有害物質 臭素系難燃剤

GC-MS多機能熱分解システム
ガスクロマトグラフ質量分析計GCMS-QP2020 NX は,RoHS指令(電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限する指令)で規制対象となっている臭素系難燃剤PBB(ポリ臭化ビフェニル)とPBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)を測定することができます。その前処理には,ソックスレー抽出法または溶解性のポリマーは溶媒溶解法が用いられます。
これらの前処理法は厳密な定量結果を得るには必須ですが,多くの検体を分析するには適していません。これらの処理は操作が煩雑であり,処理に時間がかかり,また,大量の有機溶媒を使用するといった問題があります。
熱分解‐GC/MS(Py-GC/MS)は,簡便にこれらの臭素系難燃剤をスクリーニングすることができます。
測定手順
ソックスレー抽出‐GC/MS法
- ポリマーを粉砕。
- ソックスレー抽出器を洗浄するための前抽出 (70mL トルエン・2時間)。
- 粉砕したポリマー100mg秤量。
- サロゲート添加後,ソックスレー抽出 (60mL・2時間以上)。
- 抽出後,100mL にメスアップ。
- 内部標準物質の添加。
- GC/MSで測定。
溶媒溶解法(溶解するポリマー(PS-HIまたはHIPS))
- ポリマーを粉砕し,100mg秤量。
- ポリマーが可溶な溶解溶媒を9.8mL添加。
- サロゲートを200μL添加後,超音波で溶解 (30分)。
- 溶液を1.0mL分取。
- ポリマーが不溶でPBDEおよびPBBが可溶な溶媒9.0mL添加。
- 沈殿したポリマーを濾過。
- 内部標準物質の添加。
- GC/MSで測定。
Py-GC/MS法
- カッター等でポリマーを細かく切り刻む。
- ポリマー片をPyのサンプルカップに秤量。
- サンプルカップをPy-GC/MSのオートショットサンプラーにセット。
- Py-GC/MS測定。
関連アプリケーション
- 熱分解-GC-MSを用いた臭素系難燃剤の分析
- 熱分解-GC-MSを用いた同一分析条件による臭素系難燃剤とフタル酸エステル類の分析(1) PBBsおよびPBDEsの分析例
- 熱分解-GC-MSを用いた同一分析条件による臭素系難燃剤とフタル酸エステル類の分析(2) フタル酸エステル類の分析例
- 熱分解-GC-MSを用いた同一分析条件による臭素系難燃剤とフタル酸エステル類の分析(3) HBCDDの分析例
- これらのデータは GCMSアプリケーションデータシート(化学・電機)のページ に掲載しています。
GC-MSとは ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC-MS)は,GCで分離された化合物を,MSでイオン化してそのイオンの質量/電荷数(m/z)で分離する複合分析装置です。 GCとは サンプルをGCの注入口で加熱・気化し,ヘリウムガスでGCのカラムに導入します。カラムの内壁には液相が付いており,導入された成分は,液相への溶解と気相(ヘリウムガス)への移行を繰り返しながらカラム内をヘリウムガスとともに移動します。液相に留まる時間が成分によって異なるため,カラムから出てくる時間(保持時間)が成分ごとに異なり分離されます。 MSとは カラムで分離された成分はMSに導入されます。MS内部では,まずイオン源内でフィラメントからの加速された電子がカラムから出てきた化合物分子から電子を取り除きます。その結果,分子は電子を一個失って正の電荷を持ったイオンになるとともに開裂して正の電荷を持った破片(フラグメントイオン)を生じます(電子イオン化)。このようにして生成したイオンは高周波電圧を印加された四重極(Quadrupole QP)に送り込まれ,印加する高周波電圧を走査することによって,m/zごとにイオンを分離し検出します。 実際の測定では,目的とする成分に特徴的なイオンのm/zをモニターすることによって得られるマスクロマトグラムを用いて定量分析をします。 熱分解 熱分解は,ポリマー試料を高温に保った熱分解炉に落下し,ポリマーを熱分解し,その生成物をGC-MSに導入するための装置です。炉の温度を,ポリマーの熱分解温度より低い温度に設定すると,ポリマーを分解することなくポリマー中のPBB,PBDE,フタル酸エステル類などを熱抽出することもできます(熱脱着法)。 |