからといってすぐに故障だとみなすのではなく,感度の誤差が影響していないかを常に気にかけることが電子天びんを正しく使う上で非常に重要になります。

3. 繰り返し性

 同じものを連続して繰り返し計測したときにどれくらい同じ値が計測されるか,精密さを表した成分です。計測値のバラツキ程度を,標準偏差または幅で表します。繰り返し性は,天びん自体の状態や元々の性能にも依りますが, 使い方や環境によっても左右されます

4. 偏置誤差

 天びんの皿上にのせる位置の違いによって現れる誤差です。丸皿の場合,皿中央にのせたときの計測値と,皿中央から皿半径の半分だけ45°方向にずらした位置 4 箇所(左前,右前,右後,左後)にのせたときの計測値との差で表します。偏置誤差は,天びん自体の状態や元々の性能に依り発生するものですが, お皿の中央に荷重がかかるように注意すればかなり抑えられます

図2. 天びんの偏置誤差

不確かさの発生要因

 電子天びんの計量値に含まれる不確かさの種類を中心に述べてきましたが,不確かさがどのようにして生まれるのか,発生要因を知ることで不確かさを少なくする手法が見えてきます。不確かさの発生要因については次回述べますが,一つだけ紹介しておきます。

 これからの季節,乾燥してくると現れる 静電気 の影響です。粉や樹脂,ガラス容器などが帯電して,天びんの表示が不安定になる,繰り返し性が悪化するなどの状況を招きます。分銅だと異常は出ないのに実試料のときだけ異常が出る場合,静電気の影響が疑われます。対策は,部屋を加湿する,除電するなどが有効です。除電器として STABLO-AP という製品がありますので下記Webを参考にしてください。

https://www.an.shimadzu.co.jp/balance/products/p01/stablo_ap.htm

 

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