2次元 LC/MSを用いた不純物同定の効率化
(Technical Report No.39要約版)
品質管理部門で用いられるHPLC試験法では,りん酸緩衝液などの不揮発性移動相条件が採用されることが多く,LCMS分析を行う際には,大気圧イオン化法に適した移動相条件(揮発性移動相)への変更が必要となります。 この条件変更は,溶出順序の変化や主成分の近傍に溶出する不純物を見逃すなどの大きなリスクを伴うため,細心の注意が必要となり,分析法開発部門,例えば製薬会社におけるCMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬・製剤開発製造部門)では,この条件変更に多大な労力を払っています。
長い間使っていて信頼性の高いHPLCの不揮発性移動相条件をそのままLCMS分析に使用したい,という要求は止むことがありません。
不揮発性移動相条件でも,試料バンド領域のみをMS部に導入すれば,不揮発性移動相に起因するトラブルを抑制することができるため,移動相条件の変更なくLCMSをお使いいただけます。 その要求を満たすのが,2次元LC/MSです。 どのような仕組みで試料バンド領域のみをMS部に導入できるのでしょうか? 導入の仕組みや2次元LC/MSのシステム構成,不純物分析例をご紹介します。
2次元 LC/MS不純物同定システム
本システムの基本流路を示します。 1次元目では,不揮発性移動相によって分離された成分は成分毎にループに切り出されます。 その後,2次元目で揮発性移動相によりループにトラップされた成分が溶出され,分析カラムで分離された後,MSに導入されます。 このシステム構成により,今までお使いいただいている不揮発性移動相条件をそのままLCMS分析に利用できます。
(バルブシーケンスなど詳細は,Tecnical Report No.39でご紹介しています。WebからPDFファイルをダウンロードして頂けます。 )
基本流路
下記が,2次元LC/MS不純物同定システムのLC部のシステム構成です。 標準的なLCシステムに,揮発性移動相の送液ポンプ,UV検出器と流路切換バルブおよびバルブ制御ボックスを追加すれば実現できます。 2次元目のUV検出器は,不純物ピークの特定を容易にします(不純物とブランクのクロマトグラムを比較)。 ピークの分画は複数のバルブの組み合わせて行います。 1次元目での不純物保持時間を入力するだけで最適なバルブシーケンスを組むことができるマクロプログラムをご用意しています。
システム構成(流路は不純物のMS導入時)
分析例
Sulfadimethoxineを主成分とし,4つの類似構造を持つサルファ系薬物を不純物としたモデルサンプルを調製しました。 主成分濃度を500μg/mlに調製し,不純物は主成分に対してそれぞれ0.1%になるように混合しました。
不揮発性移動相であるりん酸緩衝液/メタノール(=7/3)で,主成分と不純物4種を分離し,Loop#1~#4に切り出しました。 次に,揮発性移動相であるギ酸/メタノール系でLoop#1~#4にトラップされた不純物をLCMS-IT-TOFで検出しました。 ピークトップ付近の試料バンドをループにトラップしているため,すべての不純物を感度よく確認することができました。 Loop#1にトラップしたuk-1の分析例を示します。Sulfamerazineであることが確認できました。
不揮発性移動相であるりん酸緩衝液/メタノール(=7/3)で,主成分と不純物4種を分離し,Loop#1~#4に切り出しました。 次に,揮発性移動相であるギ酸/メタノール系でLoop#1~#4にトラップされた不純物をLCMS-IT-TOFで検出しました。 ピークトップ付近の試料バンドをループにトラップしているため,すべての不純物を感度よく確認することができました。 Loop#1にトラップしたuk-1の分析例を示します。Sulfamerazineであることが確認できました。
一次元目のクロマトグラムとポンプ圧力変動
uk-1の分析例
| 【1次元目】 | |
| カラム | :Shim-pack VP-ODS (150mm×4.6mm i.d., 5μm) |
| 移動相 | :0.01mol/L リン酸塩緩衝液(pH2.6)/メタノール=7/3(アイソクラティック溶出) |
| 流速 | :1 mL/min |
| カラム温度 | :40 ℃ |
| 注入量 | :10μL |
| PDA検出波長 | :200-350 nm(270 nmをモニター) |
| 【2次元目】 | |
| カラム | :Shim-pack XR-ODS(75mm×2.0mm i.d., 2.2μm) |
| 移動相 | :0.1% ギ酸水溶液/メタノール(グラジエント溶出) |
| 流速 | :0.3 mL/min |
| カラム温度 | :40 ℃ |
| 注入量 | :10μL(ループ容量) |
| 検出器 | :PDA(検出波長270nm)及び,LCMS-IT-TOF |
バルブシーケンス,1D/2Dタイムプログラム,分析条件などの詳細情報や,他の不純物の分析例は,Technical Report No.39でご紹介しています。WebからPDFファイルをダウンロードして頂けます。


