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はじめに

複合脂質であるリン脂質は、糖脂質やコレステロールとともに細胞膜の主要構成要素として脂質二重層の形成に大きな役割を担っています。また細胞膜を構成する以外にも、脂質代謝によるエネルギー産生、脂質の運搬、シグナル伝達に関与する脂肪酸の供給源としても機能しています。このように生体内でさまざまな役割を担うリン脂質ですが、その構造を構成している特徴的なヘッドグループおよび脂肪酸の組み合わせから、その数は膨大なものとなります。網羅的に脂質分子種を分析する lipidomics の分野では、リン脂質の m/z、ヘッドグループに由来する特徴的なプロダクトイオン、各脂肪酸に由来するプロダクトイオンなどの情報をもとに、データベースを利用した定性分析がしばしば行われます。本稿では、マウス由来の脳、脾臓、肺、肝臓組織を対象として、トリプル四重極型質量分析装置によるプリカーサーイオンスキャン(PIS)あるいはニュートラルロススキャン(NLS)によるリン脂質分析を行いました。また候補リン脂質の推定にあたっては、PREMIER Biosoft 社(www.premierbiosoft.com)の SimLipid ソフトウェア を使ったデーターベースサーチの結果をもとに行いました。4つの異なった組織抽出物からは、各組織に特徴的なリン脂質成分が確認されており、SimLipidソフトウェアによるデータベースサーチの有効性が確認されました。

2017.04.24