粉博士のやさしい粉講座
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初級コース:粉の世界へようこそ
 
1 食品と粉体測定
 
牛乳・乳酸飲料と粒度分布
牛乳や乳酸飲料などでは、水の中に多数の小さな液体粒子(エマルジョン)が存在しています。
 
市販されている牛乳は、いわゆる「乳化」によって、粒子径が1μm程度にコントロールされています。メーカによっても多少粒子径(粒度分布)が異なりますが、このことが保存期間や飲んだ場合の「こく」を左右しています。
 
 
乳酸飲料は、従来、濃縮された原液を水で薄めて飲んでいました。かき混ぜた後、長い間放置しておくと、コップの上層と下層が2層に分かれるため、もう一度よくかき混ぜてから飲んでいたことを思い出します。
 
この乳酸飲料が、最近では、缶入りの飲物として登場し、ヒット商品となり、類似製品も多数発売されるようになりました。これは、缶の中で、長期間にわたって、乳酸飲料の粒子を安定した小さな粒子の状態に保つことができるようになったからです。
 
牛乳や乳酸飲料の場合、上層と下層の2層に分かれてしまうこと自体が必ずしも品質の低下を意味するわけではありませんが、一般消費者が受け取るイメージには重要なファクターとなります。
 
舌ざわり・歯ざわりと粒度分布
 
食品において、「舌ざわり」、「歯ざわり」といったものも、広い意味では、味覚と考えられます。
 
人間の舌というものは、かなり敏感であり、数10μm以上の粒子に触れると、それが粒子であることを認識できるといわれています。これが、「ザラつく」という感覚です。 チョコレートなどの場合、滑らかな感触を実現するためには、粒子の大きさを20μm程度に抑える必要があります。
 
バレンタイン・デーのチョコレートは、果たして滑らかなのがいいのか、それとも少しはザラつくのがいいのか。恋の行方も粒度分布次第ということでしょうか。
   
 
乾燥食品と比表面積/細孔分布
インスタントコーヒーの製造法は、スプレードライ(噴霧乾燥)方式とフリーズドライ(凍結乾燥)方式の2つに大別されます。これらは、コーヒー液から水分を除去する過程に違いがあります。
 
スプレードライ方式は、コーヒー液を微細な霧状にし、熱風中に噴霧させることにより、水分を瞬間的に蒸発させ微細な粉末を得る方式です。フリーズドライ方式は、コーヒー液を凍結させた後に砕き、真空状態で昇華により水分を取り除く方式です。水分を凍らせてから取り除くため、スプレードライ方式で得られるものよりも大きな粒子が得られます。
 
 
一般的に、後者の方が製造コストがかかりますが、(1)高温にさらされないので性質が変わりにくい、(2)凍結乾燥の際に生じる細孔内に香りの成分が保持される、(3)溶けやすい(=比表面積が大きい)、などの特長を持っています。
 
現在、乾燥食品の応用は非常に多岐にわたっています。比表面積や細孔分布を測定することにより、これらの加工技術の評価や製品の品質管理を行うことができます。
 
スパゲッティは、練った小麦粉に圧力をかけて押し出したものです。このため、うどんやそばと違って、表面が滑らかで細孔が少なくなっています。粒度分布だけでなく、表面積や細孔分布も、このように食品の味(舌触り)とも無関係ではありません。
PDF インスタントコーヒーの比表面積・細孔分布測定
PDF インスタント麺の細孔分布測定
 
● その他の食品関連分析データ
PDF 缶コーヒーの粒度分布測定
PDF お茶の粒度分布測定
PDF 缶入りブラックコーヒーの粒度分布測定
PDF 乳製品の密度測定
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