アスベスト(クリソタイル)の高速X線回折分析 - ワイドレンジ高速検出器OneSight -

アスベスト(クリソタイル)の高速X線回折分析 - ワイドレンジ高速検出器OneSight -

アスベスト(石綿)は,耐熱性や耐酸性に優れる材料であることから,古くから多くの分野(主に建材製品として)で使用されてきました。しかし,健康に悪影響を及ぼすものとして徐々に使用が禁止されてきました。平成18年,労働安全衛生法施行令および石綿障害予防規則の改正により規制値がより厳しくなり,現在は製品中のアスベスト含有率を0.1重量%以下にする必要があります。このアスベスト含有率を測定する公定法でX線回折装置が採用されているものとして,JIS A 1481-2(建材製品中のアスベスト含有率測定方法 - 第2部:試料採取及びアスベスト含有の有無を判定するための定性分析方法)およびJIS A 1481-3(建材製品中のアスベスト含有率測定方法 - 第3部:アスベスト含有率のX線回折定量分析方法)があります。
ここでは,新型ワイドレンジ高速検出器OneSightを使用した,アスベストの一種クリソタイルの高速定量分析例についてご紹介します。

■ ワイドレンジ高速検出器 OneSight Wide Range High-Speed Detector “OneSight”

Fig. 1 OneSight 搭載型XRD-7000 XRD-7000 Equipped with OneSight

Fig. 1 OneSight 搭載型XRD-7000
XRD-7000 Equipped with OneSight

ワイドレンジ高速検出器OneSightは,1000 ch以上もの半導体素子から構成された検出器です。従来のシンチレーション検出器と比較して20倍以上の感度を持っており,高速測定をおこなうことができます。
1つのピークに注目して分析を行う定量分析には,広い取り込み角度を生かして対象のピーク位置に検出器を固定して分析する「ワンショットモード」が有効です。このモードにより定量分析を短時間で行うことが可能です。

Fig. 2 島津独自の環境定量分析専用ホルダー/Fig. 3 回転試料アタッチメント(環境定量用)

Fig. 2 島津独自の環境定量分析専用ホルダー
Unique Holder for Environmental Quantitative Analysis
Fig. 3 回転試料アタッチメント(環境定量用)
Rotation Sample Attachment (for Environmental Quantitation)

■ アスベストの分析 Analysis of Asbestos

アスベストの定量分析には,基底標準吸収補法が使われます。ギ酸処理をしたアスベストをフィルターに採取し基底標準Zn板上にセットして測定を行います。
測定された回折強度を透過してくるZn回折強度を用いて補正して検量線を作成し,定量下限を求めました。

Table 1 アスベスト検量線作成のフロー
Flowchart of Asbestos Calibration Curve Construction

Table 1 アスベスト検量線作成のフロー Flowchart of Asbestos Calibration Curve Construction

■ 測定条件 Analytical Conditions

Table 2 測定条件
Analytical Conditions

装置 XRD-6100
X線ターゲット Cu
管電圧 40 kV
管電流 30 mA
単色化 Niフィルター
総積分時間 120秒
回転 60 rpm
検出器 ワイドレンジ高速検出器OneSight
測定モード ワンショットモード

標準試料 : JAWE111(クリソタイル)
試料濃度 : ブランク, 0.05 mg, 0.1 mg, 0.3 mg, 0.5 mg, 1 mg, 3 mg, 5 mg

■ 検量線作 Calibration Curve

ワイドレンジ高速検出器OneSight のワンショットモードを使用して,検量線用試料を測定しました。このモードでは,ゴニオメーターをスキャンさせる必要がなく,目標のピーク位置に固定して強度を得るため,高速測定を行うことが可能です(今回の測定では,アスベストピークが120秒,Znピークが120秒です)。

Fig. 4 検量線試料のピークの重ね合わせ
(クリソタイル0.05mg, 0.1mg, 0.3mg, 0.5mg, 1mg, 3mg, 5mg)
Peak profiles of the calibration samples
(Chrysotile 0.05mg, 0.1mg, 0.3mg, 0.5mg, 1mg, 3mg and 5mg)

Fig. 5 120 秒積分でのクリソタイルの検量線
Calibration Curve of Chrysotile in 120 sec Integration Time

Table 3 OneSight とシンチレーション検出器での検出下限の比較
Lower Limit of Detection Comparison between OneSight and Scintillation Detector

測定方法 OneSightによる
ワンショットモード測定
(120秒積分)
シンチレーション
検出器による測定(注)
(1000秒積分)
検出下限 0.0034 0.0045
定量下限 0.0102 0.0135

(単位 : mg)

JIS A 1481-3で定める定量分析時の測定条件(1/8°~1/16°/分;集中光学系で1000秒積分)と同様の精度がワイドレンジ高速検出器の測定では120秒の測定時間で得られました。
ワイドレンジ高速検出器OneSightにより,きわめて短時間で測定することができることがわかります。

(注)シンチレーション検出器での測定条件は以下の通りです。

装置 XRD-7000
単色化 湾曲グラファイトモノクロメーター
電流電圧 40 kV-30 mA
測定時間 1000 秒測定(アスベスト,Zn それぞれ)
スリット DS 1 度,SS 1 度,RS 0.3 mm
回転 60 rpm
 
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