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はじめに

リン脂質は生体内における細胞膜の構成を担うとともに、生理活性脂質の前駆体であるアラキドン酸、EPA や DHA などの不飽和脂肪酸の供給にも関与しています。また、血中・組織中におけるリン脂質の変動は、さまざまな疾患との相関が知られており、高脂血症や動脈硬化では血中リン脂質濃度が上昇することや、一部の神経疾患では血中のリン脂質における脂肪酸の構成比が変化することも報告されています。このようにさまざまな生体機能や疾患との関連が報告されているリン脂質ですが、その種類は多岐にわたっており、その構造骨格からグリセロリン脂質とスフィンゴリン脂質の二つに大きく分類されます。また、特徴的なヘッドグループの構造から、PC、PE、PG、PI、PS、PA、SM などの各リン脂質クラスに分類され、構成要素である脂肪酸も鎖長、二重結合の数、グリセロール骨格への結合様式の組み合わせにより、さまざまなリン脂質が知られています。 本稿では、長波長の蛍光プローブを尾静脈に投与したマウスと未投与のマウスにおいて、投与後の肝組織におけるリン脂質の変動を LCMS-8060 にて分析した結果を示します。また、変動しているリン脂質の解析にあたっては、PREMIERBiosoft 社(www.premierbiosoft.com)の SimLipid ソフトウェアを用いて、リン脂質の同定・変動評価を行いました。

2017.03.15