遺伝子組換え食品の表示について
遺伝子組換え食品の表示について
食品衛生法,農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)1),2)において,遺伝子組換え食品として表示が規定されている食品を表11),2)に示します。食品表示が義務づけられているのは,表1の1の(1)に該当する7種類の農産物ならびにその加工食品32群と,表1の2に該当する高オレイン酸大豆,高リシンとうもろこしです。加工工程後に組換え遺伝子またはこれによって生じるタンパク質が検出できない加工食品(表1の1の(2)に該当)は任意表示となっています。加工食品については,その主な原材料(全原材料に占める重量割合が上位3位以内かつ重量割合が5%以上のもの)に表示義務があります。遺伝子組換え食品の表示方法を表21),2)に示します。
遺伝子組換え食品の表示では遺伝子組換えと非遺伝子組換えの農産物(食品)の分別取り扱いが非常に重要であり,分別生産流通管理(IPハンドリング,IdentityPreserved Handling)が実施されているか,否かをそれぞれ分別,不分別などで記載します。分別生産流通管理に該当するのは,遺伝子組換え農産物と,流通(トラック,サイロ,コンテナ船等),および加工(加工業者等)の各段階で相互に混入が起こらないよう管理し,そのことが書類等により証明されている場合です。分別生産流通管理を実施しても必ずしも組換え農産物と非組換え農産物の混入が回避できないため,大豆ととうもろこしについては分別生産流通管理が適切に実施されている場合に限り,意図せざる5%以下の混入(非遺伝子組換え体に対する遺伝子組換え体の混入)があっても分別生産流通管理が適切に行われていると見なされます。この混入の割合(混入率)の話題については「定性PCR法による遺伝子組換え食品の分析」で述べます。
表1 遺伝子組換え食品として表示対象となる食品
1 | 従来のものと組成,栄養価等が同等のもの | ||
(1)農産物及びこれを原料とする加工食品であって,加工後も組換えられたDNAまたはこれによって生じたタンパク質が検出可能な加工食品 | |||
農産物 | 大豆(枝豆,大豆もやしを含む。),とうもろこし,ばれいしょ,なたね,綿実,アルファルファ,てん菜 | ||
加工食品群 | 対象加工食品 | 対象農産物 | |
1 豆腐油揚げ類 | 大豆 | ||
2 凍豆腐,おから及びゆば | |||
3 納豆 | |||
4 豆乳類 | |||
5 みそ | |||
6 大豆煮豆 | |||
7 大豆缶詰及び大豆瓶詰 | |||
8 きな粉 | |||
9 大豆いり豆 | |||
10 1 から9 を主な原材料とするもの | |||
11 大豆(調理用)を主な原材料とするもの | |||
12 大豆粉を主な原材料とするもの | |||
13 大豆たん白を主な原材料とするもの | |||
14 枝豆を主な原材料とするもの | 枝豆 | ||
15 大豆もやしを主な原材料とするもの | 大豆もやし | ||
16 コーンスナック菓子 | とうもろこし | ||
17 コーンスターチ | |||
18 ポップコーン | |||
19 冷凍とうもろこし | |||
20 とうもろこし缶詰及びとうもろこし瓶詰 | |||
21 コーンフラワーを主な原材料とするもの | |||
22 コーングリッツを主な原材料とするもの(コーンフレークを除く。) | |||
23 とうもろこし(調理用)を主な原材料とするもの | |||
24 16 から20 を主な原材料とするもの | |||
25 冷凍ばれいしょ | ばれいしょ | ||
26 乾燥ばれいしょ | |||
27 ばれいしょでん粉 | |||
28 ポテトスナック菓子 | |||
29 25 から28 を主な原材料とするもの | |||
30 ばれいしょ(調理用)を主な原材料とするもの | |||
31 アルファルファを主な原材料とするもの | アルファルファ | ||
32 てん菜(調理用)を主な原材料とするもの | てん菜 | ||
(2)加工後に組換えられたDNA及びこれによって生じたタンパク質が検出できない加工食品(大豆油,醤油,コーン油,異性化液糖等) | |||
2 | 従来のものと組成,栄養価等が著しく異なるもの(高オレイン酸大豆・高リシンとうもろこし) |
表2 遺伝子組換え食品の表示方法
分類 | 表示例 | 表示 | ||
---|---|---|---|---|
1 | 従来のものと組成,栄養価等が同等のもの | |||
(1)農産物及びこれを原料とする加工食品であって,加工後も組換えられたDNA またはこれによって生じたタンパク質が検出可能な加工食品 (該当7 農産物,32 加工食品群) |
遺伝子組換え農産物を原材料とし,分別生産流通管理を実施 | 「大豆(遺伝子組換えのものを分別)」, 「大豆(遺伝子組換え)」等 |
義務表示 | |
遺伝子組換え農産物と非遺伝子組換え農産物が不分別の農産物が原材料 | 「大豆(遺伝子組換え不分別)」等 | 義務表示 | ||
非遺伝子組換え農産物を原材料とし,分別生産流通管理を実施 | 「大豆(遺伝子組換えでないものを分別)」,「大豆(遺伝子組換えでない)」等 | 任意表示 | ||
(2)加工後に組換えられたDNA 及びこれによって生じたタンパク質が検出できない加工食品(大豆油,醤油,コーン油,異性化液糖等) | 「大豆(遺伝子組換え不分別)」,「大豆(遺伝子組換えでないものを分別)」等 | 任意表示 | ||
2 | 従来のものと組成,栄養価等が著しく異なるもの(高オレイン酸大豆・高リシンとうもろこし) | 「大豆(高オレイン酸遺伝子組換え)」, 「とうもろこし(高リシン遺伝子組換え)」等 |
義務表示 |
[参考資料]
1) 農林水産省・日本農林規格協会,食品品質表示の早分かり<平成20年7月版>
2) 消費者庁・農林水産省,知っておきたい食品の表示<平成21年11月版>

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