FTIRのバリデーション(1):各国の規制におけるハードウェアバリデーション手順

FTIRノウハウ・実務編

FTIR TALK LETTER vol.4(2005)

ハードウェアのバリデーション

IRPrestige-21
IRPrestige-21

今回は,FTIRのバリデーションの方法についてお話します。
英語でvalidateには「(法的に)有効にする」といった意味があります。デパートなどで買い物した後,レジで駐車券に「無料」のスタンプを押してもらう(アメリカではValidと押されます)のも英語ではvalidateと言います。装置に必要な検査をして,その装置が正しく動作していることを確認して,「使えますよ」と「有効にする」ということからvalidateは「正当性を立証する,〜を認証する」という意味で使われ,名詞のvalidationも「検証,妥当性確認,確証,合法化」という意味で使われるようになりました。
それでは,FTIRのハードウェアバリデーションとソフトウェアバリデーションについてお話します。

FTIRのハードウェアのバリデーションとは,FTIRが正しく動作していることを検査・確認する方法といえます。
分散型IRでは,ポリスチレンフィルムのスペクトルを測定して,波数の校正を兼ねてピーク波数を読み取って点検していました。FTIRではパワースペクトルに装置の状態が現れることが多いので,パワースペクトルの形状や大きさを確認する方法が簡単な方法として使われます。
当社のFTIR装置でも日常点検として,パワースペクトルの形状と大きさの確認を採用しています。

より細かくFTIRを検査する方法として,いくつかの公的機関が規格を出しています。工業系の規格として日本工業規格(JIS),American Society for Testing and Materials(ASTM,アメリカ版のJIS)などに,薬局方では日本薬局方,ヨーロッパ薬局方(EP)に規定があります。
それぞれがどのような規格を定めているかを見てみましょう。

日本工業会規格(JIS)

ISでは赤外分光分析方法通則(JIS K0117)に規定があります。「6.3 分光光度計の補正及び検査方法」に検査の方法が記載されています。波数(精度)・透過0%・透過100%・直線性・分解能・繰り返し性について記述されています。JISに記載されている方法を簡単に紹介します。ただし,JISには具体的な手順や規格値については記載されていません。

波数(精度)・・・ピーク波数位置がよく知られた物質(例えば,大気中の二酸化炭素,水蒸気,ポリスチレン,アンモニア,インデンなど)のピーク波数位置のと装置の指示値との誤差から求める。

透過0%・・・光を透過しない試料を測定して透過率0%,つまり,迷光や試料の二次放射スペクトルによる誤差を検査する。

透過100%・・・試料を入れないで透過率を測定し,透過率100%を検査する。

直線性・・・吸光度と濃度との検量線を作成し,その直線性を調べる。

分解能・・・アンモニア,大気中の二酸化炭素などを用い,吸収ピークの分離度合い(分解能)を検査する。

繰り返し測定精度・・・安定な試料を,短い時間内に2回以上測定し,波数や透過率の測定値のばらつきが規定の精度内にあることを確認する。

ASTM (American Society for Testing and Materials)

ASTMでは,E1421-99 Standard Practice for Describing and Measuring Performance of Fourier Transform Mid-Infrared (FT-MIR) Spectrometers Level Zero and Level One Tests に記載されています。ASTMではJISや後述する薬局方とは異なり,パワースペクトルやポリスチレンフィルムのスペクトルを測定し,短期間や長期間でのFTIRの不調や大きな変化がないかを検査します。ASTM E1421-99 Level Zeroに記載されている方法を簡単に紹介します。

Energy Spectrum Test ‐ パワースペクトルの変化・・・レファレンスと検査時のパワースペクトルを比較し,長期間での変化を検査します。

One Hundred Percent Line Test ‐ 短時間での100%ライン変化・・・検査時に連続して測定したパワースペクトルで100%Tラインスペクトルを計算し,短時間での変化を検査します。

Polystyrene Test ‐ ポリスチレン測定データのレファレンスとの比較・・・レファレンスと検査時のポリスチレンフィルムのスペクトルの差を求めて評価します。

FTIR-8400S/IRPrestige-21では,ASTM E1421-99の Level Zero テストに準拠したバリデーションプログラムを標準で装備しています。

日本薬局方とヨーロッパ薬局方

第十四改正日本薬局方 第一追補 の一般試験法 赤外吸収スペクトル法の中の装置及び調整法 の項に記載されています。分解,波数精度,波数再現性,透過率再現性という4つの検査項目に対して,手順と規格値が定められています。また,第十四改正日本薬局方第一追補からヨーロッパ薬局方(EP2000)との規格の共通化(標準化)が行なわれました。
当社では,FTIRのハードウェアのバリデーションの方法として,工業目的で手順がはっきり定められていない JIS・ASTMによる手法ではなく,製薬業界向けで手順や規格がはっきり定められている日本薬局方に基づいたバリデーション方法を採用しています。

アメリカの薬局方(USP)にもFTIRの記述があるのですが,

Detailed instructions for operating spectrophotometers are supplied by manufacturers. To achieve significant and valid results, the operator of a spectrophotometer should be aware of its limitation and of potential sources of error and variation. The instruction manual should be followed closely on such matters as care, cleaning, and calibration of the instrument, and ......
すなわち「具体的手法は,製造メーカーの取扱説明書等に従いなさい」と書かれています。




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