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最適化された前処理手法およびLC-MS/MS分析メソッドを用いることで、AOACとEPAがターゲットとする化合物を網羅
した43種類のPFASについて0.004 µg/kg、PFOAとPFOSについては0.0004 µg/kgから精度よく定量可能です。
オンライン固相抽出装置を用いることで前処理の大幅な省力化と時間短縮が実現可能です。
オンライン固相抽出装置とトリプル四重極
質量分析計を用いた水中のPFAS分析
田中 真穂、前島 希
高速液体クロマトグラフ質量分析計
はじめに
ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキ
ル化合物 (Per- and Polyfluoroalkyl Substances, PFAS) は、
4,000以上の有機フッ素化合物の総称です。代表的な化合物
としてはペルフルオロオクタンスルホン酸 (PFOS) やペルフ
ルオロオクタン酸 (PFOA) が挙げられます。これらの化合物
は優れた撥水性や撥油性、耐熱性、耐薬品性を持ち、化学
的に非常に安定です。これらの特徴から防火剤や食品包装
材、非粘着性コーティング剤など幅広い用途に使用されて
います。PFASは構造的に非常に安定であるため自然界で分
解されにくく、環境中における残留性があります。
PFASに汚染された水が供給されている地域では、PFASを
含む水道水や飲料水を摂取することによる健康被害が懸念
されています。各国において規制が施行されていますが、
2024 年 4 月 に EPA は PFOA と PFOS に 関 し て 世 界 一 低 い
Maximum Contaminant Levels (MCLs) を発表しました。
本稿では、このEPAのMCLsレベルの検査を目的として、
水道水と飲料水中に含まれるPFASを固相 (SPE)カートリッジ
のコンディショニング、試料負荷、溶出、LC注入を自動化
したオンライン固相抽出装置で精製処理し、LC-MS/MSで分
析した例を紹介します。AOAC SMPR 2023.003
1)
がターゲッ
トとする30化合物とEPA method 1633
2)
がターゲットとする
40化合物を網羅した43種類のPFASについて定量を行いまし
た。オンライン固相抽出装置を用いた精製方法を検討し、
添加回収試験において妥当性を検証しました。SPEによる精
製条件やLC-MS/MS分析条件を最適化することにより、すべ
ての化合物で良好な回収率を得ました。また、手作業にか
かる時間や作業の手間、精製処理に使用する溶媒量も大幅
に削減することが可能となりました。
あ
サンプルと前処理
標準物質および内部標準物質 (ISTD) は 、 Wellington
Laboratoriesから購入した L-PFUdS、L-PFTrDS、L-PFDoS、
10:2 FTSと混合液であるPFAC-MXG、PFAC-MXI、PFAC-MXJ、
PFAC30PARおよびMPFAC-HIF-ESを使用しました。サンプル
にはラボから採取した水道水と市販の飲料水を使用しまし
た。試料の調製方法を図1に示します。サンプルの水 600
µLに標準物質およびISTDを含めたメタノール溶液をバイア
ル中に添加で2倍希釈し、調製液としました。
自動固相抽出にはオンラインSPE-LCインターフェイス
SPL-W100 (アイスティサイエンス社) を用いました。フロー
を図2に示します。28%アンモニア水/メタノール/超純水
(1:90:10, v/v/v) 250 µLとぎ酸/超純水 (1:1000, v/v) 250 µLで
オンラインSPE-LC専用固相カートリッジ「Flash-SPE」をコ
ンディショニング後、調製液 1000 µL を負荷しました。ぎ
酸/メタノール/水 (1:400:600, v/v/v) 100 µLで洗浄後、28%ア
ンモニア水/メタノール/水 (1:90:10, v/v/v) 60 µLで溶出しま
した。溶出液はぎ酸/超純水 (1:1000, v/v) 120 µLで希釈しな
がら全量注入し、LC-MS/MS分析しました。
表1 LC-MS/MS分析条件
[HPLC conditions] Nexera X3
Column : Shim-pack Scepter C18-120
(100 mm x 2.1 mm I.D., 3 µm)
*1
Delay column : Shim-pack Scepter C18-120
(50 mm x 2.1 mm I.D., 3 µm)
*2
Mobile phase A : 2 mmol/L Ammonium Acetate in
Acetonitrile/Water (5:95, v/v)
Mobile phase B : Acetonitrile
Flow rate : 0.3 mL/min (0.6 mL/min only between 10.01-12
min)
Gradient program : B conc. 20% (0 min) → 100% (10-12 min) → 20%
(12.01-15 min)
The flow was introduced into the mass
spectrometer between 1 to 9.6 min using a flow
switching valve.
Column temp. : 40℃
[MS conditions] LCMS-8060RX
Ionization : ESI, Negative mode
Nebulizing gas : 2 L/min
Heating gas : 10 L/min
Drying gas : 10 L/min
DL temp. : 200℃
Interface temp. : 250℃
Heat block temp. : 400℃
Probe position : +2 mm
分析条件
分析はトリプル四重極質量分析計LCMS
TM
-8060RXと超高
速液体クロマトグラフNexera
TM
X3 UHPLCシステムを組み
合わせて行いました。また、カラム には良好な分離とピー
ク形状が得られるShim-pack Scepter
TM
を使用しました。分
析条件を表1に示します。溶媒やガラス器具などの分析シス
テム由来のPFAS混入を抑えるため、ディレイカラムを使用
しました。本分析ではSUS配管 (300 mm x 0.3 mm I.D., P/N:
228-69955-41) を用いてミキサとオートサンプラの間にディ
レイカラムを設置しました。ディレイカラムにより移動相
由来のPFASの溶出時間が遅くなるため、バイアル中のPFAS
と分離することができ、サンプル中のPFAS濃度を正確に算
出することができます。また、バイアルはPFASが検出され
ないことを確認したPPバイアル (島津ジーエルシー、P/N:
GLC-IVS-100) を使用しました。表2に示す組み合わせで得ら
れたピーク面積値の補正を行いました。
Sample 600 µL
Prepared sample solution
Methanol solution containing the surrogate 600 µL
図1 試料調製
*1 P/N : 227-31014-05
*2 P/N : 227-31014-03
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2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0 9.5 10.0 10.5 11.0 min
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
(x100,000)
2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0 9.5 10.0 10.5 11.0 min
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
(x100,000)
2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0 9.5 10.0 10.5 11.0 min
0.0
2.5
5.0
(x10,000)
2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0 9.5 10.0 10.5 11.0 min
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
(x10,000)
濃度比
0 5 10
面積比
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
PFOS
y = 0.06214310x + 0.005599816
R2 = 0.9972185 R = 0.9986083
検量線の種類: デフォルト (直線 )
重み付け: デフォルト (1/A^2)
原点通過 デフォルト (通さない)
濃度比
0 5 10
面積比
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
PFHxS
y = 0.06806081x + 0.003666632
R2 = 0.9979228 R = 0.9989609
検量線の種類: デフォルト (直線 )
重み付け: デフォルト (1/A^2)
原点通過 デフォルト (通さない)
濃度比
0 5 10
面積比
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
PFNA
y = 0.2521430x + 0.02645770
R2 = 0.9994864 R = 0.9997432
検量線の種類: デフォルト (直線 )
重み付け: デフォルト (1/A^2)
原点通過 デフォルト (通さない)
濃度比
0 5 10
面積比
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
PFOA
y = 0.08761107x + 0.01124152
R2 = 0.9992342 R = 0.9996170
検量線の種類: デフォルト (直線 )
重み付け: デフォルト (1/A^2)
原点通過 デフォルト (通さない)
250 µL of 28% Ammonia solution/Methanol/
Ultrapure water = 1:90:10 (v/v/v)
250 µL of Formic acid/Water = 1:1000 (v/v)
Conditioning
Load
1000 µL of Prepared sample solution
100 µL of Formic acid/Methanol/Water
= 1:400:600 (v/v/v)
Elute
60 µL of 28% Ammonia solution/Methanol/
Water = 1:90:10 (v/v/v)
LC-MS analysis
While mixing the eluate with 120 µL of
formic acid/ultrapure water = 1:1000 (v/v)
Inject the entire volume
SPE cartridge
(3 mg)
Flash-SPE (WAXs, AiSTI SCIENCE)
図2 オンライン固相抽出装置による精製操作
PFOS PFOA
PFNA PFHxS
図4 0.0004から0.01 µg/kg (添加濃度) における検量線
図3 検量線用サンプルのマスクロマトグラム
マスクロマトグラムと検量線
43化合物のPFASを一斉分析したマスクロマトグラムを図
3に示します。すべての化合物が11分以内に溶出しており、
良好な分離を示しています。図には示しませんが、PFOSの
MRMトランジションへの影響が懸念されるタウロデオキシ
コール酸 (TDCA) やタウロケノデオキシコール酸 (TCDCA)、
タウロウルソデオキシコール酸 (TUDCA) は、PFOSと十分に
分離していることを確認しています。
代表的な化合物 (PFOS, PFOA, PFNA, PFHxS) の検量線を図
4に示します。標準品および内部標準を超純水に添加したも
のを検量線用サンプルとして分析しています。代表的な化
合物で添加濃度0.0004から0.01 µg/kg、PFBA、NMeFOSE、
NEtFOSE、3:3 FTCA、NFDHAで0.004から0.1 µg/kgの範囲で、
5:3 FTCAと7:3FTCAで0.002から0.05 µg/kgの範囲で検量線を
作成しており、決定係数R
2
がPFBAとPFPeAでは0.98、それ
以外の化合物では0.99以上と良好な直線性となっています。
Spiked conc. 0.0004 µg/kg
Spiked conc. 0.004 µg/kg
Spiked conc. 0.01 µg/kg
Wash
Spiked conc. 0.001 µg/kg
Compound ISTD
PFBA
13
C4-PFBA
PFPeA
13
C5-PFPeA
PFHxA
13
C5-PFHxA
PFHpA
13
C4-PFHpA
PFOA
13
C8-PFOA
PFNA
13
C9-PFNA
PFDA
13
C6-PFDA
PFUnA
13
C7-PFUnA
PFDOA
13
C2-PFDOA
PFTrDA
13
C8-PFOSA
PFTeDA
13
C2-PFTeDA
PFBS
13
C3-PFBS
PFPeS
13
C4-PFHpA
PFHxS
13
C3-PFHxS
PFHpS
13
C6-PFDA
PFOS
13
C8-PFOS
PFNS
13
C7-PFUnA
PFDS
13
C2-PFDoA
PFUnDS
13
C8-PFOSA
PFDOS
13
C2-PFTeDA
PFTrDS
13
C2-PFTeDA
PFOSA
13
C8-PFOSA
Compound ISTD
9Cl-PF3ONS
13
C8-PFOS
11Cl-PF3OUdS
13
C3-HFPO-DA
HFPO-DA
13
C3-HFPO-DA
DONA
13
C3-HFPO-DA
4:2 FTS
13
C2-4:2 FTS
6:2 FTS
13
C2-6:2 FTS
8:2 FTS
13
C2-8:2 FTS
10:2 FTS
13
C2-PFDOA
NMeFOSA D3-NMeFOSA
NEtFOSA D5-NEtFOSA
NMeFOSAA D3-NMeFOSAA
NEtFOSAA D5-NEtFOSAA
NMeFOSE
1
D7-NMeFOSE
NEtFOSE D9-NEtFOSE
3:3 FTCA
13
C5-PFPeA
5:3 FTCA
13
C3-PFBS
7:3 FTCA
13
C5-PFHxA
PFEESA
13
C5-PFHxA
PEMPA
13
C5-PFPeA
PEMBA
13
C5-PFPeA
NFDHA
13
C5-PFHxA
表2 補正に使用した内部標準物質
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© Shimadzu Corporation, 2025
分析計測事業部
https://www.an.shimadzu.co.jp/
本資料は発行時の情報に基づいて作成されており、予告なく改訂することがあります。
本文中に記載されている会社名、製品名、サービスマークおよびロゴは、各社の商標および
登録商標です。
本文中では「TM」、「 」を明記していない場合があります。
0
5
10
15
20
25
0
50
100
150
200
%RSD (%)
Recovery rate (%)
0
5
10
15
20
25
0
50
100
150
200
%RSD (%)
Recovery rate (%)
0
5
10
15
20
25
0
50
100
150
200
%RSD (%)
Recovery rate (%)
Tap Water Tap Water Drink Water Drink Water
初版発行:2025年 9月
A改訂版発行:2025年10月 01-01069A-JP
LCMS、Nexera、およびShim-pack Scepterは、株式会社島津製作所またはその関係会社の日本およびその他の国における商標です。
添加回収試験
0.0004、0.001、0.004、0.01 µg/kgで添加回収試験を行い、
回収率と繰り返し再現性を検証しました。結果を図5に示し
ます。n=3で前処理を行い、内部標準法で作成した検量線
で定量しました。EPAの要求基準では、PFOS、PFOAのLOQ
が0.0004 µg/kg、PFNA、PFHxS、HEPO-DAのLOQが0.001
µg/kgとなるよう指定されています(表3)。今回の検証では、
PFOS、PFOAの2成分において添加濃度0.0004 µg/kg で水道
水の回収率は93.1%,、85.0%で再現性は18.8%以下であり、
飲料水の回収率は95.1%、90.0%で再現性は17.7%以下でし
た。PFNA、PFHxS、HEPO-DAの3成分において添加濃度
0.001 µg/kgで水道水の回収率は92.8-110.4%以内、再現性は
15.6%以下であり、飲料水の回収率は93.3-111.3%以内、再
現性は5.5%でした。他の全化合物において添加濃度0.004
µg/kg で 水 道 水 の 回 収 率 は 92.3-131.9% 以 内 で 再 現 性 は
14.4%以下、飲料水の回収率は91.8-138.1%以内で再現性は
13.3%以下となりました。
まとめ
本アプリケーションニュースでは水道水と飲料水サンプ
ル中のPFAS分析について紹介しました。添加回収試験を
行ったところ、 PFOS、PFOAの2成分において添加濃度
0.0004 µg/kg で水道水の回収率は93.1%,、85.0%で再現性は
18.8%以下であり、飲料水の回収率は95.1%、90.0%で再現
性は17.7%以下でした。PFNA、PFHxS、HEPO-DAの3成分に
おいて添加濃度0.001 µg/kgで水道水の回収率は92.8-110.4%
以内、再現性は15.6%以下であり、飲料水の回収率は93.3-
111.3%以内、再現性は5.5%でした。他の全化合物において
添加濃度0.004 µg/kgで水道水の回収率は92.3-131.9%以内で
再現性は14.4%以下、飲料水の回収率は91.8-138.1%以内で
再現性は13.3%以下となり、良好な結果が得られたことを確
認しました。特に、PFOA、PFNA、 PFHxS、PFOSではいず
れの添加濃度においても回収率は 83.8-119.4%以内となりま
した。最適化された前処理および分析メソッドを用いるこ
とで、0.0004 µg/kgから正確に定量することが可能です。
<参考文献>
表3 EPAの基準
Spiked conc. 0.0004 µg/kg
Spiked conc. 0.001 µg/kg
Spiked conc. 0.004 µg/kg
図5 回収率と再現性 (n = 3)
2025
0
5
10
15
20
25
0
50
100
150
200
%RSD (%)
Recovery rate (%)
Compound LOQ (ppt)
PFOS ≦0.4
PFOA ≦0.4
PFNA ≦1
PFHxS ≦1
HEPO-DA ≦1
Spiked conc. 0.01 µg/kg
*NMeFOSEとNEtFOSEの添加濃度は0.004, 0.01, 0.04, 0.1 µg/kgであった。
*5:3 FTCAと7:3 FTCAの添加濃度は0.002, 0.005, 0.02, 0.05 µg/kgであった。
*
*
**
1) AOAC SMPR®2023.003
2) Analysis of Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS)
in Aqueous, Solid, Biosolids, and Tissue Samples by LC-
MS/MS, EPA, 1633A
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