遺伝子組換え食品の検査,分析について

遺伝子組換え食品の検査,分析について

 遺伝子組換え食品の標準検査,分析方法は,厚生労働省の「組換えDNA技術応用食品の検査方法」1)ならびに輸入食品監視指導に関する通知2)~5),農林水産消費安全技術センターによるJAS分析試験ハンドブック「遺伝子組換え食品検査・分析マニュアル」6)に掲載されています。これらで検査対象となっている遺伝子組換え食品と検査方法を表1に示します。安全性審査で承認されている遺伝子組換え食品とともに未承認の遺伝子組換え食品が検査対象となっています。

 2010年7月の時点で,パパイヤ(55-1),とうもろこし(CBH351),とうもろこし(Bt10),とうもろこし(DAS59132),米(LLRICE601),米(Bt),なたね(RT73B.rapa)が安全性審査で未承認となっています。検査は遺伝子組換え体の有無を確認するための定性検査と非遺伝子組換え体に遺伝子組換え体の含まれる割合(混入率)を決定する定量検査に分類できます。定性検査にはラテラルフロー法,定性PCR法,GUS試験法,定量検査には定量PCR法,ELISA法が採用されています。

表1 遺伝子組換え食品の検査方法

食品 組換え遺伝子 検査分類 検査方法 記載資料
パパイヤ(生食用,加工品) パパイヤ(55-1) 定性検査 定性PCR法,GUS試験法 1)
とうもろこし(穀粒) とうもろこし(CBH351) ラテラルフロー法
とうもろこし(半製品) ラテラルフロー法,定性PCR法
とうもろこし(加工品) 定性PCR法
とうもろこし(穀粒) とうもろこし(Bt10)
とうもろこし(半製品)
とうもろこし(穀粒) とうもろこし(DAS59132)
とうもろこし とうもろこし(GA21) 定量検査または
定性検査/定量検査
定量PCR
定性PCR法/定量PCR法
1)
6)
とうもろこし(Event176)
とうもろこし(Bt11)
とうもろこし(T25)
とうもろこし(Mon810)
大豆 大豆(Roundup Ready Soybean) 定量検査または
定性検査/定量検査
定量PCR
定性PCR法/定量PCR法
1)
6)
大豆 CP4EPSPS タンパク質 定量検査 ELISA法 1)
米(LLRICE601) 定性検査 定性PCR法 3)
米(Bt) 4)
なたね なたね(RT73B.rapa 5)
じゃがいも じゃがいも(NewLeaf) 6)
じゃがいも(NewLeafPlus)

[参考資料]
1) http://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/kensa/kensa.html
2) http://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/kanshi/index.html
3) 食安監発0915002号,平成18年9月15日
4) 食安監発0220002号,平成19年2月20日
5) 食安監発0914第5号,平成21年9月14日
6) http://www.famic.go.jp/technical_information/jashandbook/index.html

 表2にそれぞれの分析法の概要を示します。ELISA法,ラテラルフロー法は抗原抗体反応により検出を行いますので,加熱などによってタンパク質が変性し,抗原性が失われる加工食品の検査には適用できません。DNAはタンパク質に比べ安定性に優れており,加熱等による分解,変性をより受けにくくなっています。

 これにより標的遺伝子がPCRによって増幅される可能性が高く,定性PCR法は農産物ならびに多くの加工食品の検査に適用できます。また,後で述べますが,定量PCR法による組換え遺伝子の混入率検査は加工食品には適用できません。

表2 遺伝子組換え食品の検査に使用される分析法

分析法 概要
ELISA(Enzyme Linked
ImmunoSorbent Assay)法
 抗原抗体反応による高い特異性と酵素反応による高感度性を利用し,サンプルに含まれる抗原や抗体を定量分析または定性分析(検出)する方法です。
ラテラルフロー
(Lateral Flow)法
 イムノクロマト法(Immunochromato Graphy)の一種です。ELISA法と同様に抗原抗体反応を用います。
サンプルを試験紙に滴下し,毛細管現象により試験紙上を移動させ,テストラインとコントロールラインへの発色パターンによりサンプル中の抗原の有無を判定します。滴下したサンプルが色素標識化抗原特異的抗体の含浸部分を通過することにより,サンプル中に存在する抗原-色素標識化抗体複合体が生成します。テストラインの領域には抗原特異的抗体が固定化されており,抗原-色素標識化抗体複合体が捕捉されます。サンプル中に抗原が含まれていれば,テストラインとコントロールラインの両者へ色素が吸着し,発色します。サンプル中に抗原が含まれていなければ,コントロールラインのみが発色します。
GUS試験法  遺伝子組換えの指標とするため,β-glucuronidase(GUS)遺伝子が外来遺伝子とともに導入されることがあります。このような遺伝子組換え体ではGUS遺伝子が同時に発現しており,GUS活性の有無によって遺伝子組換え体の判定が可能です。GUS試験法では,基質である基質である5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-glucuronide(X-Gluc)を含む反応液を加え,GUS活性により青色を呈するかを確認します。
定性PCR法  PCR(Polymerase Chain Reaction)は試料となるDNAを鋳型として,DNAの特定遺伝子領域のみを選択的に増幅させる方法です。増幅したい領域の両端と配列特異的な短い1本鎖DNA(プライマー)とDNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)を用いて,サイクル反応(DNA二本鎖の解離→プライマーの結合→DNA合成反応)を繰り返し行うことにより,特定遺伝子領域のみを増幅できます。原理上は1サイクル反応毎に特定遺伝子領域は2倍に増幅されます。定性PCR法ではサンプルから抽出したDNAを鋳型として標的遺伝子領域を特異的に増幅するためのプライマーでPCRを行い,得られた増幅産物(PCR産物)の電気泳動分析を行います。抽出したDNAに標的遺伝子領域が含まれれば,標的遺伝子領域に対応するPCR産物が検出されます。
定量PCR法  定量PCR法ではサンプルから抽出したDNAを鋳型としてPCRを行うとともに,増幅対象となるPCR産物を特異的に検出するために2本鎖と結合する蛍光化合物(インターカレーター)や増幅領域の一部を認識する蛍光標識プローブを加えるなどして,サイクル毎に増幅過程をモニターします。得られた増幅曲線を解析することにより,標的遺伝子の量(コピー数)を求めることができます。
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