食品中の残留農薬分析:LCMS-8050,LCMS-8060

一般財団法人 雑賀技術研究所 重藤様 佐田様 稲垣様にお話を伺いました。雑賀技術研究所では公益・収益の2つの事業があり,収益事業の一分野として残留農薬分析に特化した受託分析業務に取組まれています。時代のニーズに沿った受託サービスをされており,その中でどのようにLCMS-8050,8060をご使用いただいているのか,弊社へのご要望と合わせてお話いただきました。

 
 
 

今回のCustomer

一般財団法人 雑賀技術研究所
理事 重藤 和明 様(写真右)
分析サービス部
マネージャー 佐田 正香 様(写真中央)
係長 稲垣 江梨 様(写真左)

※掲載内容(所属団体,役職名等)は取材時のものです。

一般財団法人 雑賀技術研究所 分析サービス部様 Webサイト

インタビュー

御財団の事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか?

当財団設立のきっかけとなったのは名誉会長 雑賀慶二による米中の石を抜く機械の発明です。当時は米と石を分離する技術が無くご飯を食べていると石が入っていることがよくありました。この発明が成功したことから発明者や素晴らしい発明を世に出していくことを支援するために当財団が設立され今年で53年になります。現在は大きく分けて公益事業と収益事業の2つの事業を行っています。

それぞれの事業内容についてお聞かせいただけますでしょうか?

まず公益事業で主としていますのが「研究開発」であり,その成果を事業にしています。機械やソフトウェアについて自社で設計開発を行い,特許を取得,普及まで進める体制を持っています。また「発明,創造性の奨励」事業として,未来の発明家を育成していくために和歌山の子供たちを集めて科学イベントの実施や夏休みの宿題の工作を表彰するなどの取組みをしています。
もう一つ大きな公益事業として,「食の3重丸セレクション」という活動を行っています。このセレクションは,日本産原料を使い製造時も環境に配慮したものづくりをしている企業を応援するものであり,受賞した商品に3重丸マークを付けることで,消費者は安全安心であることが一目でわかります。書類審査だけでなく,残留農薬や放射能などの理化学検査も厳格に行い,独自の基準で厳しく審査して,製品を表彰しています。こだわって作られた製品でも脚光を浴びないことがありますので,その後押しができたらと思い活動しています。

続いて収益事業の「製品・サービス」は機械の製造販売と残留農薬分析サービスがあります。これまで製造販売した機械にはりんごやみかんなど青果物の糖度や内部障害を非破壊で測定できる「アグリセンサー」「シトラスセンサー」があります。従来農作物は外観のきれいさだけが重視されていましたがこの機械の発明以降中身の味を選別することで消費者が美味しいと思うものを選べる方向にシフトしていきました。また他には「金属検出機メタリダー」という樹脂ペレットや粉粒体中の非常に小さな金属異物を検出・除去する機械は業界最高の検出感度を誇っています。

最後に残留農薬分析サービスですが受託分析には珍しく残留農薬分析に特化した高い専門性を持った分析機関となっています。立上げ当時から島津さんのGC-MSなどをたくさん使っています。古くから残留農薬分析に特化しているため豊富な過去の蓄積がありそのノウハウが大きな強みとなっています。

  

設立当初からの研究開発に関する様々な技術力、またそれを社会貢献につなげていらっしゃるところは、島津の「科学技術で社会に貢献する」という社是と共通するところがありますね。貴重なお話をありがとうございます。
残留農薬受託サービスについてもう少しお話を伺えますでしょうか?

残留農薬分析は平成10年からサービスをスタートしました。その前年に厚生省(現在の厚生労働省)から迅速分析についての通知がありそこから準備を始めて残留農薬の多成分一斉分析法を開発しました。平成18年にポジティブリスト制度が施行され多成分一斉分析が広く世の中に定着していきましたが弊所が調べた限りでは多成分一斉分析のサービスを一般のお客様から受けたのは私どもが日本初となります。その後食品に関する事件や事故の影響で残留農薬が問題視されるようになりまた多様化する分析ニーズに合わせて様々なサービスを提供するようになりました。

分析法は長年の経験と検査方法の改良により独自の多成分一斉分析法を開発しMAPS(Multi Analysis of Pesticide-residues by SAIKA)と名称を付けたものがある他スピーディーな結果報告が欲しいというニーズに合わせた「わんでい,「ファイブデイズ」といった短納期サービスなどがあります。

お客様からの分析ニーズはどのようなものが多いのでしょうか?

始めた当初は青果物の残留農薬分析が主流でしたがポジティブリスト制度が始まってからはサンプル自体が加工品にシフトしてきているというのが大きな流れです。加工品の中でも生薬やスパイスなど夾雑成分が多く含まれたサンプルもあります。自社分析されているお客様の中には自社では簡単な分析を行い難しいサンプルはSAIKAに依頼するという方も多くいらっしゃいます。またスピードを求める傾向が強まっており納期1営業日という「わんでい」サービスへの依頼が増えてきています。

夾雑成分が多いなど難しいサンプルを迅速に分析するのは非常に大変だと思いますが分析方法は都度検討されているのでしょうか?

基本的には過去に行った同じようなサンプルの経験を元に分析を行っています。前処理はいくつか精製を組合せて行っていますがそれだけでは夾雑成分を取り除けないので分析装置の性能によって影響を回避するようにしています。分析のスピードが増々求められていますので一番時間がかかる前処理工程をできるだけシンプルしたいと考えています。そのためには高い装置性能が必要になります。

装置に求められる性能はどのようなものですか?

やはり高感度であること,ですね。時間短縮と手間を軽減するために,できるだけ前処理を簡略化したいと考えています。高選択性で高感度な検出器があれば,前処理を簡略化しサンプル中に夾雑成分が多く残っていても希釈をすることでその影響を回避して良好な結果を得ることができます。あとは,メンテナンス回数はできるだけ少なくしたいです。メンテナンスをするためにはその分業務を止めなければいけませんので,汚れに強い装置が良いですね。また多成分一斉分析をしていますので,その場合でも感度が落ちない装置が必要です。

現在はどのような装置をお使いになっていますか?

立上げ当初はGC-MSを中心にGC,HPLCを使用していました。当時は農薬を分析するためにはGC-MSではないと感度が得られず十分な定性ができませんでした。以前はGC-MSを中心に分析を行っていましたが,GCMS-TQ8040を導入し,夾雑成分が多いサンプルでも低濃度まで検出することができ非常に助かっています。夾雑成分の影響も減りましたので,これまで行っていたNCIモードで測定し直すなどの再分析の回数が減りました。現在GC-MS/MSを3台入れており,初めからGC-MS/MSで分析をする機会が増えています。GC-MSについては夾雑成分が少ないと思われるサンプルの分析に使っています。
LC-MSについては,立上げ当初はまだ装置自体の性能が十分でなく,またインターフェイスの選択に悩んでいたこともありGC-MS中心の分析を行っていましたが,トリプル四重極型質量分析計の性能が安定し普及が進んでからは,徐々に分析項目をLC-MS/MSに移しています。現在はどちらかの装置だけでは全ての項目を網羅できないため両方の装置を活用しています。

従来から弊社の装置を多くご使用いただき今回はGCMS-TQ8040LCMS-8050とLCMS-8060を導入いただきました。これらの装置を選んで下さった理由をお聞かせいただけますでしょうか?

島津さんとは分析部門立ち上げ当初からの長年の付き合いがあり,サポート体制が非常に良いというのが一番の理由です。修理の時などすぐに連絡をもらえますしコールセンターの対応も非常に良いです。お客様からお急ぎの検体を受けている時に装置が壊れて業務がストップしてしまうと大変困ります。そういう時でもすぐに来ていただけるので,そこが一番すごいなと思います。
あとは,以前からシングル四重極などを使っているので,同じソフトウェアで使えるということ。またGC-MS/MSの「Smart Pesticides Database」やLC-MS/MSの「残留農薬メソッドパッケージ」があり,導入してすぐに分析を立ち上げられるという点も良いですね。
通常のルーチン分析で使えるようになるまでの期間はなるべく短い方が有難いですし,分析する成分数が非常に多く条件を作るのは手間が掛りますので,このようなソフトウェアは重要です。LC-MS/MSについては,これまで島津さんのものを使ったことが無く正直不安もありましたが,選定時に確認したLCMS-8050のデータが良かったので大丈夫だと思いました。コストパフォーマンス的にも,とてもお得な装置だと思います。

実際に使っていただいて使用感はいかがですか?

最近,お客様から定量下限値をより低く要求されるようになりました。ポジティブリスト制度が始まった頃は一律基準値がベースとなっていましたが,徐々により低濃度まで確認してほしい,個別の基準値に合わせてほしい,とニーズが変わってきています。LCMS-8050での分析は,メソッドパッケージが付いているので,立上げがスムーズでした。その後LCMS-8060を導入し,より感度が必要な分析に使用しています。LCMS-8050,8060は多くの成分を同時分析した場合でも感度が落ちません。GCMS-TQ8040も含め多成分一斉分析に向いている装置だと思います。

弊所では夾雑成分が多いサンプルを分析する機会が多いのですがメンテナンスをあまりせずに済んでいます。他の装置では頻繁にメンテナンスが必要ですが8050,8060は導入当時から急激な感度低下や変動がなく安定的に稼働しています。先程もお話しましたが頻繁にメンテナンスを行わなければならないと分析が滞るためメンテナンスをせずに済んでいるのは良いですね。またソフトウェアは使い慣れているので問題ありません。多成分多検体の解析も簡単に作業ができています。

LC-MS/MSのLC部についてはいかがでしょうか?

LC部については分析に迅速性が求められますのでUHPLCを選びました。既存のLC-MS/MSでもLC部は島津さんの製品を使用していますがコンタミネーションが気になったことはありません。今回導入したシステムでは共注入などのオートサンプラの前処理機能を活用しています。カラムや移動相の交換の手間を省けるということで複数の移動相とカラムをセットできるシステムを導入していますが今後活用予定です。定性のために移動相やカラムを交換する機会が多いため実際に使うと便利だと思う機会が増えるのではないでしょうか?また人が関わらず複数分析条件を連続運転できる点は大きな利点だと思っています。

ありがとうございます。
最後に装置や弊社へのご意見ご要望がありましたらお聞かせ下さい。

残留農薬の受託分析は様々な機関の新規参入もあり競争が厳しくなっています。今後費用・コスト面の競争になってくると思います。分析業界ではどれだけの設備を導入しどれだけの分析ができるかという点が非常に大きなウエイトを占めています。当然高品質高性能であると共にコストパフォーマンスに優れており生産性にも優れている機器が必要になってくると思います。最先端の装置は最先端で良いのですが今の性能で低コストであることが日常業務を進めていく上では重要になってきます。なかなか難しいところだと思いますがそこはお願いしたいです。

ご意見をありがとうございます。ご要望に沿えるよう今後尽力していきます。
本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

インタビュアーコメント

今回業務全般についてお話を伺い雑賀技術研究所様の豊富な技術と深い知見に触れることが出来ました。残留農薬受託分析サービスでは多成分一斉分析という概念が広がる前からその分析法の開発に成功されているだけでなく迅速性といった時代のニーズに合わせたメニューも広く対応されており本分野のパイオニアとしての技術力経験の深さを改めて感じました。サービス立上げ当初から多くの装置を使っていただいており今回導入いただいたLCMS-8050,8060そしてGCMS-TQ8040も順調に稼働していると伺い安心いたしました。弊社の質量分析計はUFMSシリーズとうたっているように高速性能に優れ多成分同時分析に最適なシステムですので雑賀技術研究所様の業務に合った分析ができると思っております。今後も順調にお使いいただけるように充実したサポートといただいた意見を反映させより良い装置を提供していければと思いますのでよろしくお願いいたします。

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