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はじめに
動的画像解析法による微小異物の粒子画像の取得および粒
子径、粒子濃度の評価
懸濁液を動的画像解析装置(iSpect DIA-10、島津製作
所)で測定し、微小異物の粒子画像を取得しました。また
取得したデータから粒子径、粒子濃度を評価しました。分
析条件を表1に示します。なお、コントロールとして懸濁液
の調製時と同種のガラス瓶に保管したHFIPの測定も行いま
した。この測定により、ガラス瓶および溶媒に由来する微
小粒子の影響を確認しました。
リサイクルされたプラスチックのフレーク・ペレットの
品質特性の一つとして異物の含有量があります。フレー
ク・ペレットに含まれる異物のサイズ・量を定量に評価す
ることは、フレーク・ペレットの高品質化を目指した異物
除去工程の検討や、再生材を使用した製品の製造工程の最
適化において重要です。
本報告では、バージン材と再生材のポリエチレンテレフ
タレート(以下、PET)のペレットにPETを溶解させる溶媒
であるヘキサフルオロ-2-プロパノール(以下、HFIP)を加
え、不溶性の微小異物の懸濁液を調製しました。これを動
的画像解析装置(iSpec DIA-10)で測定し、不溶性の微小異
物のサイズと個数を評価しました(特許出願中)。さらに、
懸濁液の一部を10倍希釈し、メンブレンフィルタに通すこ
とで、不溶性の微小異物をフィルタ上に捕集しました。捕
集された微小異物の形状や組成についてデジタルマイクロ
スコープ、赤外顕微鏡システム(IRTracer-100およびAIM-
9000)、SEM-EDSを用いて評価しました。これらの評価に
より、バージン材と再生材に含まれる異物のサイズ・量・
種類を比較した事例をご紹介します。
図1 ダイナミック粒子画像解析システム iSpect DIA-10
PETボトルのリサイクルと異物
PETボトルの場合のリサイクルのプロセスを図3に示しま
す。PETボトルの製造においてペレットに含まれる異物が原
因となる課題の一つは成型時の破裂(バースト)です。再
生材ではバージン材と比較してバーストが多い傾向があり
ますが、異物が微小かつ飛び散ってしまうため、バースト
後の異物回収はできず、原因の特定が困難です。
もう一つの課題は溶融・押出工程におけるフィルタの目
詰まりです。工程中に異物除去のための金属フィルタが使
用されますが、フィルタの目詰まりにより圧力上昇が生じ
るため、定期的に交換する必要があります。しかし、異物
のサイズ・量がペレットにより異なるため、フィルタの種
類・交換時期の最適化が困難です。
ペレット中の異物のサイズ・量に関する情報を得ること
で以下のような工程改善への活用が期待できます。
• ペレットの品質に応じた金属フィルター選定による条件
最適化を通じた歩留まり・生産性の向上
• リペレットの高品質化を目的としたペレット製造時の異
物除去工程の改善
リサイクルプラスチックのペレット・フレークの品質特性の一つである微小異物のサイズ・量を簡便に評価できます。
動的画像解析法では、マイクロセル方式により少量の試料で、短時間で微小異物の検出・計数が可能です。
赤外顕微鏡、SEM-EDSは、リサイクル工程の改善に有用な微小異物の形状・組成に関する情報を提供します。
動的画像解析法、赤外顕微鏡、SEM-EDSによる
リサイクルプラスチック中の微小異物の評価
前田 裕貴
1
、本間 正裕
2
、尾野 公靖
2
、丸山 かれん
1
、顔 旭
1
、宮崎 然
1
ダイナミック粒子画像解析システム iSpect DIA-10
フーリエ変換赤外分光光度計 IRTracer -100
赤外顕微鏡 AIM-9000 / AIMsight
1 島津製作所、2 島津テクノリサーチ
微小異物の懸濁液の調製
PETのペレット(バージン材、再生材)にHFIPを加え、
100 mg/mLの懸濁液とし、室温で静置しました。PETは
HFIPに溶解するため、懸濁液中にはHFIPに不溶な微小粒子
が残ります。ペレットの溶解の様子を図4に示します。バー
ジン材と再生材で溶解速度に違いがありますが、バージン
材については4日以内、再生材については6時間以内に目視
ではペレットが確認できなくなりました。
溶融・押出時の圧力上昇 バーストの発生頻度の増加
再商品化製品
フレーク ペレット
最終製品
PET
ボトル
最終製品化工程
プリ
フォーム
成形
ブロー
成形
分別、粉砕、洗浄
比重分離、乾燥
再商品化工程
従来、異物量が多い場合に
観察される事象
図3 リサイクルのプロセス(PETボトルの場合)
分析条件
図2 赤外顕微鏡システム
左:IRTracer
TM
-100 右:AIM-9000
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赤外顕微鏡およびSEM-EDSによる微小異物の形状観察と組
成分析
懸濁液は粘性が高かったため、50 µLの懸濁液を10倍に希
釈しました。吸引ろ過により10倍希釈した懸濁液中の不溶
性の微小異物を銀メンブレンフィルタ上に捕集しました。
図5にデジタルマイクロスコープにより確認した、捕集後の
銀メンブレンフィルタを示します。赤い点線の円内が粒子
が捕集されている領域です。銀メンブレンフィルタ上に捕
集された粒子の一部について赤外顕微鏡システム
(IRTracer-100およびAIM-9000、島津製作所)を用いた顕
微反射法による測定を行いました。測定条件を表2に示しま
す。また粒子画像や赤外顕微鏡による結果から無機物や金
属と考えられた粒子についてはSEM-EDS(ProX、Phenom
World)による測定も行いました。
バージン材 再生材 バージン材 再生材
溶解開始時
バージン材 再生材
6時間後
バージン材 再生材
4日後
図4 HFIPによるペレットの溶解の様子
図 6 検出された粒子画像
*面積相当径が大きい順に並べた際の冒頭部分を抜粋
バージン材
再生材
結果と考察
動的画像解析法による微小異物の粒子画像の取得および粒
子径、粒子濃度の評価
iSpect DIA-10により検出された粒子画像の一部を図6に示
します。面積相当径が大きい順に並べた際の冒頭部分を抜
粋しています。粒子画像からもわかるように面積相当径が
最大の粒子は、バージン材では約10 µm、再生材では約40
µmでした。また、粒子画像ごとに形状や明るさ(輝度)が
異なっていることが分かります。輝度については粒子と分
散媒の相対屈折率が小さいほど、また観察方向について粒
子の奥行が短いほど明るくなります。
そのため明るい粒子は、屈折率の小さい有機物や光を透
過するガラス片もしくは薄片状(観察方向に薄い)粒子、
暗い粒子は無機物や金属もしくは分厚く密な粒子(観察方
向に厚い)であると考えられます。このように粒子の形状
と輝度の情報は粒子種の類推に活用できます。
粒子濃度の測定結果を図7、表3に示します。全粒子濃度
としてはHFIPおよびバージン材では数百個/mLのオーダー、
再生材については約2万個/mLという結果が得られました。
また粒子径区間ごと粒子濃度から、粒子濃度の大小関係は
粒子径区間に依存せず同様であることと、粒子の90 %以上
が10 µm未満であることが分かります。
表4には、ペレット中の1 gあたりの微小異物数を示しま
す。このように、試料液の濃度から換算することでペレッ
ト中の1 gあたりの粒子数として評価することも可能です。
フレームレート : 8 fps
撮影効率 : 96.5 %
分析総量 : 250 µL
二値化処理閾値 : 216 (背景輝度に対して90 %)
バックグラウンド補正 : 有効
表1 iSpect DIA-10の分析条件
図5 捕集後の銀メンブレンフィルタ
装置 : IRTracer-100, AIM-9000
分解 : 8 cm
-1
積算回数 : 100
アポタイズ関数 : SqrTriangle
波数範囲 : 700 - 4000 cm
-1
検出器 : 液体窒素冷却式MCT
表 2 赤外顕微鏡の分析条件
溶解前
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0
5000
10000
15000
20000
25000
個数濃度[個/mL]
サンプル
粒子濃度
[個/mL]
任意区間粒子濃度
[個/mL]
5-10 µm 10-25 µm 25-50 µm 50-100 µm >100 µm
HFIP 104 91 12 0 0 0
バージン材 286 257 23 3 0 0
再生材 20240 19523 699 18 0 0
サンプル
粒子濃度
[個/g]
任意区間粒子濃度
[個/g]
5-10 µm 10-25 µm 25-50 µm 50-100 µm >100 µm
バージン材 2860 2570 230 30 0 0
再生材 202400 195230 6990 180 0 0
図7 粒子濃度測定結果
* 3回測定の平均値、エラーバーは標準偏差を表す。
表3 粒子径区間ごとの粒子濃度(個/mL)
表4 粒子径区間ごとのペレット1 gあたりの粒子数(個/g)
* 3回測定の平均値。
* 3回測定の平均値。
* 試料液の調製時の濃度である100 mg/mLから換算。
赤外顕微鏡およびSEM-EDSによる微小異物の形状観察と組
成分析
バージン材について赤外顕微鏡による組成分析結果の一
部を図8、図9に示します。赤外顕微鏡による観察画像から
茶色い粒子が確認され、IRスペクトルから、アミド系化合
物やセルロース類と考えられました。これらの粒子は、測
定時の処理過程で混入する可能性があるため、サンプル由
来か否かの特定は困難でした。
再生材については、赤外顕微鏡では有機物ではない粒子
の存在も示唆されました。有機物ではない粒子について
SEM-EDSでの評価を行った結果を図10、図11に示します。
図10の粒子については、EDSスペクトルからC(炭素)、Ca
(カルシウム)、O(酸素)が主として検出されており、
炭酸塩などの可能性があります。なお、Ag(銀)はフィル
タ素材のために検出されたピークです。図11の粒子につい
ては、光学顕微鏡で金属光沢があることとEDSスペクトル
でAl(アルミニウム)も検出されていることから、金属の
アルミニウムであると考えられます。
再生材は、回収過程で様々な組成の物質と接触する可能
性があります。そのため異物の組成情報は、異物の由来を
調査する際や異物の低減策を検討する際、さらには最終製
品への影響を評価する際に活用できます。
さらに図10の粒子は、図6のiSpect DIA-10で得られた粒子
画像中の上段の左から2~4番目の粒子と形状や長径が類似
していることが確認できます。形状の類似性から、iSpect
DIA-10で取得した粒子画像の組成推定にも活用できる可能
性があります。
図8 組成分析結果(バージン材:人皮由来成分)
a) 赤外顕微鏡による観察画像
b) IRスペクトル
図9 組成分析結果(バージン材:セルロース)
a) 赤外顕微鏡による観察画像
b) IRスペクトル
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© Shimadzu Corporation, 2025
分析計測事業部
https://www.an.shimadzu.co.jp/
本資料は発行時の情報に基づいて作成されており、予告なく改訂することがあります。
本文中に記載されている会社名、製品名、サービスマークおよびロゴは、各社の商標および
登録商標です。
本文中では「TM」、「 」を明記していない場合があります。
初版発行:2025年 8月 01-00861-JP
iSpect、IRTracer、およびAIMsightは、株式会社島津製作所またはその関係会社の日本およびその他の国における商標です。
図 10 組成分析結果(再生材:C、Ca、Oを多く含む粒子) 図 11 組成分析結果(再生材:Alを多く含む粒子)
a) 赤外顕微鏡による観察画像
b) SEM画像
c) EDSスペクトル
a) 赤外顕微鏡による観察画像
b) SEM画像
c) EDSスペクトル
まとめ
PETのペレット2種類(バージン材、再生材)をHFIPに溶
解させた懸濁液をiSpect DIA-10で測定することで、不溶性
異物の粒子画像を取得し、粒子径および粒子濃度を評価し
ました。これによりバージン材と再生材に含まれる微小異
物のサイズ・数を定量的に比較できました。
また、ペレットの懸濁液を希釈した後、希釈液中の不溶
性の微小異物をフィルタ上で捕集し、赤外顕微鏡および
SEM-EDSを用いて微小異物の形状と組成を評価しました。
その結果、有機物としてはセルロース類やアミド系化合物、
無機物や金属としては元素としてC、O、Ca、Al(炭酸塩や
アルミニウムと考えられる)などが含まれることが分かり
ました。
以上のように、少量のサンプルで、簡便に評価が可能な
iSpect DIA-10はPETペレット中の微小異物のサイズ・数の定
量評価に有用です。また加えて赤外顕微鏡、SEM-EDSによ
り微小異物の組成を評価することで、異物の由来の調査や、
異物の低減策の検討、最終製品への影響の評価において有
用な情報が得られます。さらにサイズや形状の類似性が見
られれば、iSpect DIA-10で検出された粒子の組成の推定に
も活用可能です。
アンケート
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