ICH Q3D 医薬品金属不純物ガイドラインの ICP発光分析法による分析

ICH Q3D 医薬品金属不純物ガイドラインのICP発光分析法による分析

1.はじめに

日米EU医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use :ICH)では,日米EUの三極で調和した各種のガイドラインが作成されており,ICH Q3Dとして医薬品の金属不純物ガイドラインが検討されています。このガイドラインには毒性が懸念される金属不純物24元素について,1日許容曝露量(permitted daily exposure:PDE)が設定されており,ビッグ4と呼ばれるPb(鉛),Cd(カドミウム),Hg(水銀),As(ヒ素)や,原薬合成において意図的に添加される残留触媒金属などが含まれています。
これら多元素分析には,迅速性・簡便性といった点でICP発光分析装置が便利です。島津マルチタイプICP発光分析装置ICPE-9820は,これらの分析対象元素の一斉分析を行うことができます。

2.試料前処理

ICPE-9820

ICPE-9820

点眼液と錠剤(1日の摂取量1錠(0.2g))の分析を行いました。点眼液は,試料に硝酸・塩酸を加え,純水で5倍希釈し測定溶液としました。錠剤は,2錠をマイクロウェーブ試料分解装置を用い,硝酸・塩酸による分解後,20mLに定容し測定溶液としました。(50倍希釈)

3.分析と結果

分析装置として,島津マルチタイプICP発光分析装置ICPE-9820を用いました。ICPE-9820は,エシェル分光器とCCD 検出器の採用により,全元素・全波長の同時分析が可能であり,測定対象元素や試料点数が多い場合においても,ハイスループットで測定を行うことができます。また,ミニトーチ,真空分光器の採用により,従来のICPに比べ,ガスにかかるランニングコストを大幅に低減できます。
測定は,検量線法-内標準法により,ICH Q3Dで設定された24元素について定量分析・添加回収試験を行いました。Table1に点眼液の分析結果を,Table2に錠剤の分析結果を示します。各試料とも添加回収率(Tablel1,2の*1)は良好な結果が得られています。また,試料中濃度に換算した検出限界(Tablel1,2の*2)は,許容濃度(Tablel1,2の*3)を十分に満たしています。
Table1,2の許容濃度,処理後濃度,添加濃度,換算検出限界,<DLの語句説明はTable最下部に示しています。

Table1.点眼液の分析結果

元素名 注射剤
PDE
*3 許容
濃度
処理後
濃度
添加
濃度
測定値
(点眼液中)
*1 添加
回収率
*2 点眼液中換算
検出限界(3σ)
μg μg/mL μg/mL μg/mL μg/mL % μg/mL
As 15 15 3 1 <DL 104 0.04
Cd 2 2 0.4 0.4 <DL 101 0.0006
Hg 3 3 0.6 0.3 <DL 105 0.007
Pb 5 5 1 0.3 <DL 102 0.01
Co 5 5 1 0.3 <DL 95 0.001
Ni 20 20 4 0.5 <DL 104 0.003
V 10 10 2 0.5 <DL 98 0.0008
Ag 10 10 2 0.5 <DL 104 0.0008
Au 100 100 20 0.5 <DL 99 0.006
Ir 10 10 2 0.5 <DL 101 0.01
Os 10 10 2 0.5 <DL 103 0.006
Pd 10 10 2 0.5 <DL 102 0.004
Pt 10 10 2 0.5 <DL 99 0.02
Se 80 80 16 0.5 <DL 103 0.02
Rh 10 10 2 0.5 <DL 95 0.007
Ru 10 10 2 0.5 <DL 103 0.003
Tl 8 8 1.6 0.5 <DL 95 0.02
Ba 700 700 140 0.5 <DL 96 0.0006
Cr 1100 1100 220 0.5 <DL 97 0.002
Cu 300 300 60 0.5 <DL 96 0.002
Li 250 250 50 0.5 <DL 99 0.01
Mo 1500 1500 300 0.5 <DL 100 0.003
Sb 90 90 18 0.5 <DL 103 0.010
Sn 600 600 120 0.5 <DL 100 0.01

Table2.錠剤の分析結果

元素名 経口製剤
PDE
*3 許容
濃度
処理後
濃度
添加
濃度
測定値
(錠剤中)
*1 添加
回収率
*2 錠剤換算
検出限界(3σ)
μg μg/g μg/mL μg/mL μg/g % μg/g
As 15 75 1.5 0.5 <DL 107 0.5
Cd 5 25 0.5 0.1 <DL 100 0.007
Hg 30 150 3 1 <DL 101 0.1
Pb 5 25 0.5 0.1 <DL 98 0.07
Co 50 250 5 1 <DL 101 0.01
Ni 200 1000 20 1 0.1 100 0.03
V 100 500 10 1 <DL 103 0.01
Ag 150 750 15 1 <DL 104 0.02
Au 100 500 10 1 <DL 105 0.03
Ir 100 500 10 1 <DL 100 0.09
Os 100 500 10 1 <DL 85 0.04
Pd 100 500 10 1 <DL 106 0.05
Pt 1000 5000 100 1 <DL 102 0.3
Se 150 750 15 1 <DL 108 0.3
Rh 100 500 10 1 <DL 101 0.1
Ru 100 500 10 1 <DL 100 0.03
Tl 8 40 0.8 0.1 <DL 103 0.2
Ba 1400 7000 140 1 <DL 102 0.003
Cr 11000 55000 1100 1 <DL 101 0.02
Cu 3000 15000 300 1 <DL 105 0.05
Li 550 2750 55 1 <DL 104 0.1
Mo 3000 15000 300 1 <DL 101 0.03
Sb 1200 6000 120 1 <DL 105 0.1
Sn 6000 30000 600 1 <DL 100 0.03

 許容濃度:点眼液は,1日の使用量を1mLとしたときの許容濃度。錠剤は,1日の摂取量(0.2g)での許容濃度
        (PDEを濃度に変換する計算はオプション3)
 処理後濃度 :試料の前処理後の測定溶液中許容限度濃度
 添加濃度 : 添加回収試験溶液中の添加濃度
 点眼液中換算検出限界(3σ) : 測定溶液中検出限界(3σ)×希釈倍率(5)
 錠剤換算検出限界(3σ):測定溶液中検出限界(3σ)×希釈倍率(50)
 <DL:検出下限(3σ)未満


参考資料:ICH Q3D:医薬品の金属不純物ガイドライン (STEP2b)

マルチタイプICP発光分光分析装置ICPE-9800シリーズ

濃度を問わず多元素の一斉・迅速分析を可能にする精確性と,分析を容易にするソフトウエアの簡便性を備えた次世代装置です。さらに,業界最高水準のシステムで分析のローコスト化を実現。環境,医薬,食品,化学,金属など様々な分野でICP発光分光分析の頂を窮めます。

ICP質量分析計 ICPMS-2030

ICP質量分析計は,元素の定性・定量をppt(1兆分の1)レベルの感度で行うことができ,元素分析を行う装置として最も高感度と言われています。 医薬品の安全性評価のみならず,血中成分の分析,水道水に含まれる有害元素の測定や食品に含まれる有害元素・ミネラル分の分析,といった幅広い分野における研究開発や品質管理の用途で使用されています。

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