開発:超音波の照射によるマイクロバブルおよび細胞挙動の観察/HPV-X2

超音波の照射によるマイクロバブルおよび細胞挙動の観察/HPV-X2

ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System:DDS)の投薬方法の1つに,薬品を封入したマイクロバブルを細胞に付着させた後に崩壊させて,細胞内に薬品を注入する方法があります。この方法ではマイクロバブル崩壊時のジェットにより,細胞が死滅しない程度に細胞壁を貫通させて薬剤を注入する必要があるため,バブル崩壊時の細胞の挙動の観察が重要です。バブルは超音波による共振によって崩壊させますが,共振させる周波数が1 MHz以上であることから100万コマ/sec以上の高速度撮影を行う必要があります。

Fig.1 撮影の様子

Fig.1 撮影の様子
Experimental equipment

Fig.2 撮影の模式図

Fig.2 撮影の模式図
Schematic view

Table 1 撮影装置
Experimental equipments

高速度ビデオカメラ HPV-X2
顕微鏡 生物顕微鏡 IX70
照明 ストロボ

■測定システム

実験には高速度ビデオカメラHPV-X2を用いました。Fig.1に撮影の様子,Fig.2に撮影の模式図を示します。生理食塩水を満たしたサンプルセルに,がん細胞とポリ塩化ビニルのマイクロカプセル(直径約5 µm)を入れ,水槽底面にセットします。超音波ホーンのフォーカスをサンプルセルに合わせ,1 MHzの超音波を3波照射し,その様子をHPV-X2にて観察しました。Table 1に今回使用した装置を示します。

 

Fig.3 カメラの撮影動画

 

■測定結果

Fig.3に撮影画像を示します。撮影速度は1000万コマ/secで行いました。 Fig.4に撮影結果を示します。Fig4の画像2にて超音波が照射され,マイクロカプセル内のマイクロバブルが膨張していきます。画像3の矢印で示された2つのマイクロバブルが,膨張する過程で細胞に接触し,負荷を与えています。マイクロバブルの膨張は,画像4まで続き,その後,画像11まで収縮していきます。画像11における矢印の2箇所で細胞が変形しており,損傷していることが確認できます。

Fig.4 高速度撮影の結果 (画像間の時間間隔は200 ns)

Fig.4 高速度撮影の結果 (画像間の時間間隔は200 ns)
High speed imaging (Interval of images : 200nsec)

データ提供:北海道大学人間情報工学研究室

■まとめ

高速度ビデオカメラHPV-X2を用いて,超音波照射によるマイクロバブルと細胞の挙動を観察しました。1MHzの超音波を照射するため,100万コマ/sec以上の撮影速度が必要であり,顕微鏡を使用した撮影ということでカメラの感度が非常に重要な測定となりました。今回開発されたHPV-X2は従来機HPV-Xの6倍以上の感度を有するため,撮影速度1000万コマ/secで顕微鏡を使用しても,良好に撮影することができました。このようにHPV-X2を用いることで,DDSの開発に役立てていただくことができます。

※ドラッグデリバリーシステムとは
ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System:DDS)の定義は,薬物伝達システムのことであり,薬物投与経路の最適化を目的とする医薬品の効果をよりよく発揮させるために設計された投与形態の総称です。つまり,必要な薬物を,必要な場所に,必要なときに供給することを目的としています。薬を飲んだとき,実際の患部までたどり着いて効き目を発揮するのは,飲んだ薬のうち,ほんのわずかな量です。薬の成分の中には生体内で分解されるものや,必要ない部位に作用して副作用を引き起こすものもあります。DDSを使用することで,より効果的な投薬が可能となり,薬品の投与量を削減や副作用の削減が期待でき,患者のQOL(Quality of Life)の改善につながると考えれられます。また,投薬回数の削減から費用の改善も期待されます。

HyperVision HPV-X2 高速度ビデオカメラ

Hyper Vision HPV-X2
高速度ビデオカメラ

人の目では見ることのできない,ミクロ領域で起こる事象の拡大観察ができる顕微鏡や,知覚できない波長の光を用いて映像での観察を可能にしたX線撮影装置や赤外線カメラの発明など,可視化技術により医学や工学は飛躍的に進歩を遂げてきました。
わたしたちの目は20分の1秒より短い時間で起こる事象は捉えられません。このため,人の目では見えない瞬間に起こる事象を記録し,スロー再生によって可視化する高速度ビデオカメラが必要とされてきました。
高速度ビデオカメラHyper Visionシリーズは,超高速領域におけるスタンダードな可視化ツールとして,さまざまな分野で超高速現象の解明に貢献しています。

Top of This Page