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LCtalk特集号「移動相の脱気」

5-4)気-液分離膜を用いた減圧脱気

 移動相ビンと送液ポンプの間に設置するタイプで,単に“脱気ユニット”と呼ばれるほど広く用いられています。 樹脂膜チューブの外側を減圧状態に保ち,膜の透過性を利用して,分子サイズの小さな酸素分子・窒素分子を移動相溶液から排出します。 約70~95%の空気を除くことができるため,グラジエントを含めて流路中での気泡発生によるトラブルを防止できる上,一部の高感度検出に適するようになります。 
脱気ユニット製品ページ

 

<操作
移動相ビンと送液ポンプとに接続する。 樹脂膜チューブ,容量(DGU-3A/4Aは一流路当り約15mL,DGU-12A/14Aは10mL,DGU-12AM/14AMは2mL)の2~3倍ポンプドレインから排出する。 あるいは,ドレインから排出しながら,5秒ほどサクションフィルタを液面より上げて故意に気泡を吸引させ,ドレインから気泡が出てくるのを待ち,出終わってから約10mL排出して移動相交換完了とする。
長所
移動相ビン形状・栓に制限がない(他のオンライン脱気では制限がある)。 
混合溶媒の組成が変化しにくい。 
ランニングコストが安い。 
扱いが容易。 
<短所>
脱気能力が流量に依存する。  注1)
真空ポンプのON,OFFに同調して,脱気能力が変化する。  注2)
  注1)脱気能力は高流量になるほど劣るので,メタノール100%を移動相として流し210nmでモニタすると,流量を上げると吸光度が上がる(図28,DGU-3A/4A)。 また,水-メタノール高圧混合リニアグラジエント時に,ベースラインの吸光度変化は曲線を示す(図29)。 

注2)脱気ユニットには,(1)真空ポンプの回転が一定であるタイプ,(2)真空チャンバー内の減圧レベルが一定に達した時に真空ポンプが自動停止し減圧レベルが再び下がると自動始動するタイプ,(3)真空ポンプが短い一定間隔でON/OFFするタイプ,の3種がある。 (1)は安定化するのに非常に時間がかかるので殆ど市販されていない。 これまで多くのものは(2)であった(DGU-3A/4A)。  このとき,メタノール210nm,THF254nm,THF屈折計ではベースラインにうねりが生じる場合がある(図30)。 近年(3)のタイプが登場し(DGU-12A/14A),うねりは極端に小さくなった。 なお,屈折計の場合は,脱気装置の複数流路を直列に接続する(図31)ことによって,うねりが小さくなる場合がある。
 
<用途>
低圧・高圧混合グラジエントを用いた高精度(保持時間の再現性)分析。 
蛍光検出,電気伝導度検出,電気化学検出を用いた高感度分析。 
UV検出を用いた高感度分析。 ただし,溶存酸素量変動の吸光度への影響が大きい移動相を用いた場合は不適。 
通常感度の屈折計検出の分析。 
 

 

図24   気-液分離膜を用いた減圧脱気装置
図25  気-液分離膜を用いた減圧脱気によるベースライン安定化例
気-分離膜を用いた減圧脱気のイメージ
図26   気-分離膜を用いた減圧脱気のイメージ
高流量下では脱気能力が低下するイメージ
図27  高流量下では脱気能力が低下するイメージ
流量と吸光度
図28  流量と吸光度 (DGU-3A/4A)
真空ポンプのON,OFFによりベースラインが変化する影響
図30 真空ポンプのON,OFFによりベースラインが変化する影響
A:DGU-12A/14A, B:DGU-3A/4A
脱気能力流量依存性が高圧グラジエントベースラインに及ぼす影響を誇張したイメージ
図29 脱気能力流量依存性が高圧グラジエントベースラインに及ぼす影響を誇張したイメージ(水-メタノール,カラムなし)
複数流路を直列に接続することによって,屈折計ベースラインのうねりが小さくなる場合がある 
図31  複数流路を直列に接続することによって,屈折計ベースラインのうねりが小さくなる場合がある。 

* 本ページはLCtalk特集号5(1991年)をhtml化して一部修正を加えたものです。
従って,最新の装置情報・技術情報とは一致していない所があります。