環境
温泉水中ヒ素の形態別分析
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はじめに
原子吸光分析は様々な現場で広く用いられていますが,今日,その使用目的は従来の「元素の総量」分析だけでなく「元素の存在形態」分析へと広がっています。 例えば,生体試料に関して,そこに含まれる金属の存在量ばかりでなく,その形態まで分析できれば,形態と毒性の関連や元素の生体内における代謝や挙動などの大きな知見が得られることになります。 原子吸光分光光度計は本来,単独では形態分析を行うことはできませんが,その元素選択性の高さから検出機器として極めて優れており,分離機器など前処理装置との結合により形態分析が実現されます。 例えば,ヒ素は,無機態では3価の亜ヒ酸と5価のヒ酸として存在しますが,生体内において,亜ヒ酸はタンパクなどのSH基のブロック剤として,ヒ酸は呼吸阻害剤として作用するなどその毒性が異なるため,形態別分析が求められている代表的な元素と言えるでしょう。 今回,形態別前処理装置と原子吸光分光光度計を用いて温泉水中のヒ素の形態別分析を行いましたのでご紹介します。温泉水は一般的に塩濃度が高いため,バックグラウンドなどの干渉の点で分析が難しいサンプルと言えますが,本法を用いることで簡便に測定が行えます。
2003.02.08