インテリジェントなピーク分離アルゴリズムのご紹介
フォトダイオードアレイ検出器の新しいデータ解析手法
Q u e s t i o n | : LC PDAデータで,クロマトグラフ分離が困難な成分を含んでいても,その成分スペクトルを見逃さず分離・定量することは可能でしょうか? |
A n s w e r | : LabSolutionsのピーク分離機能(Intelligent Peak Deconvolution Analysis)をお使いください。 |
フォトダイオードアレイ検出器(PDA Detector)の基本性能の向上とHPLC/UHPLCシステムの優れた再現性,そしてケモメトリクス技術との融合により,カラムだけでは分離が困難なピークを分離する新しいデータ解析手法を開発しました※。
LabSolutionsのピーク分離機能 Intelligent Peak Deconvolution Analysis (i-PDeA II) は,波長範囲と時間範囲を指定するだけで,複数成分の吸収スペクトルとクロマトグラムを分離することができます※※。
※ エーザイ株式会社 様との共同開発品です。
※※ LabSolutions Ver. 5.90(ファイル管理版: LC/GC)Ver. 6.80(データベース管理版: DB)以降で使用可能です。
基本は時間範囲と波長範囲を指定するだけの簡単設定
本アルゴリズムは,時間範囲と波長範囲を設定するだけでピークを分離することができます。
また,i-PDeA IIのピーク分離アルゴリズムはLabSolutionsの解析機能に組み込まれているため,PDAデータはデータ変換を行うことなくシームレスにピーク分離を行い,分離後のピークの波形処理や定量計算を行ったり,ピークトップのスペクトルを用いたスペクトル同定やライブラリ検索を行うことが可能となります。
ここでは,以下のキーポイントに沿って,i-PDeA IIの解析例を紹介します。
- カラムで完全分離しなくても,高速で正確な定量が可能
- 同じ分子量を有する異性体の分析にも適用可能
- 分離後のデータに対するスペクトル解析も可能
カラムで完全分離が困難な異性体3成分混合試料への適用例
本アルゴリズムを図1. に示す位置異性体o - methyl acetophenone (o - MAP)、m - methyl acetophenone (m - MAP)、p - methyl acetophenone (p - MAP) の混合物に対して適応した例を紹介します。
o - MAP,m - MAPおよびp - MAPの各標品を400 μg/mLの濃度に調製した混合溶液を分析試料とし,分析した結果を図2. に示します。
分析条件概略は以下の通りです。
分析条件
HPLCシステム :LC-2030C 3D(Prominence-i)
移動相 :水/メタノール(70/30, v/v)アイソクラティック
移動相流量 :1.0 mL/min
サンプリング :240 msec
スリット幅 :1.2 nm
時定数 :480 msec
波長範囲 :190 nm ~ 400 nm
試料注入量 :1.5 μL
この分析条件による,各成分の溶出順は,
o - MAP,p - MAP,m - MAP
となりました。
次に,o - MAP,m - MAPの濃度を400 μg/mL,p - MAPの濃度を4 μg/mLに調製したものを分析試料とし,同じLC分析条件で分析した結果を図3. に示します。
o - MAPおよびm - MAPの相対濃度を100とすると,p - MAPの相対濃度は1となり,その前後に溶出するo - MAP,m - MAPピークに埋もれてしまい,p - MAPが存在することを見落とす可能性があります。図3. のクロマトグラムをパッと見て,3成分の溶出を認めるのは困難であると考えられます。
こんな場合に,i-PDeA IIは強力な解析ツールとなり得ます。
時間範囲5.0 - 7.0 min,波長範囲210 - 320 nmと設定し,本アルゴリズムを適用すると,図3.(右の拡大図)に示すように,p - MAPピーク(ピンク色のクロマトグラム)を分離することができました。
ソフトウェア LabSolutionsにおける,i-PDeA IIの設定方法を図4. に示します。
本ピーク分離アルゴリズムは,LabSolutionsのデータ解析機能に組み込まれています。
LabSolutionsのデータ解析機能を用いることで,データ変換をおこなうことなくピーク分離,分離後のピークの波形処理や定量計算などをおこなうことが可能となります。
分離後のデータに対するスペクトル解析例
p - MAP標準品の純度測定
本考察にて用いた3つの標準品それぞれの純度を確認するため,今度は混合していない試料を,同じ分析条件にて分析し,得られた分析データそれぞれに本アルゴリズムを適用したところ,p - MAPの標準品に不純物が含まれていることを示す結果が得られました。
この不純物はピークの溶出時間とスペクトルの類似度から,m - MAPであることが推定されます。
不純物を分離するため,カラムをODSカラムからフェニルカラムへ変更し,分析をおこなった結果を図6.に示します。
この結果,m - MAPのピークが分離され,3回の分析結果を用いて純度を計算すると,純度は97.85%という結果が得られました。