RoHS試験法の改訂と今後の動向

国際電気標準会議(IEC)TC-111/WG-3日本代表委員に聞く

分析計測事業部 グローバルマーケティング部 山下 昇

RoHS指令に対応する試験法としてIEC:62321が2008年10月に承認され5年が経過しました。その間,RoHS指令においては規制物質,限度値には追加や変更がなかったものの将来的に追加が検討される物質も増えています。これに合わせてIEC:62321も改訂され2013年5月にPart1~Part5(従来の臭素系難燃剤と6価クロムを除く部分)のFDISが承認され,国際規格として発行されました。今後,これまでAnnex(参考法)であった臭素系難燃剤(PBDE・PBB),6価クロム,追加がほぼ確実なフタル酸エステル類の分析法*注)が国際標準試験法として追加,成立して行く予定です。

-IEC:62321改訂の背景-
IEC:62321およびIEC/PAS:62596は,RoHS指令に対応する試験法およびサンプリング法として公開されています。しかしながらIEC:62321においては6価クロム測定,臭素系難燃剤(PBDE・PBB)の測定がInformative Annex (参考情報)となっており,正式な国際標準試験法としての確立が急務であった。またREACH規則など拡大する環境規制/規則に対応するため追加規制物質に対するメンテナンス性の向上,ユーザーメリットを考慮した分冊化を図り改訂に着手した。

-IEC:62321改訂の内容-
改訂IEC:62321は形式的には,各分析法を対象物質毎に分冊化することであるが内容的には以下が変更されている。
1. サンプリング法を関連する分析法へ追加記述
2. スクリーニング法の追加(石英管燃焼法イオンクロマト)
3. 臭素系難燃剤(PBB,PBDE)の分析法(簡易分析法の追加)
また今後,RoHS指令の改正において追加の可能性が高いフタル酸エステル類やHBCDDの試験法作成*注)にも着手している。

■今後,RoHS指令に追加される可能性が高い物質は?*注)
フタル酸エステル類やHBCDD(ヘキサブロモシクロドデカン)等が追加規制物質となる可能性が高いと思われます。先日当社が開催したセミナー「島津 改正RoHS指令セミナー 第2弾 ~改訂IEC:62321の概要と分析法の紹介~」の講演でも,このことについてお話させていただきました。

■具体的にはどのような試験法が採用されるんでしょうか?
臭素系の難燃剤は,臭素をターゲット元素として蛍光X線分析法によるスクリーニングが容易です。しかしながら化合物としての物質判定は不可能です。このため蛍光X線のスクリーニングで臭素が検出された場合,ソックスレー抽出によるGC/MS法(ガスクロマトグラフ質量分析法)の精密検査が必要となりました。この検査は工数,技量,コストが掛かるため簡易分析法の推奨が産業界から強く求められていました。さらに今後,追加される可能性が高いフタル酸エステル類では蛍光X線によるスクリーニングも不可能となります。このためIEC:TC-111:WG-3ではフタル酸エステル類の分析法をPart8として試験法の作成を行っています。この試験法ではPy-GC/MS法(熱分解-ガスクロマトグラフ質量分析法)を簡易分析法として推奨する予定です。
IEC 深圳会議

IEC深圳会議 (於:中国 深圳市 ) 2013年11月

2013/12/25

*注)
2015年6月にRoHS指令の規制物質への追加が官報で公布されました。追加規制物質は,フタル酸ジ-2エチルヘキシル (DEHP),フタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ジイソブチル (DIBP),フタル酸ブチルベンジル(BBP)の4種類のフタル酸エステル類です。なお,ヘキサブロモシクロドデカン(HBCDD)は,POPs条約の対象物質(附属書A)に追加されることが決定されていることから,RoHS指令の規制物質に追加しないことになりました。

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