メタボロミクスによる新規診断法の研究/GCMS

メタボロミクスによる新規診断法の研究/GCMS

GCMSを用いた血中代謝物メタボロミクスによる膵臓がんの新規診断法

がんによる死亡は増加の一途を辿っており,昨今では日本人死因の約3分の1を占めるようになりました。中でも,膵臓がんは早期発見が困難で,その治療成績も不良であることから,早期診断が可能な疾患マーカーの開発が望まれています。近年,代謝物を網羅的に解析する方法であるメタボローム解析(メタボロミクス)が,医療分野に導入されつつあります。特に,疾患診断や薬効評価,薬剤毒性を示すマーカー探索が行われています。
メタボローム解析は,さまざまなクロマトグラフに質量分析計を接続した機器を用いて行われています。血液などの臨床検体は多種多量の代謝物を含むため,解析に用いるクロマトグラフの選択には,分解能や定量性,再現性に優れ,代謝物の同定可能なデータベースの存在が必須となります。
膵臓がん患者と健常者の血清からそれぞれ抽出した代謝物をGCMSで測定し,Smart Metabolites Databaseを用いて代謝物の同定を行いました。

     詳細は”Technical Report No.5 GC/MSを用いた血中代謝物プロファイリングによる膵臓がんの新規診断法”(pdf)をご覧ください。

測定の流れ

測定の流れ

血清のスタート容量は50µLで,内部標準物質として,2-イソプロピルリンゴ酸を加え,メタノール/水/クロロホルム溶液(2.5:1:1)で抽出後,上清画分を凍結乾燥して,測定試料としました。測定試料はさらにオキシム化およびトリメチルシリル化した後,誘導体化されたサンプルをGCMSで測定しました。
得られた主要なピークについて,データ解析ソフトであるGCMSSolutionとSmart Metabolites Databaseを用いて検索を行いました。このデータベースには,ヒトの尿中の代謝物から構築されたもので,アミノ酸,脂肪酸,有機酸などを含む178化合物に関して,ある設定条件での保持指標とEIスペクトルのデータが含まれています。

測定データ

膵臓がん患者ならびに健常人から得られた血清由来水溶性代謝物のTIC(トータルイオンクロマトグラム)を左図に示します。
縦軸がピーク強度で,横軸が保持時間を表します。内部標準(図中の↓)を用いてサンプル間の補正をおこないました。

主要なピークについて,GCMSsolutionとSmart Metabolites Databaseを用いて定量と同定をおこないました。
EIスペクトルピークの類似度(シミラリティスコア)が,80以上の60種類の代謝物を同定し,これらについて9名の健常人群と20名の膵臓がん患者(ステージIII-IV)群のメタボロームデータを取得しました。結果の一部を下表に示します。

代謝産物の同定および定量結果

膵臓がん患者(20人)と健常人(9人)のピーク強度の比較をfold inductionとして示します。P値は,Student’s t testにて計算されました。
(データご提供:神戸大学大学院医学研究科 吉田優先生 使用装置:GCMS-QP2010 Plus)
※掲載データは薬事承認された装置で採取されたものではありません。

60個の代謝物に関して,がん患者群と健常人群の2群に分けて統計解析したところ,18個の化合物で統計的に有意差が認められました。その中には、乳酸,チオジグリコール酸,アスパラギン,アコニット酸,グリシン,グリセリン酸などが含まれていました。

島津GCMSと生体分子の定量

アミノ酸,有機酸や脂肪酸などの生体分子は,極性基を有し揮発性があまりないため,直接GCMSで測定することが困難です。そのため,これらの極性基を誘導体化することにより揮発性をもった化合物に変換して測定する必要があります。これらの作業は手間がかかり敬遠されがちでした。 しかし,GCMSは,液体クロマトグラフィなどの他のクロマトグラフィと比べ分離能などの優れた点が見直され,生体成分の測定に適用されるようになってきました。特に,GCMSはキャピラリカラムを用いて容易に高分離を実現でき,また,きょう雑物と目的成分のピークが重なっても電子イオン化法(EI法)により生成されるフラグメントイオンから適切なものを選ぶと,きょう雑物の影響を受けることなく目的成分を定量することができます。 さらに,LC-MS/MSで問題となるイオンサプレッションが起こりにくいことから,きょう雑物を多く含む試料の定量に適しています。

ガスクロマトグラフ質量分析計
GCMS-QP2020/QP2010 シリーズ

本製品は研究用であり,診断又は,その補助を目的として使用できません。

・GCMS-QP2020/QP2010シリーズは生体分子が低濃度まで測定できる感度を有しています。 
・生体試料はきょう雑物を多く含みます。そのような試料をGC-MSで測定すると,イオン源の汚染が問題となります。GCMS-QP2020/QP2010シリーズは汚れにくく,しかもイオン源が汚染されても容易に洗浄できます。
・生体試料を一斉に分析するには,その設定が煩雑です。
Smart Metabolites Databaseには,最適な分析条件と定量のためのパラメータを含んだメソッドファイルが含まれています。

Smart Metabolites Database

本製品は研究用であり,診断又は,その補助を目的として使用できません。

アミノ酸・脂肪酸・有機酸を対象とした代謝物バイオマーカー研究に適しています。300種を超える代謝物に対して,GCにおける保持時間,マススペクトル,化合物情報だけでなく,対象成分の分析用メソッドファイルやデータ解析条件までがデータベースに含まれており,分析の条件検討やセットアップ作業を低減し,マーカー候補となる代謝成分の検出や同定を簡便・迅速化します。
 

Top of This Page