FDA 21 CFR Part 11 と FTIR の対応

FTIRノウハウ・実務編

FTIR TALK LETTER vol.3(2004)
今回は,ここ数年製薬業界で話題になっている FDA 21 CFR Part 11 の概要と FTIR での対応についてお話します。
※ このページの内容は2004年に当社より発行されたFTIR Talkに掲載されたものです。記載している全ての内容が2004年当時のものです。

FDA 21 CFR Part 11 とは

Food and Drug Administration (FDA:アメリカ食品医薬品局)が,1990 年代に各種申請書類のペーパーレス化をめざして,従来の紙ベースでの記録を電子媒体に置き換える場合の要求事項を規定したもので,1997 年に発効しています。 紙に書かれたものよりも,電子化された文書は改ざんされやすいので,電子記録・電子署名が信頼に足るものであり紙による記録や署名と同等であることを認めるための基準を定めています。

FDA 21 CFR Part 11 が適用される企業は以下のとおりです。

  • アメリカでビジネスを行う製薬会社
  • これらの製薬会社への製品及び原料を供給する会社
  • これらの会社から分析委託を受けるコントラクトラボ

また,FDA 21 CFR Part 11 が適用される記録およびシステムは以下のとおりです。

  • デ-タの作成,修正,保存,復元および転送で PC が使われる場合
  • データが電子媒体に保存される場合
    例えば,分析機器,天秤,品質管理システム( LIMS ),電子文書管理システム,製造管理システム,装置設備制御管理システム,製造環境監視システム,入退室管理システムなど

FDA 21 CFR Part 11
FDA 21 CFR Part 11

FDA 21 CFR Part 11とその要求事項

FDA 21 CFR Part 11 で要求されている事項は,各条項に記載されています。

Subpart A 一般規定
11.1 適用範囲
11.2 実施
11.3 定義
Subpart B 電子記録
11.10 クローズドシステムの管理
11.30 オ-プンシステムの管理
11.50 署名の明示
11.70 署名と記録のリンク
Subpart C 電子署名
11.100 一般的な要求事項
11.200 電子署名の構成要素と管理
11.300 IDコードとパスワードの管理

しかし,あまり具体的なことはかかれていませんので,GAMP ガイドなどを参考にして確認します。 各条項についての詳しい解説は,別の資料に譲ることにして,ここでは FDA 21 CFR Part 11 で要求される項目を簡単にまとめてみますと,

  1. アクセスコントロール
  2. データの完全性
  3. データセキュリティ
  4. オーディットトレイル
  5. 電子署名
  6. バリデーション

が要求されていることになります。

島津製作所の FDA 21 CFR Part 11 に対する対応

島津製作所では,FDA 21 CFR Part 11 に対応するために,以下のような対応を提案しています。

  1. セキュリティ機能の高い Windows 2000 Professional や XP Professional を使用する。
  2. 装置制御や測定・データ処理を行なうクライアントソフトウェア( 例えば IRsolution )のセキュリティ( アクセスコントロールやログ機能など )を高める。
  3. データのデータベース管理や電子署名機能を持ったデータ管理ソフトウェア CLASS-Agent と組み合せる。
  4. 測定したり,処理したデータは CLASS-Agent データベースに全て保管し,管理する。

その他に,

  • ソフトウェア・ハードウェアのバリデーション
  • 据付時適格性検証( Installation Qualification )/稼働性能適格性検証( Operational Qualification )の支援・対応
  • システム構築の支援

などを行っています。
それでは,FTIR を例に FDA 21 CFR Part 11 への対応方法を見てみましょう。

島津 FTIR システムと FDA 21 CFR Part 11 への対応

島津 FTIR システムで FDA 21 CFR Part 11 に対応するためには,IRsolution ソフトウェアと IRsolution Agent ソフトウェアを組み合せます。
IRsolution,IRsolution Agent それぞれに高度なセキュリティコントロール機能があり,測定・データ処理したデータはセキュリティ機能の高いデータベースに保管・管理されます。

(1)アクセスコントロール

FDA 21 CFR Part 11 では,アクセスコントロールに対して,以下の要求がされています。

  • 認定されたユーザーのみがアクセス可能
  • ユーザー毎に使用可能な機能の制限が必要
  • パスワードは定期的に変更できること
  • 不正アクセスを防止する機能

ログイン画面
ログイン画面

IRsolution/IRsolution Agent では起動時にユーザー名とパスワードによるソフトウェアのセキュリティ機能を持っています。
ユーザーは 3 段階( Administrator,Developer,Operator,その他 )以上にグループ分けされていて,それぞれのグループで使用できる機能が制限されます。 また,パスワードの有効期限設定,アカウントロック,自動ログアウトなどの機能を用いて不正なアクセスを防止しています。

権限グループ
権限グループ

 

パスワードの管理
パスワードの管理

(2)データの完全性

FDA 21 CFR Part 11 では,データの完全性に対して,以下の要求がされています。

  • 生データは,測定やデータ処理に使われたメタデータとともに記録されなければならない。

IRsolution ではデータファイル(コンテナファイル)に測定条件,日時,測定者,装置名などだけでなく,本当の意味での「生データ」であるインターフェログラムも一緒に記録,保存します。 また,データ処理をしても全てのデータがコンテナファイルに一緒に保存されるため,データ処理後のデータから生データや処理途中データを再現可能です。
さらに,測定されたり,処理されたデータは全てセキュリティ機能の高い CLASS-Agent データベースに自動的に保存されますので,データの改ざんや破壊からデータを確実に護ることができます。

ツリー構造のコンテナファイル
ツリー構造のコンテナファイル

(3)データセキュリティ
FDA 21 CFR Part 11 システムでは,採取された生データが,削除,上書き,変更,事故などから確実に保護される必要があります。
IRsolution では測定されたすべての生データが自動的にハードディスクに保存されます。 データの削除,上書きは禁止されていますので,データ処理,事故などによる生データ消失を防止します。

(4)オーディットトレイル

FDA 21 CFR Part 11 では,オーディットトレイルに対して,以下の要求がされています。

  • オペレータのログイン,操作内容など装置の操作ログが記録されていなければならない

Rsolution/IRsolution Agent では,操作( システム )ログにユーザー名,測定・データ処理などの操作の履歴が記録,表示されます。 データには測定された日時や行われたデータ処理がデータログとして記録されます。 これらのログは保護されているため改ざんできません。

IRsolution の操作ログ
IRsolution の操作ログ

(5)電子署名

FDA 21 CFR Part 11 では,電子署名に対して,以下の要求がされています。

  • 電子署名は個人特有であり,他の人に再利用,再割り当てされてはいけない
  • 少なくとも 2 つ以上の構成要素(ID とパスワードなど )が必要
  • 署名された電子記録は,「署名者のフルネーム」「署名日時」「署名理由」の署名情報を含まなければならない
  • 電子記録に対する電子署名はそれぞれの記録にリンク
  • 署名が電子記録の偽装に使われないような仕組み

IRsolution Agent では電子署名が行なえます。 電子署名を行なう場合は,ユーザー名とパスワードを入力しなければなりません。

(6)バリデーション

FDA 21 CFR Part 11 では,バリデーションに対して,以下の要求がされています。

  • ハードウェア,ソフトウェアなど実験結果に影響を及ぼす要因について,バリデーションが必要

改ざんチェックの結果
改ざんチェックの結果

Rsolution/IRsolution Agent は改ざんチェックプログラムにより,ソフトウェアが正しくインストールされているかどうか確認することができます。 ハードウェア( IRPrstige-21・FTIR-8400S )のバリデーションは,日本薬局方/ヨーロッパ薬局方/ASTM に対応したバリデーションプログラムを用いてバリデーションを行ないます。 また,据え付け時や定期点検時には,据付時適格性検証( Installation Qualification )/稼働性能適格性検証( Operational Qualification )の支援を行なうことができます。

バリデーションレポートの例
バリデーションレポートの例

IRsolution で FDA 21 CFR Part 11 に対応する方法

実際に島津 FTIR システムで FDA 21 CFR Part 11 に対応するためには,以下の部品が必要です。

  • IRsolution Ver.1.10以降
  • IRsolution Agent Ver.2.11以降( Agent Manager,ユーザー認証ツール,MSDE 込み )

ネットワークシステムとスタンドアロンシステム

FTIR 装置が 1 台しかない場合は,FTIR 用のコンピュータに Agent データベースを作成し,FTIR で測定したり,処理したデータをデータベースに保管・管理する『スタンドアロンシステム』が便利です。 このとき,データベースとしては MSDE( Microsoft Data Engine )を使用します。
一方,島津製作所製の分析装置,例えば,紫外可視分光光度計や液体クロマトグラフなどをお持ちの場合,それらの分析機器用のコンピュータをネットワークでつないだ『ネットワークシステム』を構築することができます。 この場合,データベースをサーバーに作成し,全てのデータをひとつのデータベースで一括管理をすることができます。 また,ユーザーの管理*)をサーバーで行なうことにより,管理が非常に簡単になります。 この場合,データベースとしては,Microsoft SQL Server か Oracle を使用します。 現在,CLASS-Agent システムに対応しているソフトウェアは以下のように数多くあります。

紫外可視分光光度計,原子吸光光度計,LC,GC,LC-MS,GC-MS,天秤,粒度分布計,熱分析装置,TOC,溶出試験機( 富山産業 ),カールフィッシャー水分計( 京都電子 ),滴定装置( 京都電子 )など

どちらのシステムがよいかは,お使いの分析機器の種類や数などで,選んでください。

*) IRsolution のユーザー管理は,CLASS-Agent や他のソフトウェアと共通にはできません。 将来対応予定です。

今後の広がり

FDA 21 CFR Part 11 は,各種申請書類のペーパーレス化とデータやシステムの信頼性強化のために制定されたものです。 アメリカ国内では,Government Paper Elimination Act ( GPEA )として全政府機関の文書を電子化対応するというプロジェクトを進めています。 Environmental Protection Agency (EPA; アメリカ環境保護局 )や U.S. Patent and Trademark Office( アメリカ特許庁 )などで同様の規定への取り組みがなされています。 日本の厚生労働省でも同様の規定を実施する準備中です。 実際に,FDA 21 CFR Part 11 対応システムを構築するためには,装置やソフトウェアに対する要求仕様の策定,システム構築・据え付け前の事前打ち合わせ,据え付け,据付時適格性検証・稼働性能適格性検証,トレーニング,機器管理方法・SOP の確立など,いろいろなことをしなければなりません。 島津製作所では,より確実な FDA 21 CFR Part 11 対応のために,お客様のサポートをしていきます。


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