SPM観察例 生体 No.33 コラーゲン・ゲル表面近傍の柔らかさ評価

SPM観察例 生体 No.33 コラーゲン・ゲル表面近傍の柔らかさ評価

細胞培養において、培養足場のゲル強度(柔らかさ)が、細胞の挙動に影響することが知られています。しかし、培養液中での“柔らかさ”を計測することは容易ではありませんでした。今回、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて、細胞培養の足場に用いられるコラーゲン・ゲルの“柔らかさ“の計測を試みました。

図1.培養液中でのフォースカーブ

細胞培養に用いられるコラーゲン・ゲルを複数の濃度で作製し、培養液中でのゲル表面近傍でのフォースカーブをSPMにより測定しました(図1)。フォースカーブ測定では、探針-試料間の接近量に対して働く力が小さいほど、試料表面が柔らかいことを示します。図1では、探針とゲル表面が接触した点からさらに2μm押し込んだときの探針-ゲル間に働く力(nN)を計測し、“柔らかさ”の濃度依存性を検証しました。濃度が低いほうが柔らかいことが分かりました。


図2.コラーゲン・ゲルの柔らかさの濃度依存性

また、異なる2種類のコラーゲン・ゲル(AとB)で同様の測定を行い、“柔らかさ”の濃度依存性を数値化することに成功しました(図2)。

このように、SPMを用いて、培養液中でゲルの“柔らかさ”が測定でき、コラーゲン濃度が増すとゲル表面が硬くなることがわかりました。
表面形状の観察や、ゲル強度による細胞の遺伝子発現量変化情報と組合わせることで、SPMによる“定量的な柔らかさ”の測定は、培養足場の研究に活用できると考えられます。

(試料ご提供 近畿大学 生物理工学部 森本康一先生、加藤暢宏先生)