スキャン測定とは

マススペクトルを測定するために,四重極に印加する高周波電圧や直流電圧を,一方向に連続的に変化させる測定方法です。「走査」とも呼びます。また,変化させる(スキャンする)間隔をイベント時間,変化させる速さをスキャン速度と呼びます。
例) 0.1秒のイベント時間で,質量10 - 610の範囲をスキャンした場合,スキャン速度は6000amu/秒となります。

SIM(Single Ion Monitoring / Selected Ion Monitoring)測定とは

マスフラグメントグラフィーとも言い,GCで分離された流出物中のある特定のm/z値についてのみ検出する方法です。MCと同様,各m/z毎のクロマトグラムを得ます。検出するイオンの選定は,分析前に任意のm/z値を質量分析計に設定して行なわれます。このように,イオン種を限定して検出する方法であるため,検出感度は非常に高く,pg(ピコグラム)オーダーの化合物の測定が可能です。

FASSTとは

スキャンで得られるマススペクトルからは多くの定性情報が得られるうえ,目的成分以外の成分の情報を得ることができます。 一方,SIMは スキャンに比べて感度が優れています。
GCMSsolutionVer.2.5からは,両者の特長を活かした同時測定機能 : FASST法(Fast Automated Scan/SIM Type,スキャンとSIMの高速切換機能)を利用できます。スキャンで感度が不足する成分はSIMで高感度に測定し,SIMでは見逃してしまう未知成分をスキャンで測定が行えます。 下図の例では,スペクトルも採取しながら,スキャンより高感度なSIMのクロマトが得られていることが分かります。

AARTとは

GC/MSの一斉分析で,分析対象成分数が多いときには,化合物テーブルの作成は分析者にとって負担です。またカラムを切断したり,ロットの異なったカラムを使用すると,保持時間が異なってきますので,分析者は化合物テーブルの修正作業をする必要があります。
GCMSsolution の AART(Automatic Adjustment of Retention Time)機能は,分析対象成分の保持指標とn-アルカンの実測値から分析対象成分の保持時間を推測でき,保持時間を修正することができます。 n-アルカンを一度分析するだけで保持時間の推測計算をすることができます。 キャリアガス圧力などの分析条件を変更する必要はありません。

下図は約20秒ごとに,説明図が切り替わります。

カラムの切断等により装置環境が変わった場合,基準物質を測定して同定処理を行い,その同定結果を用いて,測定対象化合物用メソッドファイルの化合物テーブルやMS装置パラメータの設定時間を変更します。

保持時間修正手順(例:カラム切断時)は次のようになります。

カラム切断前 1.基準化合物(n-アルカン等)の測定
     ↓ 2.基準化合物(n-アルカン等)データの同定
     ↓ 3.測定対象化合物データに保持指標値を設定
     ↓ 4.測定対象化合物メソッドに保持指標情報を追加
カラム切断後 5.基準化合物(n-アルカン等)の測定
     ↓ 6.保持指標を使って測定対象化合物メソッドの保持時間自動修正(AART)
     ↓ 7.保持時間修正したメソッドで測定対象化合物の測定

 

すでに化合物テーブルに測定対象化合物の保持指標が入力されている場合は,5.からの操作を行ってください。
ただし,カラムの液相の種類を変更した場合等,保持指標が変更してしまう場合は,再度1.からの手順に従って,保持指標を入力していただく必要があります。