ビスフェノールAの分析

ビスフェノールAの分析 

BPA構造式

ビスフェノールAの構造式

 ビスフェノールA(Bisphenol A,以下BPAと略記)は,酸性触媒下で二分子のフェノールと 一分子のアセトンの縮合反応で得られる化合物で,ポリカーボネートや エポキシ樹脂の原料,ポリ塩化ビニルの安定剤として広く用いられています。
 ここではGC-MS,LC,LC-MSによる分析例を紹介します。

 BPAの分析では,GC-MS,LC,LC-MSいずれの手法を用いることができますが, 測定試料や目的により特定の手法が試験法として定められている場合があります。  また,ここに紹介する分析例はBPAをインタクトで分析していますが, GC(-MS)で分析する場合には,フェノール性水酸基の揮発性誘導体化を行う方が, 吸着・分解・汚染を抑える効果があります。目的に応じて分析法を選択することをお勧めします。

環境分析向けGC-MS一斉分析用データベースを用いた河川中のBPAの分 析例

河川水,底質など環境試料中のBPAや,生体試料中のBPAの分析に,GCMS (ガスクロマトグラフ質量分析計)が多く用いられます。
GCMSでは,極めて微量な成分を,高感度、高選択性かつ高信頼性にて分析が可能です。 低濃度のBPAを測定する場合は,液-液抽出による濃縮や誘導体化などの試料前処理が必要となります。

*OH基を有した弱酸性化合物は吸着性が強いため,試料注入口が汚染されたり, 注入口で成分が分解したりして,再現性が得られないことがあります。 BPA測定の場合は,誘導体化 [ TMS(トリメチルシリル)化 ] によりこれを防ぎます。また試料を気化しやすくします。

島津GCMS-QP2010シリーズにより,河川水中の汚染物質を測定しました。

TIC

ここでは,一斉分析用データベースソフトウェアを用いました。 一斉分析用データベースはCompound Composer ソフトウエア上で動作するデータベースで, 環境分析対象化合物(BPAを含む)の定性情報(保持指標,スペクトル情報など)と 簡易定量情報(内部標準物質を用いた検量線情報)を格納しています。
 測定では,まずEPA method 625に則ったチューニングをし,マススペクトルの基準化をおこないます。 次に,装置性能評価標準とn-アルカンの混合標準試料を測定し,その結果をもとに, 装置が正常に稼動していることを確認します。
 装置性能を確認した後,内標準混合液を添加した未知試料を測定します。 データベースに登録された化合物の 保持時間を自動推測し,メソッドファイルを作成します。 そのメソッドにより未知試料測定結果を解析します。
一斉分析用データベースを用いることで,標準試料を必要とせず,汚染物質の検出と おおよその定量を行うことができました(算出されたBPA濃度 0.0723ug)。

オンライン前処理LC-MSによる血清中のBPAの分析

LC-MS (液体クロマトグラフ質量分析計)は,BPA分析において試料の誘導体化の必要がなく,しかも感度,選択性ともに優れていることから、 生体試料中のBPA分析法として最もよく使用されています。
ここでは,メチルセルロース固定化逆相カラムShim-pack MAYI-ODSと, 独自の試料希釈機能を用いた オンライン前処理システムCo-Sense for BAを,血清中のBPA,および4-オクチルフェノール(4-OP)のLCMS分析に応用した例を示しました。

LCMS

前処理カラムの充てん剤表面内のイメージ

LCMS

システムの流路図

左図は,前処理カラムShim-pack MAYI-ODSによる, 試料中のたんぱく質除去のイメージです。 ターゲットとなる小さな分子は,細孔内に浸透し,疎水性相互作用により 保持されますが,たんぱく質のような大きな分子は,細孔内に入り込むことができず,前処理カラムから除去されます。

右図は,システムの流路図です。一段目は,試料前処理ステップとして機能し, 前処理カラムにより血清試料中のたんぱく質を除去するとともに,BPAと4-OPをトラップします。 二段目では,トラップされたBPAと4-OPが分析カラムで分離され,LCMSによって検出されます。

LCMS

自動希釈の有無によるクロマトグラムの比較  上:希釈なし 下:自動希釈時

注入試料の自動希釈は,回収率に大きく影響を与えることがわかります。 注入された血清試料を抽出用移動相で自動希釈することにより,測定対象物とたんぱく質の結合を 弱めることができ,測定対象物を効果的に前処理カラムの内面に保持することが可能になります。 この分析では,希釈倍率を7倍に設定した時,最も高い回収率が得られました。 血清中のBPAの検出下限は 0.05 ng/mL,定量下限は 0.1 ng/mLとなりました。本システムを用いて前処理を自動化し,効果的な抽出を行うことによって, 前処理に要する時間の最小化が達成できました。

カラムスイッチングHPLCを用いた環境水中BPAの高感度分析

 低濃度の測定を行うためには,液-液抽出による前処理濃縮法が一般に利用されますが, 煩雑な前処理操作が必要になります。 ここでは,この問題を解決するため,前処理濃縮用カラムを装着した自動濃縮分析方法を用いました。

LC構成図

システムの構成

  1. 試料導入用ポンプと分析流路を6ポートバルブで接続し,試料をポンプで直接前処理カラムに送り込みます。
  2. 試料を一定量導入後,バルブを切り換えて,濃縮されたBPAを移動相で分析カラムに送り込み分析します。
  3. 前処理カラムはBPA溶出後,バルブを元に戻し,保持力の強い共存成分がカラムに入らないようにカットします。
  4. 上図試料ポートのうちひとつを洗浄用のメタノール等にすることにより,分析中に前処理カラムの洗浄も行うことができます。
LCdata1

1ng/mL BPA標準溶液のクロマトグラム

LCdata2

水道水の分析

 水道水試料からはBPAが検出されませんでした(実線)ので,同試料に 10pg/mLになるようBPAを添加し分析しました(点線)。 このシステムではpptレベルでの測定が可能でした。本システムを用いると濃縮した試料を分析カラムに全量導入できる上,目的成分の ハートカット導入や,自動化も容易です。

関連資料

GCMS No.M244「環境分析向けGC/MS一斉分析用データベースソフトウェア第2版のご紹介」  *

LC     No.L269「カラムスイッチングHPLC を用いた環境水中ビスフェノールA の高感度分析)」 *
No.L256A「高速クロマトグラフィーによるビスフェノールAの分析)」 *

* 印データは,会員制サイトSolutions Navigatorに掲載しています

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