LCMS-8030
トリプル四重極型LC/MS/MSシステム

LCMS-8030を使ったSolution事例3

特定の分子構造をもつ化合物を一度に測定:サルファ剤のスクリーニング

【お困りごと】トリプル四重極型質量分析計を使って代謝物の探索を行っている。 類似化合物の検索に有効なプリカーサイオンスキャン,ニュートラルロススキャンで測定しているが,1試料につき条件を変えて複数回測定しなければならず,時間がかかる。
 代謝物のような「類似構造を持つ化合物の探索」に,プレカーサイオンスキャンやニュートラルロススキャンが有効と聞いて使用しています。 (1)スキャンスピードが遅い,(2)スキャンレンジをあまり広げられない,(3)複数のスキャン測定やポジ,ネガの測定を同時に行えないので,MSの条件を変えて何度も測定しなければ一通りの情報を得ることができず,面倒に感じています。
 測定回数を減らすために,スキャンスピードを早くして一度に複数のスキャンを設定して測定してみたところ,感度が悪く,また,見つけたピークのプリカーサイオンの値がおかしな値でした。 スキャンスピードを遅くして再測定してみると,その値は1マスずれていたことが分かりました。
 一度の測定で,複数のプレカーサイオンスキャンやニュートラルロススキャン測定ができて,マスずれもおきない,トリプル四重極はないのでしょうか?
 代謝物の探索業務では,もととなる化合物から,どのような代謝物が生成されているのか,網羅的に探索を行い,その情報から代謝経路の検討が行われています。 トリプル四重極特有のPrecursor ion(以下Prec.)スキャンやNeutral loss(以下NL)スキャンは類似構造を持つ化合物の探索に有効ですが,スキャンスピードが遅いなどの理由から,MSの条件を変えて何度も測定しなければ一通りの情報を得れないこともあります。 スキャンスピードを上げて,同時に複数のスキャン測定を行うことが可能ですが,一般的なトリプル四重極型質量分析計の場合,スキャンスピードのアップにともない質量誤差が生じることが知られています。
Prec. スキャンやNLスキャンは有効な情報が得られるので,トリプル四重極質量分析計で手間なく使いこなしたい機能の一つです。ここでは,LCMS-8030を用いて,類似化合物の一例としてサルファ剤を取り上げ,Prec. スキャンとNLスキャン測定例をご紹介します。

  1. 3種のPrec. スキャンと3種のNLスキャンを,ラクラク同時測定
  2. 高速スキャンでも,マスずれの心配なし
(1) 3種のPrec. スキャンと3種のNLスキャンを,ラクラク同時測定
 サルファ剤は,畜水産物の生産性向上のために,飼料添加物や動物用医薬品に使用されている合成抗菌剤で,ポジティブリストで基準値が設定されています。 畜水産物検体に使用されたサルファ剤の履歴が不明であることが多いため,スクリーニング分析されます。
 サルファ剤のスクリーニング測定で,それぞれ6000u/secのスキャンスピードで,3種類のPrec. スキャンと3種類のNLスキャン測定を同時に実施しました(詳細は右Tableを参照)。
 サルファ剤9化合物の混合サンプルについて,各スキャン測定において得られたTICを下図に示します。 9化合物すべてが複数のスキャン測定で検出されており,各化合物に対してより多くの定性情報が得られました。 例えば,Sulfamonomethoxineについては4種類のスキャン測定において検出されています。



(2) 高速スキャンでも,質量ズレの心配なし
 サルファ剤9種類混合サンプルについて,スキャンスピードをいくつか変えて測定を行いました。 300,2000,6000,10000u/secで測定したTICクロマトグラムおよびマススペクトルを示します。
 LCMS-8030の測定結果では,いずれのスキャンスピードにおいてもプレカーサイオンの質量誤差は認められませんでした。 さらに,300u/secと比較して10000u/secのマスクロマトグラムの方が鋭いピーク形状です。 十分なデータポイントが得られていることがわかります。

このようにLCMS-8030では高速のPrec. スキャンおよびNLスキャン測定においても良好な分析が可能です。 一度の測定で,マスずれなく,複数のスキャン測定を行って頂けます。
分析条件,結果の詳細をご紹介しています。
サルファ剤の高速Precursor ionスキャンおよびNLスキャン測定 分析例 (会員制サイト,PDF 481kB)
サルファ剤のスクリーニング  分析例 (会員制サイト,PDF 618kB)

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LCMSMS用語ミニ解説

プレカーサイオンスキャンとニュートラルロススキャン

 夾雑物の多い試料から似たような構造の化合物をスクリーニングする分析が,薬物動態の研究をはじめ様々な分野で行われています。 スクリーニング分析では,共通のプロダクトイオンをもつプリカーサイオンを調べるプリカーサイオンスキャンや,共通の中性フラグメントを脱離するイオンを検出するニュートラルロススキャンが利用されます。

 プリカーサイオンスキャンでは,Q1(1段目のMS)でスキャンし,コリジョンセル(q2,衝突室)で衝突誘起解離し,Q3(2段目のMS)で特定のm/zに固定して検出して,特定m/zを有する化合物だけを特異的に検出します。(下図の場合,m/z= m3 となる化合物だけ検出。)
プリカーサイオンスキャン概念図

プリカーサイオンスキャン

 一方,ニュートラルロススキャンは,Q1とQ3で設定するm/zの差を一定に保ちながらスキャン分析します。 プリカーサイオンスキャン同様に特定の部分構造をもつ化合物のスクリーニングに効果的です。
ニュートラルロススキャン概念図

ニュートラルロススキャン

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