有機溶媒耐性自動スポッティング装置

島津SEC-AccuSpotシステムはSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)による分離・分取から,溶出液へのマトリックス試薬等の添加,さらにMALDIプレートへのスポッティングまでを自動化し,各成分を順次MALDI-TOFMSで解析するというユニークなシステムです。 今回はMALDI-TOFMSAXIMASEC-AccuSpotシステムを用いて高分子材料,特に微量な成分の構造解析に取り組んでおられる東レリサーチセンター田口様に,そのご利用方法や利点・ご要望などについてお話をお聞きしました。

今回のCustomer

株式会社東レリサーチセンター
有機分析化学研究部
有機分析化学第1研究室 研究員 工学博士
田口 嘉彦 様

※掲載内容(所属団体,役職名等)は取材時のものです。

株式会社 東レリサーチセンター様 Webサイト

インタビュー

どのような目的でSEC-AccuSpot-AXIMAシステムをお使いになっていますか。

有機分析の分野ではIR,NMR,MSを組み合わせた化合物の同定を行っています。ポリマーなどはその繰り返し単位からモノマーの構造を決めますが,その過程でSEC-AccuSpot-AXIMAシステムを使用しています。

分子量分布を見る目的だとMALDIだけでできることもあると思いますが,SECで分離する利点や意味があれば教えていただけますか。

インタビュー写真3
試料がポリマーからオリゴマー,添加剤,溶媒など,つまり高分子量から低分子量までの混合物が多いので,全成分を分析するとなると,何かの手段で分けることが重要になってきます。化合物の性質で分ける,分子量で分ける,そういった分離手法を用いることが必要です。単離したものはさらに複数の手法で測ることによって,一つ一つどのような化合物かを決めていきます。基本的にはIR,NMR,MS,この三つの手法を使いますが,その前の分ける段階が一番大事なので,それをいかにうまく単離していくかということに,私たちは力を入れています。 スケールの大きいGPC分取は今までもよく用いていて,数10mgオーダーのものを分けて,IR,NMRなどで分析しています。しかし元々試料量の少ないサンプルや,分けてもMALDIで検出できない試料もあります。そのような場合にこのSEC-AccuSpot-AXIMAシステムは有効に働いていると思います。

そうですか。ありがとうございます。今まで未分離のままMALDIで測ったら何もイオンが検出されなかったけれどもSEC-AccuSpot-AXIMAシステムで測定したらピークが検出されたという例はありますか。

多量の試料をSECで分けたものにまずMALDIを適用して,うまく取れない場合や,「ここ一番」というときにSEC-AccuSpot-AXIMAシステムを使います。普通に分けただけでは歯が立たないようなときに使うことが多いです。

最終的に結果は出ますか。

インタビュー写真1

それでも見えないこともありますが,化合物の性質にもよるので,分けてみて初めてやっと見えたということもありますね。

それは良かったです。昨年の高分子分析討論会では添加剤を分析した例が発表されていましたが,そのような微量成分を見たいというニーズは多いのでしょうか。

あれは,どちらかというと弊社からの提案です。SEC-AccuSpot-AXIMAシステムではサンプルが1mgなくても適用できるのですが,今までの分離を伴う手法だと10~数10mgというオーダーで必要になります。あるいは手作業で分けて集めて乾固させて試料を調製してプレートに載せる,というような作業にかなり手間がかかっています。それが軽減できると思い,提案しています。

御社でこのSEC-AccuSpot-AXIMAシステムを導入されたいきさつを教えてください。

インタビュー写真2

まずMALDIを導入するというのがいちばん先にありました。私自身,大学の頃から高分子材料をMALDIで測っていたので,利点・欠点というのを認識しており,普通のMALDIだけだと限界があるということもわかっていました。ですので,LC- MALDIシステムのお話を聞いたときに,「これは使えるんじゃないか」ということで,こちらからお願いして有機溶媒に対応できるように作っていただいたという経緯があります。ですから必要性が十分にありました。

MALDIの限界というと,イオンサプレッションですね。見えないですよね,微量の試料で夾雑物質が入ってくると。

そうです。微量で,分散度が非常に広いようなものだと全体的に見えなくなってしまうことがよくあります。今まではそれを全部手作業で,必要に応じて分けていました。

これまでもコンベンショナルなSECで分離して,濃縮して,それをピペットでプレートに載せてMALDIにかけるという手法をとられていたのですか。

はい。何度も分取して濃縮させて,かなり面倒くさい手法ですが,どうしても同定したいというときには。SEC-AccuSpotを使えば,とりあえず仕掛けておけば前処理を全部やってくれますから。以前はずっと装置についていて,分離して滴下してMALDI測定をおこなうまでが非常に時間がかかったのですが,今はSEC分離後に自動でスポッティングされ,あとはプレートを装置に入れるだけなのでとても助かります。

効率化にも貢献できそうですね。

インタビュー写真2

そうですね。かかる時間は半分以下にはなっているのではないかなと思います。

次は条件についてお聞きしたいのですが,御社で主に使っているカラムの種類,溶媒などはどういったものですか。

カラムは装置を導入するときに教えていただいたマルチ溶媒タイプのマイクロカラムを使っています。ただ水系は使っていなくて,クロロホルムかTHFで使うことがほとんどです。マトリックスとの関係もありますので。マトリックスはジスラノールと,カチオン化剤としてナトリウム塩を使うことが多いですね。

マイクロスケールのカラムをお使いですが,いわゆるコンベンショナルではなくてマイクロの利点というのはありますか。

試料量をかなり少なく抑えられるのがいちばん大きいです。量的に対応ができないのではないかという心配が減りました。試料量が少ないと使える手法が限られてきます。特にNMRは分取物をさらに分離するような場合には適用が困難な場合があるのですが,そうなるとMALDIが重要になってきます。

試料量というのは,依頼内容によってずいぶん差がありそうですね。

インタビュー写真3

お客様によってまったく異なります。原料メーカーの方だったら,1kgとか準備する方もいらっしゃいますし,μgオーダーでしか採れないサンプルを分析依頼される方もいらっしゃいます。そのようなさまざまなケースの中でどの手法で対応できるか,提案をさせていただくことになるのですが,そのときの選択肢が広がるという意味で非常に大きなことだと思います。

現在,SEC-AccuSpotはUV検出のみなのですが,これに関してご意見はございますか。

UVの感度をもつものしか見えませんので,やはりRIとか,完全に見るというのは厳しいとは思いますが,何かユニバーサルな検出器が付けられるとありがたいです。

そうですね,共存する成分によるイオンサプレッションを考えると,試料全体の成分を見られたほうがよいですね。

今後はMALDIだけではなく他の装置にも使いたいという希望もありますので,全体的にある程度量的な情報が得られると助かります。

わかりました。検討させていただきます。他にもSEC-AccuSpot-AXIMAシステムに関して,改善や改良などのリクエストがあればお願いします。

インタビュー写真3

システム的なことで,SEC-AccuSpotはスタートしたらずっとスポットし続けますが,それをうまくプログラミングすることができたら良いと思います。現在はSECで使っているのでいいのですが,他の目的として,LCで分けてスポットしてそれをMALDIで見たいと考えています。そういった場合にもし分析時間が長いと,スポッティングし続けた場合に途中で終わってしまう可能性があります。それがプログラミングによる時間指定ができれば非常にありがたいと思います。

何も無いところをスポッティングするのはもったいないですね。LCというのは逆相系ですか。

インタビュー写真4

そうです。混合物の分析が多いわけですが,分子サイズが同じぐらいのものが2つ以上混ざっているということもあって,しかもどんどん分けていくと当然量は少なくなってくるので,SECで分かれたものについてさらに逆相系で分ける場合があります。そうなるとものすごい分取の回数が,それこそ丸一日というようなことも,必要になってきます。その辺りを簡便に調べるために使ってみたいと思っています。

わかりました。また,MALDI以外の装置をSECの後に使いたいという話を聞くこともあるのですが,こういうものをつけてほしいというご要望はありますか。

現在のシステムではスポットの受け側がMALDIのサンプルプレートになるのですが,それをほかの用途に使いやすい形があればいいと思います。

ところでそのスポットのスピードはどうですか。

スピードは現在の用途だと,MALDIだったら妥当だと思います。オーソドックスな6秒で使っています。

6秒,5秒,4秒とか,本当に微妙な差だと思うのですが,間隔を短くすると違ったものが見えてくるという,ちょっと面白いことが起こる場合もあるようですよ。これもサプレッションの影響なのかもしれませんが。
他に,例えば操作性とか機能性とか,いいなと思う点などがあればお話いただきたいのですが。逆に課題だと思うこともあればお願いします。

インタビュー写真4

なんといっても前処理がほぼ要らずにMALDIにそのままもっていけるというのが,いいですね。それと試料量が非常に少なく済む,このふたつがいいところです。現状のMALDIでそのまま用いるには,先ほどの時間のプログラミング以外特に問題は感じていません。

ありがとうございます。よかったです。ソフトウェア的にはいかがでしょうか,例えばLCのソフトウェアとSEC-AccuSpotのソフトウェアは別々ですが,ユーザーとしてはどう思われるのかなと。

弊社の場合,コンベンショナルとマイクロの両方が混在していますので,さらに同じプログラムのなかにSEC-AccuSpotが入ってとなると設定などがわかりにくく,使いにくいかもしれません。SEC-AccuSpotを使う者も限られるので,別々の方がいいと思います。

それでは今度はMALDI-TOF,AXIMAについて何か改善,改良などのご提案はございますか。

インタビュー写真5

普通の用途で調製してMALDIを使うには全然問題はありません。単純にMALDIという話であれば,CCDカメラの解像度をもうちょっと上げてもらいたいです。もうちょっとピンポイントに狙って測りたいなということを考えていまして,もうちょっと倍率よく出せるといいなと感じています。あとは,既に開発されていると思いますが,照射スポットをもうちょっと狭められるといいです。

わかりました。それらについては今後,検討させていただきます。
メンテナンスや修理については何かございますか。

SEC-AccuSpotのマトリックスポンプが詰まったことが一回あったと思います。気をつけて,とくに塩を使ったあとはすぐかなり洗浄するようにはしているのですが,ちょっと使っていないときや,あまりうまくできていないときがあるのかもしれません。

普通に使っている塩の量だったらTHFでも塩が溶けますが,ある程度溜まってくると,THFとかクロロホルムでは塩が溶けきれなくなるので,逆に水とかの洗浄がいいかもしれませんね。使わなかったとしても1週間に1度ぐらいは何か溶媒を注入したり,洗浄したほうがいいかもしれません。
最後に工業材料分野の方々へメッセージがありましたらお願いします。例えば,工業材料系で「MALDIっていいですよ」とか「ダメですよ」でもいいのですけれど。

そうですね。やはりMALDIだけだと不十分なケースは当然ありますし,特にうちの研究室では複数の手法を使って検証するというのを大事にしています。ただ,試料をそのままの状態で測定できるというのは大きなことで,やはり今まではどうしても熱分解GC/MSに頼らざるをえなかった。熱分解GC/MSは試料を壊してしまう方法なので見えているものは本当なのかと,今度は信頼性という部分も問題になります。MALDIでは見たいものを直接イオン化できて構造解析に使える,これはものすごく大きなことだと思います。まだ知らない方も多いと思いますし,幻想をもっておられる方もいるし,逆に「全然使えない」とか,極端に分かれているようなイメージがありますね。使えるところは限られるかもしれませんが,MALDIの本質的なところの利点・欠点をきっちり把握した上で使えば非常に大きな武器になると思っています。うまく活かしていただきたいと思います。

今日はどうもありがとうございました。

A bridge with our customers!
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開発者のコメント

SEC-AccuSpot-AXIMA

SEC-AccuSpot-AXIMAシステムは,“分けて”から“測る”ことにより高分子材料中に含まれる極微量成分の高感度検出を可能にし,自動化による分析業務の高効率化(全分析時間を用手法の1/4まで短縮)を実現した新たな高分子材料解析システムです。株式会社東レリサーチセンターの田口様は,本システムのニーズと開発をいち早く弊社にご提案いただいた技術者のお一人であり,開発に先立ち種々ご助言を頂きました。
今回のインタビューでも,UV以外の検出器の搭載,S/Wによるスポット時間の詳細な制御,プレートのバリエーションなど,更に本システムをご使用いただく中で感じられた様々なご要望をお話くださいました。今後は現場でのワークフローに沿った,より使いやすい装置の実現に向けてこれらのご要望をひとつひとつ開発に反映させていきたいと思います。そして,本システムが様々な現場において高分子材料解析の有用なソリューションとして威力を発揮していくことを願っています。

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