HPLCのグラジエント(GE)システムを装置構成で分類すると高圧GEシステムと低圧GEシステムに分類されます。 ここでは低圧GEシステムで正確で安定な濃度設定を実現するための工夫について最新の島津高速液体クロマトグラフLC-2010シリーズを例に説明します。

(1)電磁弁(移動相混合バルブ)の駆動方法

LC-2010シリーズではデッドボリュームの削減や脈流の低下のため,一次側ポンプヘッドに10μLのプランジャ容量を持つ,直列ダブルプランジャ型のポンプを採用しています。 ポンプの吸引に同期してポンプの電磁弁を切り替えて複数の移動相を混合する低圧GEシステムでは,このような小容量プランジャポンプでは短時間に電磁弁を切り替えねばならず正確な濃度設定に不利と考えられがちです。

しかし,LC-2010では図1のように濃度100%に4回の吸引サイクルを割り当てることによってこの問題を解消しています。 図1はポンプヘッド内の流量の変化とB:37.5%,A:62.5%の濃度に設定したときの電磁弁の動作タイミングを示しています。

(2)移動相の圧縮率による影響の補正

図2は図1のポンプが吐出から吸引に切り替わる部分を拡大しています。 図2の1のところでポンプのプランジャは前進から後退を始めますがこのときはまだポンプヘッド内の圧力は吐出時の高圧を保ったままです。 プランジャが後退しポンプヘッド内の圧縮された移動相が膨張し圧力が大気圧に戻ってから移動相がポンプヘッド内に流入し始めます(図2の[2])。

図2のハッチングされた部分は移動相が吸引されていない区間になります。 圧力が高くなるとこの区間が大きくなり濃度の誤差が大きくなるので,モニタされた圧力値をもとに電磁弁の開閉タイミングを調整し濃度誤差を減少させています。 また,移動相の圧縮率を装置に入力する(COMPパラメータ)ことで移動相の圧縮率に合わせて電磁弁を駆動することができます。

(3)電磁弁の応答遅れによる誤差の補正

電磁弁は信号が入力されてから動作が完了するまでにmsecオーダーの遅れがあります。

この遅れの分だけ早く電磁弁を動作させています。

(4)機械誤差の補正

図2

プランジャ駆動部(カム等)の機械誤差が濃度の正確さに影響を与えますがLC-2010では出荷時に設定濃度と実測値の差を校正しています。

これらの工夫によりLC-2010シリーズでは濃度正確さ±0.5%(水/アセトン水混合 0.1-2.0mL/min 1-20MPa)を実現しています。
 

図1

I N F O R M A T I O N
近未来ラボのHPLC像を提案する,新しい液体クロマトグラフ装置シリーズ"i-Series"のご紹介

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