ヨーロッパ薬局方5.0

FTIRノウハウ・実務編

FTIR TALK LETTER vol.6(2006)
本誌のVol.4で赤外分光光度計のバリデーションの方法について紹介しました。 この中で,規格の一つとして,ヨーロッパ薬局方(European Pharmacopoeia)4.0を紹介しました。 赤外分光光度計に関しては,『2.2.24 Absorption Spectrophotometry, Infrared』に記載されており,装置のバリデーション方法が『Control of resolution performance』,『Verification of the wave-number scale』の項に記載されています。

2005年にヨーロッパ薬局方の5.0が発表され,規格が改定されました。 今号では,変更点と島津FTIRシリーズでの対応についてご紹介します。

変更点

今回の変更点は,フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)が対象になっています。 分散型赤外分光光度計については変更がありません。

分解(Control of resolution performance)の変更点

ポリスチレンフィルムの吸光度スペクトルを測定し,得られたスペクトルの2870cm-1付近の極小と2849.5cm-1付近の極大における吸光度の差が0.33ABS以上であること,および,1589cm-1付近の極小と1583cm-1付近の極大における吸光度の差が0.08ABS以上であることを判定します。 原文(一部省略)

For Fourier-transform instruments, … for example by recording the spectrum of a polystyrene film approximately 35 mm in thickness. The differences between the absorbances at the absorption minimum at 2870 cm-1and the absorption maximum at 2849.5 cm-1is greater than 0.33. The differences between the absorbances at the absorption minimum at 1589 cm-1and the absorption maximum at 1583 cm-1is greater than 0.08.

ヨーロッパ薬局方 4.0では透過率で測定していたスペクトルが吸光度で測定することとなり,分解の規格も透過率でなく,吸光度で示されました。

波数精度(Verification of the wave-number scale)の変更点

波数精度はヨーロッパ薬局方 5.0では以下のように設定されました。

3060.0 (±1.0) cm-1
2849.5 (±1.0) cm-1
1942.9 (±1.0) cm-1
1601.2 (±1.0) cm-1
1583.0 (±1.0) cm-1
1154.5 (±1.0) cm-1
1028.3 (±1.0) cm-1

ヨーロッパ薬局方 4.0では±1.5であった3060.0,2849.5,1942.9cm-1の3つの波数の精度が±1.0に変更されました。

ヨーロッパ薬局方5.0に対応したバリデーションプログラム

ヨーロッパ薬局方 5.0に対応したバリデーションプログラムは,IRsolution Ver.1.30に搭載されました。 日本薬局方及びヨーロッパ薬局方4.0対応のバリデーションプログラムと同じく,1.パワースペクトル,2.分解,3.波数精度,4.波数再現性,5.吸光度再現性の5項目で装置の性能を検査します。

1.パワースペクトル
ヨーロッパ薬局方5.0には含まれていない検査ですが,FTIRの最も基本的な性能の評価を行うために検査します。 日本薬局方及びヨーロッパ薬局方4.0対応のバリデーションプログラムと同じです。 指定された波数におけるパワースペクトルの大きさが規格値より大きいかどうかを判定し,指定されたすべての波数で規格値を上回っていれば合格です。

2.分解
先に述べたとおりです。 それぞれの吸光度値が規格以上であれば合格です。

3.波数精度
先に述べたとおりです。 それぞれの波数の測定値との誤差が規格以内であれば合格です。

4.波数再現性
ヨーロッパ薬局方5.0には含まれていない検査ですが,日本薬局方とのリエゾン(統一化)のために検査項目としています。 日本薬局方及びヨーロッパ薬局方4.0対応のバリデーションプログラムと同じです。
ポリスチレンフィルムを2回測定し,指定された3点においてピーク波数を比較します。 2回の測定結果の差が許容範囲内にあるかどうかで判定し,ピーク波数の差が3点すべてにおいて許容範囲に入っていれば合格です。

5.吸光度再現性
ヨーロッパ薬局方5.0には含まれていない検査ですが,日本薬局方とのリエゾンのために検査項目としています。 検査方法は,日本薬局方及びヨーロッパ薬局方4.0対応のバリデーションプログラムと同じです。 日本薬局方での許容範囲は透過率で0.5%となっていますが,ヨーロッパ薬局方5.0用のバリデーションプログラムでは,検査する波数での透過率が±0.5%変化した値を吸光度に変換したものを許容範囲としています。 たとえば,2849.5cm-1のピークは約1ABS(透過率約10%)ありますが,その透過率が±0.5%変動した場合の吸光度の変動(±0.03ABS)を許容範囲としています。 ポリスチレンフィルムを2回測定し,指定された3点において吸光度を比較します。 2回の測定結果の差が許容範囲内にあるかどうかで判定し,吸光度の差が3点すべてにおいて許容範囲に入っていれば合格です。

島津FTIRシリーズでのヨーロッパ薬局方5.0への対応

ヨーロッパ薬局方 5.0にはIRsolution Ver.1.30とそれに含まれているバリデーションソフトウェアで対応します。 また,対象となる装置は,IRPrestige-21とFTIR-8400Sです(2006年2月1日現在)。 既に,IRPrestige-21またはFTIR-8400Sをお使いでヨーロッパ薬局方 5.0への対応が必要な場合は,弊社担当者にご相談の上,IRsolution Ver.1.30へバージョンアップしてください。

日本薬局方とヨーロッパ薬局方5.0のバリデーション規格の統一化

ヨーロッパ薬局方はその名称のとおり,ヨーロッパ共同体(EU)内での規格です。 EU内に製品を輸出する場合,ヨーロッパ薬局方5.0での装置バリデーションが求められることがあります。 一方,日本国内では日本薬局方に準拠したバリデーション方法が一般的です。 日本薬局方は定期的に改定され,各国の薬局方とのリエゾンがはかられています。 日本薬局方の赤外吸収スペクトル測定法は,14改正第1追補で,ヨーロッパ薬局方4.0とのリエゾンが行われました。 ヨーロッパ薬局方5.0で,再び,日本薬局方との差が生じましたが,近い将来,再統一化が行われるのかもしれません。 (但し2006年2月1日現在,日本薬局方 赤外吸収スペクトル測定法の改定の情報はありません )


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