1. 試料採取

環境省告示第61号によって規定されている内容です

採取方法

  • 直接測定,または希釈測定
    直接測定: 捕集バッグによる測定方法
    希釈測定: 捕集バッグからシリンジでサンプルの一部を採取し, 高純度空気の入った捕集バッグに注入して行う測定方法

試料採取装置

  • 試料採取管,フィルター,導管(内径4~25mm程度),ドレンポット(水分除去用冷却除湿器。必要に応じて使用),吸引用気密容器,流量調節バルブ(0.5~5L/minの流量制御),吸引ポンプ,流量計(0.5~5L/min)
  • 捕集バッグ(20L以上。ふっ素樹脂フィルム製若しくはポリエステル樹脂フィルム製。再使用不可)
試料採取装置の構成

試料採取装置の構成

その他

 

  • 試料採取は,一工程でVOCの排出が安定した時期に行います。
    ただし,貯蔵タンクの場合は,VOCの注入時期に行います。
    排出ガス処理装置の運転開始,切換時の一時的な高濃度時は除外します。
  • 複数の排出口が有る場合は,最高濃度の排出口で測定を行います。
    場合によっては,複数の排出口で測定を行い加重平均をとる必要があります。
  • 排出口の先で燃やしてある程度無害化している「フレアスタック」では測定が不要となります。

分析計

環境省告示第61号によって規定されている内容です
試料採取

測定法の種類

 

  • 触媒酸化-非分散形赤外線分析計
    (NDIR,燃焼過程を経たガスを含む場合除く)
    または,水素炎イオン化形分析計 (FID)

装置に要求される仕様

 

  • 測定範囲:10~5000volppmC
    規制値から500/1000/2000volppmCのレンジは必要
  • 作動性能:基準値を規定
    NDIR6種のガスについて感度90%,無機体炭素の影響(二酸化炭素の影響)等を規定
    FID3種のガスについての感度,酸素干渉(酸素濃度が低い場合の影響)等を規定

試薬(標準ガス)

 

  • 校正ガス スパンガス,ゼロガス
  • 燃料ガス 水素,または水素/ヘリウム(不純物VOC 1volppmC以下)
  • 助燃ガス 高純度空気,または通常空気を石英ガラス管等で加熱燃焼して炭化水素を除去したもの(不純物VOC 0.5volppmC以下)

FID (水素炎イオン化検出器) (Flame Ionization Detector)

FID

有機物が水素炎中で燃焼し,そのうち数ppmがイオン化され,コレクタに捕集されて,電流が流れる。

FID分析計の作動性能の基準値

項目 作動性能の基準値
ゼロドリフト 最大目盛値の±1%以内/8時間
スパンドリフト 最大目盛値の±1%以内/8時間
繰返し性 最大目盛値の±1%以内
指示誤差 最大目盛値の±1%以内
90%応答時間 60秒以下
感度 トルエンに対して 90~105%,酢酸エチルに対して 70%以上, トリクロロエチレンに対して 95~110%
酸素干渉 できるだけ少ないこと

GC-FIDは法令に基づく公式の測定法としては認められていません。
GC-FIDは各成分毎に分離して各成分の濃度を測定するものです。 今回のVOC規制は,VOCを包括的に規制するものなので,分離せずに測定する必要があります。

NDIR (触媒酸化-非分散型赤外線分析計) (Non Dispersive Infra Red)

 

揮発性有機物を触媒を使用した燃焼炉で燃焼させ, 発生したCO2濃度を赤外線式ガス分析計NDIR(Non Dispersive Infra Red) で測定して有機物の濃度をvolppmCとして連続的に測定できます。

NDIR

比較ガス流通方式
触媒を通さないガスと触媒でVOCを酸化した試料ガスを比較することで, バックグラウンドCO2を差し引いたVOC濃度を測定することが可能です。

NDIR分析計の作動性能の基準値

項目 作動性能の基準値
ゼロドリフト 最大目盛値の±2%以内/24時間
スパンドリフト 最大目盛値の±2%以内/24時間
繰返し性 最大目盛値の±2%以内
指示誤差 最大目盛値の±2%以内
90%応答時間 120秒以下
感度 トルエン,酢酸エチル,メチルエチルケトン,2-プロパノール, ジクロロメタン及びクロロベンゼンに対して 90%以上
無機体炭素の影響 最大目盛値の±6%以内

FIDとNDIRの特徴比較

  FID NDIR 備考
規制への適合性 どちらの方式でも正式データとして提出可能
相対感度 NDIRが原理的に有利。プロパンに対する相対感度90%以上。 FIDの場合,含酸素化合物などで感度が低いもの,ハロゲン化合物で感度が高いものがある。
適応できる施設 NDIRは燃焼処理施設では使用不可。
触媒の劣化 NDIRは触媒毒の影響を受ける場合がある。