アトロピン中の微量不純物の構造推定/LCMS-IT-TOF

アトロピン中の微量不純物の構造推定/LCMS-IT-TOF

ICHガイドラインではカバーされていなかった不純物に関する遺伝毒性あるいは発ガン性の検証に対して、FDAはドラフトガイダンス“Genotoxic and Carcinogenic Impurities in Drug Substances and Products: Recommended Approaches”を発行し、新薬、治験薬およびジェネリック医薬品のいずれにおいても遺伝毒性を有する可能性がある、あるいは、遺伝毒性が不明な不純物について、1.5μg以下に抑制することが求められる方向にあります(12ヶ月以上の服用を想定する場合)。
不純物の遺伝毒性や発ガン性の検証あるいは製造工程の改善による1日摂取量1.5μg以下への抑制のいずれにおいても不純物の構造解析は必要となります。この閾値は一日投与量200mgの医薬品では従来のICHガイドラインと比較して、約150分の1の極微量不純物の構造解析を要求します。
有機物の構造解析の手法にはNMRがありますが、混合物分析の必要性や感度を考慮すると、極微量の不純物の構造解析には精密質量の測定とMSnが可能なLCMS-IT-TOFが有用です。

■アトロピン中の微量不純物の分析例をご紹介します。

市販のアトロピンにp-ニトロフェノールを微量不純物として添加(0.001%)したものを分析対象とした分析結果を下記に示しました。
図1にはLCのクロマトグラム(拡大図)を示しました。矢印で示したピークが添加したp-ニトロフェノールです。
p-ニトロフェノールのピークをLCMS-IT-TOFで分析した結果を図2に示しました。
得られたMSおよびMS/MS値から組成推定ソフトウェアを使用して、組成式の推定を行なった結果を図3および4に示しました。
添加したp-ニトロフェノールの組成式に合致した組成式が第一候補として挙げられています。

図1 クロマトグラム(UV 230nm) 

図2 MS、MS/MSクロマトグラム 

図3 組成推定結果 、図4 組成推定結果(組成式)

LCMS-IT-TOF

液体クロマトグラフ質量分析計 LCMS-IT-TOF

  • 構造解析用高分解能質量分析計としては、ユニークな正負イオン高速切換機能が、1回のインジェクションで得られる情報量を飛躍的に増やし、組成推定や構造推定での意志決定を大幅に加速します。
  • Dual-Stage Reflectron(DSR)とBallistic Ion Extraction(BIE)およびフライトチューブの精密温調により、高精度なMSnデータを長時間にわたって取得可能です。この質量精度安定性が、正確な不純物組成推定および構造推定を可能とします。
  • ニュートラルロスサーベイと呼ばれる、プロダクトイオンスペクトルで得られた特定の中性分子の脱離をトリガーとしたMS 3測定、特定の同位体パターンをトリガーとしたMS2測定など、化合物の構造類似性を利用した自動MSn機能が、APIと構造関連性のあるイオンのみを判定します。
    MS nスペクトルの類似性を用いて、APIとの構造関連性のあるピークを自動抽出するソフトウェア MetID Solutionや組成推定の際、質量精度のみでなく、同位体パターンスコアリング、化学ルール、MS nフィルタリングを組み合わせることのできる組成推定ソフトウェア Formula Predictorは、不純物検出から組成推定、構造推定のワークフローを大幅に加速します。
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