生薬の産地判別

生薬の産地判別

LCMS-IT-TOFによる生薬の差異解析

相次ぐ食品の偽装事件の発生により,消費者の食に対する安全,安心への監視が高まっています。食品メーカーは,食品に対して正しい生産地などの表示をする義務があると共に,材料受け入れ時に正しい表示であるか自主検査するケースも増えてきています。 一部の食品について,産地を判別するための分析マニュアルが存在していますが,マニュアルのない食品についても,判別したいという要望が高まっており、産地判別に寄与する化合物の探索が行われつつあります。そのような目的で,LC/MSをはじめとする質量分析データの多変量解析が利用されています。 多変量解析は膨大な情報を処理する解析手法であり,保持時間、m/z、強度など非常に多くの情報が得られるLC/MSの解析には特に有用です。 今回は,精密質量MSn分析が可能なLCMS-IT-TOFと多変量解析を用い,生薬の産地の違いによる差異解析を行いました。

産地判別試料として漢方薬である葛根湯(4種A,B,C,D)を用いました。
市販の葛根湯エキス4種を,それぞれ0.5 g量り取り,5 mLの純水を加え撹拌後、超音波で30分間抽出しました。抽出液を遠心分離し上清を得て,0.45 μm HPLCフィルターで処理後,純水で20倍希釈し分析試料としました。
葛根湯サンプル4種のTICクロマトグラムを示します。TICからはピークのm/zの情報などを即座に得ることができないため、これをこのまま解析するには容易ではありません。さらに、サンプル分析は複数回行っているため、これを個々のファイルを確認しながら解析するのは不可能に近いです。

各サンプルのTICクロマトグラム

このような膨大な情報から有益な情報を取り出す手法として多変量解析があります。Profiling Solutionでは膨大な情報をひとつのデータシートに変換可能です。なお、Profiling Solutionはポジティブ/ネガティブで同時測定したデータであってもそのまま解析することができます。
今回の、4種類のサンプル全てデータについて、Profiling Solutionにて解析を行いました。下図に示すように、Profiling Solutionによる解析により、TICクロマトグラム(ポジティブ/ネガティブ)のデータに対してピークピッキングが行われ、ピークにはm/z、保持時間、強度の情報が、ロードされた全データファイルについて一覧で表示されています。なお、ピークリストで特定の行(ピーク)を指定すると、それに対応するクロマトグラムを表示させることもできます。

Profiling Solutionの解析画面

TICクロマトグラム(ポジティブ/ネガティブ)のデータがProfiling Solutionにロードされることで作成されたデータシートを,多変量解析ソフトSIMCA P+にエクスポートし,解析を行いました。下図はデータシートをSIMCA P+で主成分分析した結果です。スコアプロットでサンプルDは右上に位置しているため,ローディングプロットで右上に位置しているピークはサンプルDに特異的であると考えられます。反対に,左下のピークは,サンプルDについて負の相関があると考えられます。これらを利用すると各サンプルに特有なm/zの情報を整理でき,産地判別に寄与する化合物を見つけることができます。

葛根湯サンプルの主成分分析(左:スコアプロット,右:ローディングプロット)

ハイブリッド型LC/MS/MS LCMS-IT-TOF

ハイブリッド型LC/MS/MS LCMS-IT-TOF

LCMS-IT-TOFは,ITによるMSn能力と,TOFによる高分解能・精密質量測定の能力を兼ね,従来型のLC/MS/MSでは不可能であったMSnにおける精密質量測定を可能にしました。LCMS-IT-TOFで取得した高質量精度MSデータは,Profiling Solutionでを自動的に保持時間のアライメントを行えます。結果として生成されるマトリックス(表)は市販多変量解析ソフトウェアにエクスポートできます。

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